人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
10月17日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
あの大会議室での発表から一週間の間、帝国軍の上層部では徹底的な情報統制の元で、『パワードスーツ』の情報共有と、帝国軍上層部全員の『パワードスーツ』試着と、実戦練習が行われた。
その実戦練習を特に熱心に取り組んだのがアラン様だった。
「そうだ、ダルシム!
其処でピックターン(足底横から出る刺突上に出るピックで高速ターンする)をして、振り向きざまに『ヘビィマシンガン』による『パルス・ブラスター』を連射!
敵を確殺後、『ホバー・ダッシュ』を再開し、その場から離れ一気に次の敵との距離を詰めろ!」
ダルシム大将と云う、アラン様以外では最高峰の立場に居る軍人が、自ら志願して『パワードスーツ』に搭乗しているのだ、帝国軍上層部が如何に重要視している兵装なのか判るというものだ。
アラン様は続けて、
「次は固定武装の、『電磁ブレードソード』を展開!
接近戦にて目標を切断せよ!」
とダルシム大将にアラン様が指示し、ダルシム大将の乗る『パワードスーツ』は、右手腕部の手の甲側に格納されている1メートル程の『電磁ブレードソード』を飛び出させた。
そしてそのまま『電磁ブレードソード』を固定させて、目標である鋼鉄製のターゲット(『獣化兵(ゾアノイド)』サイズ)に一気に近づき、刃先を煌めかせながら切り刻んだ!
その凄まじいばかりの切れ味は、鋼鉄製のターゲットをまるでバターの様に抵抗無く切り刻ませた。
『電磁ブレードナイフ』の切れ味は、我等帝国軍人ならば常識として知っているが、『電磁ブレードソード』も負けていない。
一連の実戦練習を終えて、ダルシム大将が『パワードスーツ』から降りてきたが、頬を紅潮させて興奮したまま、アラン様に報告を始めた。
「アラン様、此の『パワードスーツ』と云う代物は、既存の戦争概念を完全に過去の物にしてしまう凄まじい兵器ですな!
極端な話し、『パワードスーツ』が10機有れば、現在の戦場の局面を変えてしまうでしょう!
この兵器ならば、件の『獣化兵(ゾアノイド)』にも十分対抗出来ると確信致しました!」
この報告に、アラン様は、
「その通りだ!
此の『パワードスーツ』と云う兵器は、現在の戦闘行為を完全に逸脱し、1機だけである程度の範囲の戦場を制圧し、此れが部隊、軍団と規模を拡大すれば、戦場そのものを支配する事が可能だろう。
故に私は、新たな兵種として『宙兵』という兵種を創設し、取り敢えずは私とクレリア直属の親衛隊の猛者の中から、選出した者を割り当てるが、何れは『パワードスーツ』を大量生産して、現在の歩兵全てに行き渡せられた段階で、歩兵と云う兵種を廃止し全て『宙兵』に置き換えるものとする!」
言いながらアラン様は、非常に感慨深げな顔をして、天を仰いだ。
何だか天を見上げながらアラン様はもっと遠く、つまり空を遥かに越えた『宇宙』と呼ばれる場所を、臨んで見られている様であった。
此の日は将官(自分を含む)全てが実際に乗って見て、『パワードスーツ』の凄まじさと、新機軸の兵器で有るという事実を身を以て体感した。
10月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
ほぼ1週間が経ち、中級以上の帝国軍人が『パワードスーツ』の凡その概念と、仕様を把握する事が出来た。
『パワードスーツ』の仕様は、
全高・・・・・5メートル(武器や装備の換装で変化)
重量・・・・・3.5トン(武器や装備の換装で変化)
基本巡航速度・・・・・80 km/h(武器や装備の換装で変化)
限界巡航速度・・・・・120 km/h(『ホバー・ダッシュ』を使用時)
駆動機関・・・・・超小型魔法炉(陸上艦船等に使われている魔法炉の小型版)
基本外装・・・・・オリハルコンとミスリルによる複合素材の合板
マッスルシリンダー・・・・・バイオ・マッスル(ドラゴンの筋組織を培養且つカスタマイズ)
固定武装・・・・・『電磁ブレードソード』(電磁ブレードナイフを大型化し、右腕腕部に内蔵)
外部武装・・・・・基本的に五指のマニピュレーターで保持し、持ち替えを容易にしている。
武装例・・・・・ヘビィマシンガン(パルス・ブラスターを超小型魔法炉から供給される魔素から生み出し、魔力が補填される限り撃ち出せる)
バズーカ砲(従来の帝国軍仕様の物を大型化し、魔導砲並の火力を実現)
粒子砲(スマッシャーと呼ばれる最新武器にして、超小型魔法炉からの直結を必要として、膨大な魔力を消費するが、圧倒的な火力を誇る)
リニアカノン(ランドセルに装着するタイプで、射程が5キロメートルに達する実体弾)
此等の装備とは別に、『パワードスーツ』1機に付き、量産型ドローンが1機サポートとして上空に滞空する。
用途は、『パワードスーツ』への情報提供と、中央司令部とのリンケージを確立の上、適切な中央からのフォローを受け取る為。
そして最大の目的は、常に張られている『バリアー』への魔力供給バッテリーでも有る。
これが、現在の『パワードスーツ』試作一号機の概要で有り、今後の量産化はこの能力を基本とする事になるだろう。