人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月13日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
我々は河内の港に寄港して、そこに超大型空母『グラーフ・ツェッペリン』を停留させて、大和朝廷から遣わされた使者と共に車両5台で『奈良』の都に向かう。
川筋に沿って比較的広い道を進み、山に囲まれた『奈良』の都に向かって行く。
道中の田園風景は非常に美しく、田圃と説明された畑には水がはられ、稲穂と説明された黄金色の草は吹き渡る風に光っている様に見えた。
ただ気になったのは、道中で見る民衆の姿だ。
従順そうに農作業をしている様だが、何とも元気が無い様に見える。
日頃見ない筈の車両を見ても、一瞬興味を示すが直ぐに俯いて黙々と農作業に戻る。
此れが少数ならばそういう人も居るかなと、気にしなかっただろうが子供を除く全員となると、異様な話しである。
敢えて気付かない様にして、『奈良』の都に入る。
『奈良』の都は、別名『平城京』というらしく入る時に、大きくて妙な山門(鳥居と云うらしい)を潜る形で入り、幾つかの儀式をしてから『大王(オオキミ)』の居られる拝殿に向かう。
その間も非常に気になったのが、蛇を模した石像が至る所に配置され、然もその石像が異様な気配を発している事実だった。
事前の取り決めで、『大王(オオキミ)』にわざとアラン様が謙り御簾の前に座す形で面会する。
淡々と型通りの儀式を行い、『大王(オオキミ)』との対面が終わり、我々は指示された宿舎に車両で向かう事になったのだが、或る人目につかない曲がり角で小部屋に滑り込んだ。
その小部屋には、カトウともう一人の男が居た。
男は崑崙皇国の魔法術である『符術』に似た紙を人形にしたもの2つに、「フッ」と息を吹きかけた。
すると、驚いた事に2つの人形に切った紙は、たちまちアラン様と自分そっくりとなり、そのまま小部屋から出て行った!
呆然としている自分にカトウが、
「ケニー大佐急ぎましょう!」
と話しかけてきて、小部屋の床に空いた階段を指し示し、率先して階段を降りていった。
アラン様が、一切惑わずに階段を降りて行くので、自分もそれに続く。
薄暗い階段を降りて行くと、やがて厳重そうな扉が見えてくる。
先頭を進んでいたカトウが、何やら合言葉らしき言葉を発すると、中側の錠前が上がる音がして厳重そうな扉が開く。
その扉を素早く全員が潜り、最後に潜った先程の術を使った男が、何やら呪文の様な言葉を唱えると厳重な扉がゆっくりと閉じた。
すると通された部屋の明かりが一斉に光りを増して、部屋の中が一気に明るくなった。
其処には、先程拝殿で対面した『大王(オオキミ)』と家臣の方々が勢揃いしている。
突然『大王(オオキミ)』と家臣の方々が、一斉に頭を下げてアラン様に謝って来た!
「・・・大変申し訳なかったアラン皇帝陛下!
奴の監視を欺くには、あの様な形での対面をするしかなかったのだ、どうかお許し頂けないだろうか?」
と『大王(オオキミ)』が述べられ、アラン様は判っているといった様子で頷き、『大王(オオキミ)』に歩み寄られてその手を掴んで頭を上げて貰い語りかけた
「カトウと出会い、『日の本諸島』の窮状をつぶさに聞かされて、ずっと心が傷んでおりました。
だが、当時私の力と勢力はとても小さく、とても『日の本諸島』をお助けに行く余力は御座いませんでした。
しかし、3年の時が流れ、東の大国で有る崑崙皇国とも同盟を結び、現状後顧の憂いは殆ど無くなりましたし、私の力も当時に比べ格段のレベルアップを果たし、我が帝国も順調に国力を増し、十分に『日の本諸島』をお助けするだけの地力を得ました。
さあ、お互いに協力しあって『日の本諸島』の長年に渡る厄災を倒しましょう!」
そのアラン様の力強い言葉に、『大王(オオキミ)』は今の今まで被っていた仮面を顔から剥がした。
そう、ずっと大和朝廷の面々は、それぞれが素顔を晒さずに仮面を被っていたのである!
『大王(オオキミ)』は、
「先程まで、私は奴の傀儡でしかなかったので、本当の気持ちや行いを一切出来ずにいましたが、この部屋ならば堂々と己の言葉で話す事が出来ます。
どうかお話しを聞いて下さい!」
『大王(オオキミ)』(天智大王と言うらしい)は、『日の本諸島』の昔々からの伝承を話し始めた。
「昔々『日の本諸島』の地方に出雲と云う場所が有り、其処には八岐族という人々が住んでいて、その人々はある魔物を神として祀っていたそうで、その魔物に一定期間毎に供物として生娘を奉納していたらしい。
だが、大陸から渡来した錬金術師の一団がやって来て、この魔物を退治しようとして様々な魔道具や呪物で以って倒そうとした。
そして目論見は不完全ながらも成功し、退治こそ出来なかったが封印に成功したようです。
そして500年間程経って、この大陸から渡来した錬金術師の一団と『日の本諸島』の諸族が合流し、現大和朝廷が作られて行ったのだが、被支配者となった八岐族はその事を恨み、封印されていた魔物を持ち出し、『日の本諸島』の霊山である『蓬莱山』の龍穴に投げ入れました。
すると信じられない事に、その魔物は『蓬莱山』の霊力との融合を果たし、神々に匹敵する力を得てしまった。
そしてその力で大和朝廷に襲いかかって来たのだ」
と遠い目をして天智大王は話し続けていった。