人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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7月の日記⑨(人類銀河帝国 コリント朝2年)《魔物との対決後始末》

 7月18日(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 昨日の戦闘で戦場となった平城京は、完全な廃墟となったので予定通りに封鎖区域とした。

 平城京とその周辺の避難民は、摂津の港に急遽用意した難民用ドームに退避させていたので、家屋等の資産は無くなってしまったが、『山城』という地域に新しい超大型ドームの都を作る予定なので、其処に今回の被害補填として家屋と十分な額のポイントを渡す事になっている。

 

 荒廃しきった平城京をアラン様含む帝国軍人で探索すると、案の定八岐の大蛇が倒された中心点に、1メートル程の大きい勾玉が無造作に転がっていた。

 これが八岐の大蛇が封印されていた勾玉であろう事は自明であった。

 だがその勾玉は、割れている上に魔力の痕跡すら存在しない様であった。

 

 「ふむっ」

 

 とアラン様が呟くとその勾玉に手を伸ばすと、「パリーン!」との音を立てて粉塵と化し空中に霧散していった。

 次の瞬間、周囲から半透明な白い影が膨大な数現れた!

 その影は明らかに人の姿をしていて、良く観察すると先日来訪した『伊勢神宮』で見た巫女の格好をしているのが判った。

 その大勢の白い影達は、アラン様と我等に向かって一斉に頭を下げると、ゆっくりと空中に浮かび上がり、最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げて平城京の南東方向、つまり『伊勢神宮』に向かい飛んでいった。

 呆然とその一連の出来事を見ていたが、ふと横を見るとアラン様が手を合わせて、『日の本諸島』特有の拝むと云う姿勢で目を瞑っていたので、自分と他の帝国軍人も同じ姿勢で拝んで彼女らを見送った。

 

 7月20日(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 先日の平城京の出来事を踏まえて『伊勢神宮』に向かう。

 例の新宮で『倭姫』と面会し先日の大勢の白い影達の話しを、アラン様が『倭姫』に報告した。

 特に驚くことも無く倭姫は話しを聞き終えると、我々を新宮から連れ出し、登ってきた参道の脇にある石柱のある場所に案内された。

 そして一つの石柱の前に立たれると倭姫は我々に向き直り話し始めた。

 

 「先日までは、この石柱は名前のみの只の柱に過ぎませんでしたが、今では全ての石柱に御霊が宿っているわ。

 なので、遺族や子孫の方々に連絡を取り、出来る限りの神事による御霊鎮めを行いつつ、何れは魂魄の大掛かりの鎮魂祭を行うつもりです。

 どうぞ、アラン陛下と帝国軍人の皆さんには、皆の御霊に良かったねと語りかけて下さいね」

 

 と柔らかい物言いで倭姫が我々に語られたので、アラン様始め帝国軍人は先日と同じ様に手を合わせて拝み、心の中で御霊に良かったねと語りかけた。

 すると、幻聴なのかも知れないが、

 

 「・・・ありがとうございました・・・!」

 

 と囁かれた様な気がした。

 不思議に感じたが、別に怖く思う事も無く胸が温かくなった。

 

 7月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 『山城』という地域に新しい超大型ドームの都を作る為に、草深かった野原を更地にして輸送船がピストン輸送する形で、資材を摂津の港に積み上げている。

 新たな都の造営と避難民の新たな住居の増築と新機軸の物流拠点となるドームである。

 帝国からのドーム建設指導員と、各種の量産型ボットが凡そ1万体が到着し、凄まじい勢いで建設基礎となるポーリング作業が行われている。

 現在、繰り返し『日の本諸島』各地に有る行政機関の国衙を通して、八岐の大蛇が葬られて今後生贄の生娘等を差し出す必要が無くなり、500年間の悪夢が大陸の事実上の代表たる国家『人類銀河帝国』が晴らしてくれた事、そして新たな秩序を構築する為に協力してくれる事、更には職を求めたり新たな事業に加わりたいと願う者は、是非参画して貰いたい旨を通達させた。

 お陰で先ずは、近隣の住人が摂津や河内・兵庫の港にやって来て、『山城』の玄関口にあたる『山崎』や『鳥羽』『伏見』の地で、『ナノム玉1』と職業訓練を受けて貰い、超大型ドームの建設に協力して貰い始めていた。

 同時に各地への道の整備を進める為に、帝国のインフラ整備を始める為の都市計画プロジェクトが始動した。

 

 7月30日(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 八岐の大蛇の軛から解放された、『日の本諸島』の民は元々は勤勉で努力と向上心のある民族なのだろう、様々な大陸からの新技術と『日の本諸島』の魔法技術とは別の、新しい帝国発祥の魔法技術を積極的に学ぼうとあらゆる階層の人々が日の本全国から集結して来た。

 そんな中、八岐の大蛇を倒した当日から寝込んでいた天智大王が身罷った。

 今日になるまでの間、彼は様々な伝言を我々に遺していて、そして未来の『日の本諸島』の民が今後同様の被害に合わない様に、アラン様に全ての権限を移譲されて逝かれた。

 つまり今後『大和朝廷』は帝国の出先機関としての行政執行機関となり、『日の本諸島』の民への権威機関と精神的支柱は『伊勢神宮』が担うと云う事になった。

 以上の事を、天智大王は後の行政機関長たる弟の天武王子に言付け、アラン様の承認と共に帝国の正式な移譲書類が発布された事を確認すると、静かな笑みと共に安らかに大往生出来たのであった。

 此の日の夜の通夜の席で、天武王子がアラン様と我々に説明してくれた。

 

 「実は、私の兄者『天智大王』は、幾度も八岐の大蛇を倒すべく、様々な手段で戦いに挑み、その都度殺されていたのですが、毎回『変若水(おちみず)』と呼ばれる霊水を飲まされて無理矢理生き返らされていました。

 本来既に兄者は、死人でなければならなかったのです。

 しかし、八岐の大蛇によって無理矢理生きさせられて、兄者にとっては死よりも辛い己の民を生贄として、捧げなければならない境遇に置かされていて、毎晩兄者は血の涙を流して居りました。

 だが、全ての悪夢はアラン陛下と大陸の兵士の方々によって吹き払われました。

 きっと今頃兄者は、先に逝った友と再会されて喜んで高天原の喜びの野で宴に参加されている事でしょう。

 皆様、どうぞ兄者の望みが果たされた事を祝い、冥福出来た事を「お疲れ様でした!」と送り出して下さい!」

 

 と一筋の涙を流して天武王子は頭を下げた。

 事実上此の日を以って、『日の本諸島』は『人類銀河帝国』の直轄領となり、東方の要としての役割を割り振られる事が決まったのである。

 

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