人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月1日(人類銀河帝国 コリント朝3年)
3年目となれば最早恒例と言って良いだろう。
恒例の人類銀河帝国生誕2周年記念セレモニーが執り行われた。
そして朝からは、アラン様達皇帝一家と皇族であるベルタ公の現況が放送された。
何と言っても、皇族にとって年末に3人の新たなる姫殿下が参加した事は、帝国としても非常に嬉しいニュースであるのは、帝国民全てが理解している。
凄まじいばかりの国力と軍事力を誇る帝国だが、肝心の皇帝家の姻戚関係が殆ど無いと云う事実は、想像したくも無い話しだが、アラン様とクレリア様が何かの事故でお亡くなりになった場合、帝国は簡単に瓦解してしまうからだ。
正直、ベルタ公アマド殿下では此処まで大きくなった帝国を、維持管理する事は不可能だし、カリスマでも役者不足で早晩帝国は崩壊してしまう。
つまり、純粋な皇帝家の人数が増える事は、帝国として死活問題と言える。
幸い、アポロニウス皇太子殿下と云う完全無欠の後継者が居られるが、如何せんまだ一歳の赤子である。
何れは年齢が進むに連れて、素晴らしい後継者となられるだろうが、なるべく皇帝家には増えて頂きたいと云うのは、帝国民全ての願いだろう。
しかし、自分の此の様な思いとは別に、非常に性急な考えを持った他国の王族や貴族が居て、セレモニー後の際に聞かされたのは、アポロニウス皇太子殿下達に対しての婚約斡旋の依頼である。
帝国華族は、当然皇帝家に対しての尊崇が強く、此の様なあからさまな行動は控えているが、他国としては己の国家の浮沈が掛かっていると思うのは、人の業として仕方無いのかも知れないが、自分にまで依頼して来るのには、困惑するしか無い。
その事を、帰り道に妻のミーシャに言うと、驚くべき話しを聞かされた。
予定通りにミーシャと息子のケントそして妹のカレンは、皇子宮で赤ちゃんズをあやして居たのだが、控室に大勢の赤ちゃん連れの王族・貴族の奥様方が来訪され、クレリア様達にお祝いを寿ぎに来られたのだが、その際にそれ程あからさまでは無いにしても、アポロニウス皇太子殿下達へのお近づきの為に、クレリア様以外の奥様ズに接近して来たらしく、息子のケントにもお近づきになりたいので自宅に都合の良い時に、お伺いしたいと申し込んで来たそうだ。
何とも断り辛い申し出なので、どうしようかと思いながら自宅に着いてリビングで話していると、両祖父母が『シルバー友の会』の華族の方々からも、似たような申し出が有ったと、苦笑しながら話して来て、頭を抱えていると、両祖父母達がにこやかに笑いだして「じじとばばに任せなさい!」と快く請け負うと言ってくれた。
どういう風に解決してくれるのか判らないが、独自のコネクションや会社を幾つも持っているので、その方面からの対応を考えてるのかも知れないな。
1月5日①(人類銀河帝国 コリント朝3年)
同盟国のイリリカ王国の魔法剣を大量に積んだコンテナを荷台に載せたデコトレ20台が、イリリカ王国から帝国に続く街道で襲われた。
此のイリリカ王国の魔法剣は、帝国の警察組織の職員や警備員が携帯する短剣タイプで、従属国に派遣している陸上警備艇にも常備している物で、標準装備である。
襲われた場所が直ぐに特定出来たのは、超高性能ドローンが超高空からセリース大陸全域を網羅する、状況管理システムと、量産型ドローンを怪しい動きが有った段階でその地域に派遣していたからだ。
最新の『空軍アビオニクス・システム』で確認しながら、『ドラゴン・フライヤー』10部隊を帝都コリントから出動させ、早速自分の乗艦である陸上巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』も帝都コリントから出港させた。
此れを端緒として戦乱が、またも西方教会圏に吹き荒れるかも知れない。
帝国の上層部は、あらゆるレベルで警戒体制に入った。
何故なら、帝国のデコトレとは洒落にならない戦闘力を持っていて、正直一昔前の軍隊では騎馬隊を含む1中隊に匹敵するだろう。
そのデコトレが20台破壊された様なのだ、相当な組織で無ければそんな攻撃力を保持している筈が無く、この時点で帝国は確定では無いが、敵を特定していた。
だからこその『ドラゴン・フライヤー』部隊の派遣であり、光学迷彩を施した量産型ドローンの大量配備である!
後1時間程で、現場に『ドラゴン・フライヤー』10部隊が到着、と云う段階で大凡のデコトレ20台破壊の前後状況が判明した。
2時間前にデコトレ20台が、インフラ整備で舗装されたイリリカ王国から帝国を繋ぐ幹線道路を、規定の時速60キロメートルで走行していると、いきなり天候が変わり雷鳴を伴った豪雨に晒されたのだ。
この段階で、超高性能ドローンによる超高空からの監視が不可能になり、直ちに量産型ドローンが現場に向かったのだ。
幸い、現場の過去動画の履歴から、現場が急変する15分前の動画で、幹線道路脇に待機する怪しい馬車の群れが確認出来て、荷台から出て来て何やらアーティファクトと思われる魔道具を使うシーンが動画に収まっている。
恐らくは、以前の『ナノム玉』と『MM』の強奪事件も此の様な方法で行われたのだろう。
雷鳴を伴った豪雨が打ち付ける現場は、如何に超高性能ドローンでもリアルタイムでは、サーモグラフィーと探知魔法を駆使しても、状況把握は難しい。
辛うじて量産型ドローンの接近による動画で、豪雨の中何か大きな生き物が、動作しているのが漸く判る程度で、非常に現場は混沌としていた。
だが、漸く『ドラゴン・フライヤー』10部隊が現場近くに到着し、『パワードスーツ』がホバーダッシュで現場に向かい、ドラゴンとドローンはそれを上空から追尾して現場に向かう。
現場まで1キロメートルに迫り、戦闘体勢を整えた『パワードスーツ』達が速度を落とし、警戒しながらゆっくりと現場に近付く。
するといきなり現場の天候が晴れた!
そう、突然雷鳴を伴った豪雨が消えたのだ!
その不可解な状況を訝しむゆとりもない光景が、現場には現出していた!
何せ、体長5メートルを越えた魔物の群れが凡そ100頭、『パワードスーツ』達を迎え撃つべく戦闘体勢を整えて身構えて居たのだ。
そして、やはりと言うべきかその姿は、我々帝国軍が想定していたものであった。
「獣化兵(ゾアノイド)!」
そう、此の瞬間に『アラム聖国』との総力戦の火蓋が切られる前哨戦が、始まろうとしていた!