人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
11月10日
一昨日からの強行軍を続けた結果、『魔の大樹海』を抜けファーン侯爵領外縁に到達し小休止に入る。
強行軍の最中も我々空軍は、偵察と監視そして警戒を続け我軍の接近を敵に悟らせず敵の戦力概要はほぼ把握している。
アラン様がファーン侯爵の長男レオン殿に、1週間前には状況を教え此方が援軍に向かう旨も伝えているので、ファーン侯爵領城邑では先の戦争と同様に付近の市町村の住民の城邑内への退避と物資の搬入は既に終えており、城壁上にはコリント領で開発した魔道砲(試験品でまだ3台しか無い)が設置済みである。
ただ魔獣達の中に想定を超える魔獣が2匹いた事が問題で有った。
1匹目は、グランド・タートル・・・・巨大陸亀と云うべき存在で全長30メートルに及ぶ巨体で、俊敏性は皆無だが物資輸送量が相当量有り守りも硬く敵の動く本陣となっている。
2匹目は、ロック鳥(ルフ)・・・・・巨大な鷲と云うべき存在で全長30メートルに及ぶ巨体で空を飛び、敵の空軍戦力の中核で周りにはハーピー100羽を従えている。
この2匹とフェンリルが目を引くが、他の戦力はグレイハウンド(約1万匹)、ゴブリンキング率いるゴブリン各種(約2万匹)、オークキング率いるオーク各種(約1万匹)、コボルトキング率いるコボルト各種(約5千匹)、そしてオーガ10匹を含めた雑多な魔物(約5千匹)の計5万匹強が敵の陣容で有る。
グランド・タートルはまだ戦場には到達していないが、ロック鳥が両足に掴んだ大岩を城門に落とす攻撃を受け城の南門は崩壊し掛かっていて、其処に足の早いグレイハウンドが波状攻撃を掛けている。
以上が現状である。
その報告を吟味されアラン様、ダルシム副官、ヴァルター機動第一軍指揮官他上層部は、道中に立てていた作戦プランの第二案と第四案の改定版を採用する事に決定し、各軍は装備を通常用から戦闘用に変更してフル充填した魔石を各部アタッチメントに装填、兵士達は予め配布されていた栄養剤(万能薬を希釈し各種栄養素を加ええ更にバース殿監修の味に整える事で飲みやすくなった)を飲み戦闘準備は整った。
アラン様は立体プロジェクターを起動し説明を始めた、
「皆、戦闘準備は終わった様だな。
これから我等はファーン侯爵領城邑に救援に向かうのだが、既に戦端は開かれ城の南門は崩壊し掛かっている。
よって我等は機動軍と空軍、その他に別れ、その他は(立体プロジェクターに我軍の表示が現れ矢印が行動順路示す)この様に行動して南門から城に入り防衛戦に突入する。
機動軍は城には入らずそのままグレイハウンドとの交戦に入り、その他の敵軍が来たら戦わず入城してくれ。
空軍は厄介な敵の空軍(ロック鳥を指差し)を総力を以って撃滅し、その後全軍集結して次の行動に移る。
今回の敵は戦力に於いて、以前の人間相手の戦争の10倍は有ると思われる、負けるとは思わぬが苦戦は必至と考えるので、常に通信装置から伝わる情報を聞き現状の把握に努め連絡を密とせよ。」
と訓示されたので全員、
「ハッ、了解で有ります!」
と返事し、其れに応えてアラン様は、
「良し、其れでは全軍出撃!」
と号令を発し、其れに応えて空軍以外は『魔の大樹海』を突っ切ったフォーメーションのまま、ファーン侯爵領城邑目指して残り5キロメートルを疾走する。
その様子を上空から確認しながら我々空軍は、軍団魔法『ソニックインパルス』のフォーメーション隊形であるグローリア殿を先頭にした魚鱗の陣に移行した。
残り1キロメートルを切った段階で、敵空軍のハーピーが我々に気付き「キキキィー」と警戒の奇声を上げ其れにロック鳥も気付きこちらに向かって巨体を旋回させ対決姿勢を取った。
我等空軍は軍団魔法『ソニックインパルス』を発動させて、こちらに向かって来るロック鳥とハーピーの集団目掛け真っ向勝負に出た。
『ソニックインパルス』の風の防御壁にハーピー達は跳ね飛ばされて地面に落ちて行くが、肝心のロック鳥はグローリア殿の2倍もの巨体な為にこちらが進路をそらされた。
双方旋回運動に入り、こちらは次の軍団魔法『ハウリングパニッシャー』を放つ。
だが、アラン様達が事前に推測していた通り、ロック鳥とハーピー達は萎縮どころか平然とこちらに向かって来る。
やはり『魔獣使いの杖』で操られている魔獣には、精神に作用する魔法は効かない様だ。
ならばとばかりに、次の軍団魔法『ファイアーサイクロン』を多重展開させ広範囲を炎で埋め尽くす。
流石に此れは効いた様で、次々にハーピーは焼き尽くされて行くが、ロック鳥は巨大な翼を羽ばたかせ炎を散らしてしまう。
アラン様から指示が発せられ、グローリア殿とアラン様がロック鳥を牽制している間にハーピーをワイバーン隊が殲滅する様にとの命令が下った。
自分とガイは指示通りに次々とハーピーを、ファイアーグレネードと竜の牙で作った『ドラゴンランス』のランスチャージで屠り、自分以外のワイバーン達も同様にハーピーを倒し、残る敵空軍はロック鳥のみとなっていた。
ふと空軍以外はどうなったのかと下界を観察すると、予定通りに機動軍がグレイハウンドを蹂躙しているのが見えた。
機動軍の先端でドリルバイクはサンダーの魔法を発動させている様で、ドリル部分を黄色に光らせ機動軍全体が雷光を発し、襲いかかるグレイハウンドの大群を海を切り裂くが如く貫いていく。
此れこそ、近衛軍と機動軍が展開出来る軍団魔法『インドラ』である。
軍団魔法『インドラ』・・・・鋒矢の陣で敵に突入するのは、軍団魔法『イフリート』と同じだが先端に当たる者が雷系の魔法を発する魔道具を駆使する点が違い、基本的に敵を痺れさせ長時間行動不能にする事を目的とした魔法で、『イフリート』と比べ効果範囲が広い。
予想を超える戦果に、きっとカイン殿は凄まじい高揚感の中で戦っているのだろうなと思いながら目を転じ城を見ると、南門は応急処置なのか土魔法で巨大な土壁で覆われている、これならば簡単には崩せないだろうと安心し城壁上を見ると、近衛軍と支援軍がファーン侯爵領兵と共にあって何時でも防衛戦が出来る体勢が整っていた。
地上の確認が終わり、グローリア殿とロック鳥の死闘に目を向けると両者接近戦にもつれ込んでいた。
しかし、それでも決着が容易にはつかないと見たアラン様は我々空軍に命令を発した、
「空軍は散開しロック鳥を大きな輪の形に取り囲め、軍団魔法『サンダーストーム』を展開する!」
空軍全体に緊張が走り、各々規定のポジションに散開し軍団魔法『サンダーストーム』を仕掛ける体勢に入る。
そして大きな輪の中心にグローリア殿がロック鳥を誘導しアラン様が、
「今だ!
全員ドラゴンランス投擲!!」
その命令一下空軍全員が、ドラゴンランスをロック鳥に投擲し15本中8本がロック鳥に突き刺さった、次の瞬間アラン様が、
「軍団魔法『サンダーストーム』展開!!!」
と号令を発した。
そしてロック鳥を中心に巨大なストーム(嵐)が展開され、そのストーム目掛け空軍全員のサンダーの魔法が放たれ、徐々に周囲が静電気を帯び始め準備が整ったと見たアラン様が、グローリア殿と協力し天の裁き『インドラの矢』を最大魔力で放った!
軍団魔法『サンダーストーム』・・・他の軍団魔法が多くの敵を対象に展開されるのに対し、基本的に強力な一個体を軍団全員で攻撃する魔法である、先ず避雷針とする為のドラゴンランスを打ち込み、次にアラン様が敵を巨大なトルネードで閉じ込める、そして外側からサンダー系の魔法を打ち込み続け、周囲の電位差(この理屈は自分には判らないが)を変容させ、最後にアラン様とグローリア殿が協力し天の裁き『インドラの矢』を最大魔力で放つ。
その瞬間世界が白く染め上げられ、続いて振動を伴った轟音が周囲一帯を包み込み、静寂が訪れる。
静かな時が暫く続き、皆が辺りを確認すると地上に黒焦げに成ったロック鳥がピクリとも動かずに絶命していた。
その死を確認した者が歓声を上げ、続いて戦場と城にいた全員が歓声を上げた。
余りの凄まじさに戦場にいたグレイハウンドは、敵の本陣であるグランド・タートルに撤退して行った。
物見として偵察を空軍が行うと、敵はグランド・タートル始め魔物達も『魔の大樹海』に戻り出てくる様子がない。
其れ等を確認し予定通りに全軍を城に有る練兵場に集結させ、損害の確認と装備の補充に取り掛かる。
そうしている内に、レオン殿と領兵の指揮官達がやって来てレオン殿が、
「アラン辺境伯様、よくぞあの『魔の大樹海』を踏破し、援軍としてやって来られ魔物達を追い払って下さいました、心より御礼申し上げます。」
と跪いて言上されたので、アラン様は、
「顔をお上げ下さい、それにまだ敵の空軍を倒しただけで敵の本隊は未だ健在です、先ずは休息を取りその後で作戦会議に移りましょう。」
と返答され、レオン殿も立ち上がりやって来た馬車に乗って作戦指揮用の大型トレーラーを先導して城に向かった。
我々は補給軍が用意してくれた食事を摂り、トレーラーから出した簡易ベッドの上に寝転がり、激闘だった昼間の戦いを反芻しながら就寝した。