人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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閑話89「ミーシャの思い出帳」⑯(第二回『世界武道大会』開催)

 第二回『世界武道大会』が始まり息子のケントと共に夫と合流する為に、ザイリンク公国に『飛行艇』で向かったの。

 でも本当に凄いわよねー、300人と云う人数を載せて空を飛んで、遥かザイリンク公国の公都に僅か8時間で着くなんて、一昔前には想像出来ないわ。

 昔は、それこそ軍隊並みの傭兵団を雇って大規模な隊商を組み、馬車でゆっくりと進みながら街道を行くんだけど、当然魔物や山賊の類も現れるし一々各国の関所も通過しなければならず、その都度通行税がかかるし、場合によっては各国の上層部に上納金まで取られるから、あまり小さい商会やギルドはそれぞれの国の中でしか商売したがらないのは当然だったの。

 だけど、『人類銀河帝国』の存立以来、インフラ整備と物流システムの大変革が起こり、世界の常識は根底から覆ったわ。

 今や帝国の主要公都は、魔導列車で完全に円環で結ばれて、1時間毎に次の魔導列車が発着して、人と貨物がひっきりなしに動いているし、高速道路もその脇を通っているから、物流の利便さは加速的に良くなってるわ。

 

 そんな物思いに耽っていると、隣の席に揺り籠毎載っている息子のケントが、「ダア、ダア」と言いながら短い両腕を精一杯伸ばして抱っこをせがんで来たから、抱きかかえて上げたら窓からの景色を見たがるので、高空からの見事な景色を見せて上げたの。

 すると息子は、少しも怖がらずに高い空から見える、雲の絨毯や澄み切った青空を見て、目を真ん丸くして嬉しそう。

 私と夫も、最初に『グローリア』殿に乗せて貰って、空の素晴らしさと風を切って進むスピード感に、感動してしまい、空軍が組織されると同時に一も二も無く志願して、幸い適正とワイバーン達に気に入られて、いきなり体長と副隊長に任命された経緯があるから、もしかすると息子も空を飛ぶ事が好きになり、空軍に入りたがるかも知れないわね。

 

 『飛空艇』内の、ビュッフェ形式レストランで昼食と息子の離乳食を食べさせていると、小等部・中等部選出の選手達がレストランに入室し来て、その中にテオ君とエラちゃんの姿があったの。

 私が手を振ると、気が付いた二人が近づいて来て、私に挨拶すると息子のケントをあやしてくれながら、近況を話してくれたわ。

 何でも、最近同盟国になった崑崙皇国の留学生が、大量にやって来ると云う打診が、学校側にあってからと云うもの、教師の方々の気合いの入り方が凄くて、学業は圧倒的に上だと自認しているから問題は無いけど、運動特に武術関係の訓練が凄まじい事になっているらしいわ。

 それもそうよね。

 学業分野は、他の大陸国家に比べ圧倒的な差を帝国は誇り、この差は殆ど埋める事は無理で、根本から帝国で学ばねばならないが、体力面では極論『ナノム玉』を服用さえすれば、簡単に差を埋める事が出来る可能性があるのだから。

 実際、崑崙皇国にも西方教会圏とは別系統の体術や武術が、連綿と受け継がれていて、その実力は私達軍人の間では例の崑崙皇国の武人同士の一騎討ちや戦闘シーンで、嫌と言うほど見せられて、帝国でも取り入れるべき部分が有ると検討した程だ。

 きっと今回の世界武道大会でも、その実力者が出場するだろうから、みんな驚く事になるわね。

 そういった会話をして二人と分かれて、暫くするといよいよ到着するから、『飛空艇』の高度が下がり始めたわ。

 その頃には、息子のケントもお腹いっぱいになった所為かぐっすりと眠っていて、そのまま到着して夫の居るホテルに着くまで、眠ったままだったの。

 夫も折角ぐっすりと就寝している息子を、無理に起こさせずにホテルの自室に案内すると、私と息子を休憩させて数日後の第二回『世界武道大会』の開催準備に出掛け、結局夕飯時に帰ってきた時に息子と再会して、お風呂に一緒に入り五月蝿いくらいにはしゃいでいたわ。

 

 満を持して開催された第二回『世界武道大会』は、昨年の規模を遥かに越えて出場選手の人数・種目・観客動員数も凄い事になったわ。

 中でも、私と女子会メンバーが応援していたテオ君とエラちゃんの演武と、エルナ親衛隊団長と剣王オウカ殿の女子部門決勝戦は見事だったわ!

 アラン様とクレリア様そしてアポロニウス様の皇帝一家に対し、まるで奉納するかの如く演武し終わってテオ君が最敬礼すると、クレリア様の腕に抱かれ、物珍しそうに学生の演武を見ていたアポロニウス殿下が、明確にその小さな両手をパチパチと叩かれたの!

 そのアポロニウス殿下の明らかな意思表示に、1番驚いたのはどうやら褒められた当のテオ君らしくて、直ぐにその場で大きくもう一度頭を下げたんだけど、アラン様とクレリア様がテオ君を主催者席に呼び、アポロニウス殿下直々にテオ君を褒めさせてくれたわ。

 

 テオ君はアポロニウス殿下の小さな拍手を目の前で見せられて、耐えられなくなったのか土下座したの。

 そのテオ君をアポロニウス殿下は、「アー、アー、」と言われながら、にこやかな笑顔で見られているわ。

 

 そしてエルナ親衛隊団長が惜しくも剣王オウカ殿に負けて、準優勝者としてクレリア様の元に戻ってくると、クレリア様始め現場に居た女子会メンバーは大いに祝福したわ!

 何と言っても、あの剣王オウカ殿に肉薄する程の剣技を見せて、会場全体から称賛のスタンディングオベーションが巻起こったんだから、クレリア様や初期の『クラン・シャイニングスター』の女性陣にとって誇らしい気持ちになったのわ私だけでは無かった筈。

 本当にこの第二回『世界武道大会』は成功だったと思うわ。

 

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