人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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12月の日記①(人類銀河帝国 コリント朝2年)《『アフリカーナ大陸』の一端》

 12月5日(人類銀河帝国 コリント朝2年)

 

 不思議な事件が帝国の同盟国と友好国で10件発生した。

 細かい事件概要までは判らないが、どうやら帝国が各国上層部に配布した『ナノム玉1』と、農場等に蒔くMM(マイクロ・マシーン)の散布用の多数の袋が盗まれたらしい。

 こんな事件は、掃いて捨てる程発生していて、必ずと言って良い程犯人は簡単に見つかり、重犯罪者として最低15年に及ぶ労役が課されるので、全く旨味の無い犯罪として帝国では当たり前だが、同盟国と友好国でも忌避されていた。

 なのに珍しく10件も立て続けに発生した上に、帝国国内で無いとはいえ、同盟国と友好国でも都心部で犯罪が行われた上に、犯人の行方が判らないとは、非常に珍しい。

 

 この事実に、中央情報局局長のエルヴィン長官は、帝国の上層部による情報共有の為の臨時会議の招集をアラン様に訴え出て、アラン様もこの事を非常に危惧して臨時会議を開催させ、各地方方面軍の幕僚達もモニター参加させる運びとなった。

 冒頭エルヴィン長官は、

 

 「ご存知の通り、『ナノム玉』を略奪した場合には、ドローン経由のマーカーで追跡出来ますので、異常行動を取った際には、直ぐに中央情報局で把握出来るので此れまでは長くても3日の内に回収出来ていました。

 ですが、今回の一連の盗難事件では、そのマーカーが一切機能せずに追跡が出来ず、痕跡を追う事も出来ませんでした」

 

 と非常に悔しそうに顔を曇らせて報告した。

 我々も、この臨時会議に臨む前にある程度の情報で知っていたが、改めて聞かされると事の重要さが思い知らされる。

 

 帝国の繁栄の素地は『ナノム玉』に有る、と断言出来る程『ナノム玉』の恩恵は素晴らしい!

 何故なら、余程の病気や毒物等の外的疾患で無い限り、殆どの怪我や病状は時間は掛かるが治してしまう上に、教育に於いてもモニターで放送された内容等を一度でも見れば、脳内で何度でも反芻出来るし、記憶の劣化も無い。

 更に、身体能力の向上と身体生理の調整が可能で、任意に身体の瞬間的なブーストを掛けたり、同じ反復動作を長時間行う場合の身体的負担を効率的に行う事も可能だ。

 加えて、ドローンと連携すれば自分が何処の場所に居るか、今が何時か等の状況把握を帝国の『中央情報処理施設』で集中管理されているので、例え本人の意識が無くても『中央情報処理施設』では状況が把握出来る。

 此の様な、ほぼ完全な情報管理システムを組んでおける『ナノム玉』は、体内に入れる前の段階でも位置情報は判る様になって

いるのだが、今回はどういった手段を取ったのか、完全に隠蔽された様だ。

 

 エルヴィン長官は続けて、

 

 「なので、こういった場合の次善の手段としてアラン様と協議して、超高性能ドローンによるセリース大陸の動向分布図を熱探知とスペクトル分析等のセンサーで、各時間に於けるスキャンを掛けて見ました。

 すると、かなりの数の不自然な動向を示す組織だった部隊と覚しき者達が確認出来たのです。

 御覧ください!」

 

 と言い終わると、背後の大型モニターを指し示す。

 大型モニターには、かなりの数の光点が帝国以外の国家の中心地域で集まると、一斉に集団となって動き始め、最も近い海岸線に出ると一気に速力を増して或る海域に向かう。

 その或る海域で集団は動きが収まり、その後ゆっくりと集団は一塊となって、或る地上へ到達した。

 その地上地点がモニター上で指し示されて、我々は呆然とした。

 無理も無い、その地上地点が有る場所とは、遥か昔からセリース大陸の近くに有りながら、余りにも過酷な土地柄と厄介極まりない魔物の宝庫として、人の住めない土地、所謂『ノーマンズランド』として信じられていた大陸、『アフリカーナ大陸』だったからだ。

 

 しかし、先日の『アラム聖国』の実体が知らされてより、かの大陸が警戒対象である事も判っている。

 だが、長年の常識がこうも容易く覆させられると、今までの常識とは砂上の楼閣でしか無かったと再認識させられる。

 

 そしてモニター表示が、世界地図の光点では無く現実の映像に切り替わると、とんでもない構造物がその姿を現した。

 其れは大きかった。

 最初は山と思った。

 だが、山と言うには不自然な穴が無数に開いていて、寧ろ別の物である事が暫くすると判ってきた。

 そして誰かが呟いた。

 

 『・・・・・蟻塚・・・・・?』

 

 その呟きで正体が判らず、ひたすら胸の中が靄ついていた気分が晴れた。

 そう、其れは凄まじい規模の蟻塚に酷似していたのだ!

 その規模は、山処か正に山脈と言って良く、海岸線から大陸の中央部にまで達する、長さ2千キロメートルを越える代物で有った。

 

 我々は、暫くの間ポカンとした表情を浮かべて、呆然としてしまった。

 此の様な信じ難い規模の構造物を、『アラム聖国』は作っていたのか?

 一体何時から?

 どの様な建築技術で?

 其処には何が住んでいるのか?

 中の構造は?

 等々。

 

 疑問は次から次へと浮かび、背筋に戦慄の震えが走る!

 我々は、帝国が強者で有る事を疑っていなかったが、其れはあくまでもアラン様達のお陰であって、今後は我々も一層の努力と研鑽を積まねば、此の強大過ぎる国家と対抗出来ないと感じられたからだ。

 

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