人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
11月12日(コリント朝元年)
朝になり、昨日は忙しくて合流出来なかった夫のガトルが、両父母達と一緒にミーシャの病室を訪れ、ミーシャの様子と赤ん坊の状態を見て、喜びを爆発させ周りにいた看護師から怒られていたわ。
そして孫の姓名が全員に発表されたの、
《ケント・マグワイア 》
名前が『ケント』で『マグワイア』が家名となるんだって。
この家名は、クレリア様がくれた家名で、今から300年前くらい以前に スターヴェーク王国を支えていた由緒正しい貴族だったのだが、旧アロイス王国の卑劣な侵略を受けて断絶してしまったそうなの。
だが、今回『アポロニウス皇太子殿下』誕生に際し、他の4人の赤ん坊の親達の帝国への献身ぶりを称え、過去にスターヴァイン王家を支えた4家を復活させて報いる事にしたそうね。
何とも恐れ多い話だけど、クレリア様とアラン様のたっての願いであると、爵位審議委員から説明され、素直に受け入れたようだわ。
となると私の姓名は今後『マゼラ・マグワイア』となるのね。
何だか、華族になったのも実感がないのに、とうとう家名が出来てしまったわね、畏れ多い話しだわ。
11月13日(人類銀河帝国 コリント朝元年)
今朝になって漸く全員で我が家の有る『ルンテンブルク館』群の家に戻ったの。
孫のケントにとっては、初のご帰宅になるわね。
ただ、まだ産まれたばかりなので、寝た儘の帰宅になってしまったわね。
なので、私と娘のカレンが準備していた部屋に入って貰い、直ぐにミーシャさんとケントには寛いで貰い、就寝して貰ったわ。
やはり、なんだかんだ云っても、アスガルド城ではかなり緊張していて、疲労が蓄積していたのね。
私と娘のカレンが、今日来訪予定である人数分の食事を用意していると、娘のお友達が来訪して来たわ。
しかし、娘のお友達も随分大人びて来たわ。
もう16歳になって、結婚可能年齢に達した所為か、身体つきが既に大人の女性と言っても良い程の子も居るし、かなり理知的な雰囲気を発している子も居るわ。
そんな子達に比べると、娘のカレンはまだまだ子供で、直ぐに興味を持った物には飛びついてしまい、落ち着きが無いからちょっと将来が心配ね。
そんな未来を何となく案じていると、家のチャイムが鳴って手の離せない私と娘の代わりに、休日なので家に居る夫のガトルが玄関に出たわ。
暫くの間、何やら夫と来訪者がガヤガヤと、話し込んでいるみたいで気になったから、娘に玄関先に行ってもらったら、マリオン君と夫そして娘が幾つかの大きな玩具らしき物を家に運び込んで来たの。
娘の友だちも手伝ってくれて、リビングに玩具らしき物を運び込んで、珍しそうにみんなで玩具をいじり始めると、マリオン君が玩具の使い方と用途、更にその目的まで説明してくれたわ。
しかし、本当に凄い男の子だわマリオン君は!
如何に『知恵と知識の神』と帝国で噂され始めている、『イーリス』様の薫陶が厚いと言われていても、たかが一人の赤ん坊の為に知育用の玩具を新たに作れるものかしら?
カレンのお友達も、やっぱり驚いたらしく、しきりに「凄い、凄い!」とマリオン君を誉めてるわ。
そのお友達の褒め言葉に、何故かマリオン君では無くて娘のカレンが鼻を高くして、
「エッヘン!凄いでしょう、私の親友のマリオンは!
アラン様とクレリア様からも、しょっちゅう褒められているし、最近は自分のオリジナル魔法の『浮遊魔法』を改良して、普通の『ナノム玉1』を服用した人でも使える様に完成させたんだから!」
と娘は平然と、もしかすると帝国の機密扱いかもしれない情報をバラしてるわ。
呆れてマリオン君を見ると、やや苦笑している程度なので、機密扱いと云う程でも無いのかなと安心したわ。
やがて正午になったから、ミーシャさんを起こしに行き、孫のケントと一緒にリビングに来て貰ったの。
案の定、娘の友だち達は、黄色い声を出して赤ん坊のケントを覗き込んだの。
その黄色い声に驚いたのか、孫のケントはお目々をパッチリと開けたんだけど、まだ生まれたばかりだから目の前の対象が判らないらしくて、しきりに目を瞬いていて特に泣きもせずに娘の友だち達を見つめて来る。
その愛くるしい姿に、感動したらしい娘の友だちの一人が、指先を孫のケントの小さい手に触れさせると、孫のケントはその可愛い手で握ったわ。
途端に娘の友だちは、身を震わせて感動したらしく、顔を紅潮させて指を握らせ続けたの。
すると、他の友だち達が、我先に次は自分だと順番を譲らせようとしたけど、私が窘めて孫のケントをミーシャさんの手づから揺り籠に入れて、娘の友だち達に触らせずに、食事を終えて手を洗ったら触れても良いと通達したから、途端に孫のケントから離れて、大人しく席に着いてくれたわ。
そして昼食を大勢で楽しく食べて、食べ終わった女連中は食器を全員で洗って、清潔に手を洗い直して孫のケントの周りに集まり、ミーシャさんの許可を貰って孫のケントにおっかなびっくり触っているわ。
こうやって、赤ちゃんを実際に触ったりあやす事で、子供だった娘達は己の中にある母性を知って、やがて自分の子供を持ちたいと思い、子供時代から卒業するのね!
と私自身の経験を思い出してしまったわ。