人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
9月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
辞令を受け取り、久々の家族や一族との休暇を楽しんで居る、各方面軍の将士達と違い、帝国軍上層部と帝国の大臣達は、難しい顔をして大会議室で一同に会していた。
其れは、『アラム聖国』という現在のセリース大陸に於いてほぼ唯一、帝国との接触を断っている国家の状況変化を示す情報であった。
実は、アラム聖国に対し、帝国はありとあらゆる方向からの諜報戦術を行使して、更に例の『カルマ』殿(アラム聖国の三聖人が一人)を通し、数々の情報を仕入れて居たのだ。
中央情報局局長のエルヴィン長官と、工作活動指揮官であるカトウ、そして隻腕に多数のギミックを仕込むハインツ副長官が代わる代わる説明を始めた。
「・・・アラン陛下の命令に従い、この2年半の間に出来る限りの諜報活動をして参りました。
幸い我等には、ミツルギ殿とカトウの一族と云う元々『アラム聖国』と繋がりの有る人物達と、『カルマ』殿と云う有力な後ろ盾が有り、かなりの『アラム聖国』の情報を得る事が出来、然も各地方まで習俗や民度そして教育等の、民間レベルの状況まで網羅する事が出来たのです。
しかし、いざ『アラム聖国』の中枢である宗教関係の中央と、最南端に有る広大な軍事施設には近寄る事すら出来ませんでした。
ですが、帝国技術部(親父が所属する帝国の最先端魔法と科学の研究部門)と帝国空軍の協力で、例の超高性能ドローンのスペクトル分析と、透過センサーと探知魔法による解析により、かなりの謎が調査出来たのです。
それによると、『アラム聖国』の中央部には巨大な地下空洞が有り、その中には異様なエネルギーの偏在が確認されているらしい。
しかし、それよりも問題なのは最南端に有る広大な軍事施設の先に有る、巨大なトンネルの存在であった。
何とそのトンネルは二股に分かれていて、その巨大なトンネルは南方の2つの大陸と繋がっていて、更にはその大陸には広大過ぎる地下空間が有ったのです・・・」
と3人が代わる代わる説明し、一旦説明を途切れさせ大会議室に備え付けの大型モニターに、『アラム聖国』と其処から繋がるトンネルの位置と、大陸に広がる広大過ぎる地下空間の概略図が示された。
《此れは、まさか?!》
と自分は思わず絶句してしまった!
恐らくこの自分の思いは、大会議室に集っていた殆どの人間の考えと一致していたに違いない。
何故なら、誰の目にも明らかな様に、本来の『アラム聖国』の領土と呼べる範囲は、セリース大陸の中央と南部の凡そ20%で有る。
しかし、このトンネルの存在と2つの大陸、更にそれぞれに存在する広大過ぎる地下空間を全て合わせると、セリース大陸全ての面積を越えていて、然も超高性能ドローンのスペクトル分析と、透過センサーと探知魔法による解析により、其処にはかなりの構造物とエネルギー偏差による生命体の反応まで有るのだ。
そしてそれを、この惑星アレスに於ける生命体の分布図と云う大きな範囲での偏差確認を行い、エネルギー総量の総合量等を比較するデータも示された。
そして、総面積だけでは無いデータが我々の前に展開された。
惑星アレスには、大凡5つの大陸とその周辺に点在する諸島が存在するのだが、2つの大陸である南北アメリア大陸はセリース大陸から遠く離れている上に、殆ど生命体反応は無い。
残りの暗黒大陸と言われる『アフリカーナ大陸』そしてストリア大陸は、セリース大陸と距離が近く船での往来も有るのだが、人が住んでいない事は確認されていた。
だが人が住んでいないだけで、動植物と魔物・魔獣の天国だとされていた。
しかし、今回のデータとより詳細な調査で、今までの常識は覆された。
エルヴィン長官が再度説明し始めた。
「このデータを元に、潜ませた諜報員により詳細な調査を始めたのですが、1年経っても中々進展せずに困っていたのです。
ですが、『カルマ』殿とその協力者が教えてくれた場所、そしてその場所を超高性能ドローンでの徹底的な調査をする事で、或る興味深い調査結果を得る事が出来ました」
そしてエルヴィン長官が口を噤むと、後を継いでハインツ副長官が或る単語を喋った。
「・・・『獣化兵(ゾアノイド)』・・・この言葉をアラン陛下はご存知では無いですか・・・?」
その言葉を聞いた此の場にいる全員が、アラン様に視線を移すと、アラン様は非常に険しい顔つきをして、明らかに『獣化兵(ゾアノイド)』と云う単語に思い当たる様子であった。