人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月17日③(人類銀河帝国 コリント朝2年)
『八岐の大蛇』は確かに凄まじい大きさでこそ有るが、何だか存在感と言える実体感が薄いので、アラン様が言う通り何だか強そうに感じない。
D6からD10の傘下の量産型ドローン100機ずつ計500機が、『土蜘蛛』を粗方殲滅し『八岐の大蛇』の東方の海上に陣取り、『多重防御結界陣』を壁の様に展開した。
八岐の大蛇は当初『多重防御結界陣』を甘く見て、無造作にその巨大な身体でぶつかってきたが、重巡洋艦『バーミンガム』と駆逐艦30隻の張る『多重防御結界陣』がその身体の攻撃を、簡単に弾き飛ばした。
驚いたのは八岐の大蛇で、慌てた体勢を直すとその8つの顎から、極太のビームを吐いてきた!
しかし、その極太のビームはあっさりと『多重防御結界陣』が吸収してしまった。
あまりの事態に呆然自失となっている八岐の大蛇を、南方方面から『多重防御結界陣』を壁として、重巡洋艦『バーミンガム』と駆逐艦30隻は押し込む。
その鉄壁の壁にタジタジと追いやられ、八岐の大蛇は駿河湾方向に向かおうとするが、当然其処にはD1からD5の傘下の量産型ドローン100機ずつ計500機が、同様の『多重防御結界陣』を張っている。
前後を塞がれている状態になり、左右を八岐の大蛇が確認すると、東方はD6からD10の傘下の量産型ドローン100機ずつ計500機が、鉄壁の壁を構築している。
完全に東方、南方、北方を付塞がれていることに漸く気付き、唯一塞がれていない西方に8本の首を向けると、雲間越しに大型立体プロジェクターで映し出されたアラン様が浮かんでいる。
「漸く状況が判ったのか。
お前は本当に馬鹿なのだな、心底呆れてしまったよ。
さあ、仕方がないからお前が存分に暴れ回れる戦場に誘導してやる、付いて来い!」
とアラン様は言い放ち、地面に降ろしたD1に自分とカトウと共にアラン様は乗り込み、源頼光とその配下の武者に車両を託し、駿河の安定に努める様に依頼した。
D1に乗り込んだアラン様は、ワザと挑発しながら八岐の大蛇を西方に誘導する。
完全に怒り狂い遮二無二、アラン様の乗るD1に追いすがろうとする八岐の大蛇は、何度か極太のビームを吐くが、素早いD1の旋回力に少しも極太のビームを当てられないので、怒りのあまり己の眷属を喚び出した。
「あぉwhfピワイpgハイ!」
相変わらず『古きものども』の発声は、聞き取りにくいし意味も判らないが、此れが彼奴等の特有な召喚魔法である事は、数々の経験則で判っている。
案の定、八岐の大蛇の周辺の海面から、ゾロゾロと這い出して来る化け物がいた。
その姿は、牛の首をもち蜘蛛の胴体を持ち顔は崩れた人面、体長は30メートル程である。
「・・・あれが『牛鬼』か・・・。
『土蜘蛛』と似てるが、海でも活動出来る訳か厄介だな」
とアラン様が呟く様に感想を述べ、重巡洋艦『バーミンガム』のダルシム中将に指令を出す。
「ダルシム中将、今召喚された『牛鬼』と云う化け物は、八岐の大蛇の純粋な意味での眷属だから、属性は『古きものども』なままだ。
よって普通の討伐対象となるので、重巡洋艦『バーミンガム』を中心として駆逐艦30隻と共に艦砲射撃にて駆逐せよ!」
「了解!
目標、八岐の大蛇周辺に湧き出た化け物群、名称は『牛鬼』!
艦砲種別は、ファイアーグレネード魔法弾を装填。
攻撃対象への無駄撃ちを避ける為に、バーミンガムとの攻撃リンクを同期せよ。
準備が出来次第攻撃に移れ!」
とのダルシム中将の攻撃命令が駆逐艦30隻に飛び、程無く重巡洋艦『バーミンガム』を中心として駆逐艦30隻と共に艦砲射撃が始まる。
ファイアーグレネード魔法弾は、攻撃対象が『古きものども』かその眷属の場合は、目標を完全殲滅する為に、対象の身体内部に潜り込んで内部から爆発する様にプログラムされているので、対象が海中に沈み込もうとあまり威力の面で地上と大差がない。
次々と海中に沈んだ『牛鬼』が、ファイアーグレネード魔法弾で爆散し、海上に水柱を上げ続ける。
折角召喚した『牛鬼』が、何ら我等に有効な攻撃も出来ずに、鴨打よろしくやられて行く姿に怒りながら、速力を増して我等が乗るD1目指して八岐の大蛇は必死に追ってくる。
やがて、海を渡りきり『伊勢神宮』を左手に見ながら、八岐の大蛇は地上に姿を表した。
その姿は、我等も戦った事の有る『ヒュドラ』に良く似ていて、頭と尾はそれぞれ八つずつあり、眼は赤い鬼灯のようであった。
だが、何よりも特徴的なのはその体長であろう。
恐らくは約12キロメートルに達すると思われる全長は、今までのどの『古きものども』の怪物達と比べても、最大であろう。
しかし、やはり自分はどうしても違和感を感じざるを得なかった。
その身体の表面は光り輝いていて、綺麗とすら感じるのだが、逆にやや薄ぼんやりと見えて、存在感の希薄さが伺えた。
《この辺の、八岐の大蛇の存在のあやふやさが、アラン様と天智大王の例の作戦に繋がるのだろうな》
と、先日行った作戦会議の内容を思い出しながら、D1を必死で追いかける八岐の大蛇を見ながら、目的地の『奈良』の都を目指し、我等は突き進んで行った。