人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
11月15日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
先月の『パワードスーツ』試作一号機の試用運転訓練から始まり、専用の工場が始動して先行試作量産機20機がロールアウトし、帝都コリントからかなり離れた場所に有る秘密軍事訓練用ドーム、通称『ブラック・ドーム』で模擬訓練が行われていた。
此処では、新しい兵種の『宙兵』に志願した帝国軍人の内、より優れた人員凡そ100名が、入れ替わりで乗り換えし、先行試作量産機の実用実験と、耐用試験を繰り返している。
先行試作量産機は、ほぼ試作一号機と同等の能力を持ち、幾つかのバリエーションを製作した事で、より実戦に向いた仕様の模索が行われている。
そして様々なフォーメーションを試した処、最適解として判ったのは『パワードスーツ』を運用する最小単位としては、3機によるフォーメーションが良いと云う判断となった。
先ずリーダー機が居て其れが後方指示及び情報収集を行い、次に支援攻撃機が長距離・中距離の砲撃支援を行い、最後に接近攻撃機が中距離・至近距離の攻撃を行う事にするのだ。
当然様々な局面が想定され、必ずしもこの通りの行動が出来ない場面は幾らでも有り得るだろうが、基本はこのフォーメーションで望むのが、間違いないと訓練を繰り返す内に共通認識となった。
この『ブラック・ドーム』での『宙兵』訓練が始まってから、アラン様が帝国での公式行事や公務が無い時間帯は、なるべく『宙兵』訓練に参加される事が多くなった。
まあ、アラン様自身が最高峰の帝国軍人であられるので、訓練している姿を帝国軍人に見せるのは大いに結構だが、本来皇帝陛下の剣にならなければならない帝国軍人が、皇帝陛下一人に誰も敵わないと云う事実は、些か情け無い限りで有る。
なので、帝国軍上層部も暇さえあれば、『宙兵』訓練に参加していて、かくいう自分も空軍での仕事を終えたらアラン様に付き合い、昔の『クラン・シャイニングスター』での訓練さながら、ランニングやストレッチを基礎として『パワードスーツ』を乗り回し、最近鈍っていた身体に活を入れ直し、最前線で敵と戦う根性を取り戻して行った。
11月20日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
『宙兵』の存在がいよいよ帝国軍の尉官以上の軍人に知れ渡ったタイミングに、帝国軍内に公式な発表を行った。
つまり、今後歩兵と云う兵種は少しづつ『宙兵』と融合させ、何時かは吸収させる事となると云う予定であり、全ての帝国軍人はどの様な役職であろうと、『パワードスーツ』を乗り回せる技倆を習得する方針が示された。
その為に、帝都コリントから外れた『ブラック・ドーム』近くに、大規模な『パワードスーツ』製造拠点となるドームを3基つくる工事が始まっていて、50万人に及ぶ工員を帝国の同盟国等から募集していて、従来の職業訓練ドームの脇にもう一つの職業訓練ドームを作り、養成する準備に入っている事が発表された。
11月25日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
先行試作量産機の様々なデータを取り入れて、先行量産機50機がロールアウトし早速『宙兵』部隊に配備された。
『宙兵』はまだまだ発足したばかりの組織なので、臨時的にアラン様の直轄部隊なので、事実上の直轄組織である自分達空軍の1部隊の扱いになった。
まあ、『パワードスーツ』1機に付き量産型ドローン1機を配置しているので、空軍と連携するのは規定路線だから、元々のドローン実戦経験豊富な空軍が指導するのは当然だろう。
『パワードスーツ』では無いが、戦闘車両や戦闘バイクとの連携を、帝国成立前から経験してきたので、それを踏襲した戦術をレクチャー出来るのだから。
先行試作量産機の運用データから、先行量産機50機には平均的な能力に統一したので、どの機体でもリーダー機・支援攻撃機・接近攻撃機に成れる。
此の50機を元に、実際の戦闘経験をさせて行く事になった。
11月30日(人類銀河帝国 コリント朝2年)
今、自分はアラン様と共に巨大陸上空母『グラーフ・ツェッペリン』で、『魔の大樹海』の深部に向かっている。
以前『フェンリル』がアーティファクトに操られていた時の情報で、凶悪な『サイクロプス(単眼の巨人)』の1団との遭遇が有ったのだが、支配出来ずに見逃さざるを得なかった事実が有ったそうなのだ。
体高が最低でも5メートルを越える『サイクロプス(単眼の巨人)』は、以前にも妹のカレンが『魔の大樹海』に向かった際に、現在では帝国でも最大の冒険者クラン『疾風』(所属人数は既に5千人)のリーダーであるカール殿(アラン様に自由に面会出来る様にする為に、《名誉男爵》の地位であるが、本人は華族の地位であると認識していない)が、『疾風』メンバー100人で3頭の『サイクロプス(単眼の巨人)』を倒している。
中々の強敵なので、今回の『パワードスーツ』の実戦相手として、悪く無いと考えられた。
ドローンからの情報で、50頭の『サイクロプス(単眼の巨人)』の1団が居る集落が確認されたので、先行量産機50機全てを、グラーフ・ツェッペリンから出撃させ、ワザと警告の為の花火を集落上空に打ち上げる。
当初は、花火に驚いて右往左往していた『サイクロプス(単眼の巨人)』も、木々の間から現れた『パワードスーツ』を見て、全員が棍棒を握ると戦闘体勢を整えて迎え討とうとしている。
『パワードスーツ』には今回、敢えて一切の武装をさせずに本体のみで戦闘してもらう。
何故なら『サイクロプス(単眼の巨人)』は、基本腕力のみの接近戦しかして来ないので、飛び道具の類を使用するのは訓練にならないと判断されたからだ。
やがて睨み合いに業を煮やした『サイクロプス(単眼の巨人)』達が、
「「「「「ゴオオオオオオーー!」」」」」
と叫びながら、手に持った棍棒を振りかざして、『パワードスーツ』に迫ってきた!
その雄叫びを受けても『パワードスーツ』達は、慌てる様子も無く広く拓けた集落の中央に向かって突進する!
衝突する!
そう見えた瞬間、『パワードスーツ』達は『サイクロプス(単眼の巨人)』達の棍棒を掻い潜り、其れ其れがアームパンチや足払いそして肩からのタックルを喰らわせた!
『サイクロプス(単眼の巨人)』達の前面に居た奴らが倒れ伏すと、突進速度が無くなった『サイクロプス(単眼の巨人)』の周囲に『パワードスーツ』達は散開すると、一斉に接近戦を仕掛けた!
其れ其れが、一対一の対戦相手を決め戦闘状態に入った!
『サイクロプス(単眼の巨人)』達は、必死に棍棒を振り回して『パワードスーツ』に当てようとするが、『宙兵』として選ばれた帝国軍人の選りすぐりの人員は、流石の運転技術で『パワードスーツ』を縦横無尽に取り回し、殆ど人間の動作と遜色ない動きを再現させて、中には武術の技と同等の動きで倒していく。
30分もすると、『サイクロプス(単眼の巨人)』は全て討ち取り、尽く集落の中央に死体が積み上がった。
そして崑崙皇国の符術魔法と帝国の先端魔法の融合である、『魔物分解魔法』がグラーフ・ツェッペリンの砲塔から斉射されると、『サイクロプス(単眼の巨人)』は巨大な魔石を残して土へと分解された。
此れで、第一段階の体格が同等の魔物に対しても、接近戦で十分勝てる見込みが着いたので、第二段階の射撃・砲撃訓練を演習形式で行う事になる。