人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月5日②(人類銀河帝国 コリント朝3年)
強烈な殺気が、先程までの豪雨で泥濘んで泥と化した周囲の土地に比べ、幹線道路はアスファルトと工業用MMのお陰で水はけが良く、綺麗な道が顔を覗かせていて、この睨み合いの場でやや相応しく無い様な気がする。
「グギャヤヤヤギャ!」
と奇怪な叫び声が、獣化兵(ゾアノイド)のリーダーと思われる個体から発せられた!
次の瞬間、30体程の獣化兵(ゾアノイド)達が前に進み出ると、その獣化兵(ゾアノイド)の両肩から奇妙な突起物が飛び出した。
《んっ?》
と思っていると、突如その突起物が「バクンッ!」と開いて、中には奇妙な光が収束して見えた!
「カッ!」
と言葉にならない音がモニター越しに聞こえ、モニター画面に光が満ちた!
《上位光魔法か?!》
そう、其れは上位光魔法の『ブラスター』を収束させて放った際の現象に酷似していて、効果も同様らしく幹線道路のアスファルトを飴細工の様に溶かし、パワードスーツ10体の内の半分に直撃した!
しかし、如何に強力な『ブラスター』であろうと、ドラゴンとドローンからの魔力供給を受けた『バリアー』の前には、殆ど効果は無い。
当然パワードスーツもやられっぱなしで済ます訳もなく、直ぐ様ホバーダッシュで高速移動を始めると、メイン武装の『ヘビィマシンガン』による『パルス・ブラスター』を連射し始めた。
そのパワードスーツの雨あられの様な猛攻撃に、獣化兵(ゾアノイド)も先程の『ブラスター』を収束させずに連射させて来た。
だが、最初に比べて収束せずに連射する『ブラスター』攻撃は、パワードスーツの表面を舐めるだけで、一つもダメージを与えられずに居た。
「ガッカカカカカッ!」
と新たに獣化兵(ゾアノイド)のリーダーと思われる個体が、別の指令と思われる雄叫びが発せられて。
遠距離攻撃をしていない獣化兵(ゾアノイド)達が走り出して、パワードスーツに突進して来る!
余りにも単純な対応に、自分始め周囲に居る空軍の幕僚が苦笑し始め、空軍管轄のドラゴンとドローンに支援攻撃を命令した。
此の初戦を問題無く勝利するために、敢えてドラゴンには自分の騎竜たるガイとそお伴侶であるサバンナを派遣しているので、ガイとサバンナは命令通りにドローンと連携して、見事な支援攻撃でパワードスーツに近付く獣化兵(ゾアノイド)の足を止めさせ、パワードスーツの『ヘビィマシンガン』による『パルス・ブラスター』で穴だらけにされて5体の獣化兵(ゾアノイド)が沈んだ。
すると獣化兵(ゾアノイド)の中から、犀の様な体表を持つ奴らが出てきて、他の獣化兵(ゾアノイド)の前面に出て防御態勢を取ってきた。
どうやら防御重視の個体らしく、土魔法まで駆使して他の獣化兵(ゾアノイド)達を守ろうとしてきたが、巨体の獣化兵(ゾアノイド)達の全てを全天で守れる筈もなく、ドラゴンとドローンそしてパワードスーツによる立体的な連携攻撃で、防御の隙間に攻撃されて行く。
だが、やはり獣化兵(ゾアノイド)達は『バリアー』こそ無いが、予想通りに頑丈でそのタフな体力を利用し、再度接近戦を挑むべく土魔法を解除すると、一斉にパワードスーツに飛びかかってきた。
此れも想定していたので、パワードスーツ達はホバーダッシュを上手く使い距離を取り、遠距離での射撃戦を選択し、1体ずつを集中して倒して行く。
やがて接近戦を挑もうとする獣化兵(ゾアノイド)が居なくなった処で、パワードスーツ達は足を止めて、ランドセルに装着しているリニアカノンを次々と発射した。
しかしその強力な攻撃も、犀型の獣化兵(ゾアノイド)が土魔法を併用した防御陣が防いでしまった。
それを見たパワードスーツ達は、肩にオプションパーツとして装着している、スモーク弾(煙幕魔法弾)を獣化兵(ゾアノイド)達の防御陣周りに発射し、奴らの目を奪った。
次のタイイングに、ドラゴンとドローンでの空中からの攻撃を集中させ、獣化兵(ゾアノイド)の注意を上空に向けさせる。
その間に攻撃を一切せずにパワードスーツ達は、奴らの防御陣に肉薄し厚い土魔法での壁に、肩にバリアーを集中させたショルダータックルで突っ込んだ!
「ドオオオオオオオーーーン!」
その地響きを伴う破壊音を上げ、土魔法での壁が崩壊し犀型の獣化兵(ゾアノイド)5体が露わになった。
そしてその犀型の獣化兵(ゾアノイド)達に対し、1体につき2機のパワードスーツが至近距離まで接近すると、左腕に装着していた盾の突起部分を押し当てた。
「貫け!」
パワードスーツ部隊の隊長が命令すると同時に、盾の中に仕込んである杭が爆発音と共に射出された!
「ガアアアアーーー!!」
と犀型の獣化兵(ゾアノイド)5体が苦悶の絶叫を上げた瞬間、雷撃魔法が犀型の獣化兵(ゾアノイド)に食い込んだ杭から内部に向けて放たれた!
ズズンッ!
という音と共に犀型の獣化兵(ゾアノイド)5体が、突っ伏すようにその場に倒れる。
《・・・パイルバンカー・・・!》
今使用した武装の名前であり、パワードスーツの隠し武器の一つでも有る。
左腕に装着している盾の突起部分を、盾内部に仕込んでいる射出装置に弾倉(カートリッジ)部分に、ファイアーグレネード弾を仕込む事で爆発させて、凄まじい威力での貫通力を持つ杭打ちを行う。
そして杭打ちを行った後に、パワードスーツ側から盾を通して雷撃魔法を相手の内部に叩き込む。
この一連の攻撃こそが、隠し武器『パイルバンカー』で有る。
そして防御陣が崩壊したので、残りの獣化兵(ゾアノイド)は中距離・遠距離に特化したような奴らのみ。
其奴らに対し、パワードスーツ達は右腕腕部に内蔵している『電磁ブレードソード』を展開、そのまま『電磁ブレードソード』の刃を煌めかせて斬りかかる!
其処からは簡単だった。
中距離・遠距離に特化した獣化兵(ゾアノイド)達は、接近戦が苦手なようで『電磁ブレードソード』に対抗出来る武装も無く、次々と切り刻まれて行く。
やがて戦場にはパワードスーツ以外に立っている者は無く、全ての獣化兵(ゾアノイド)達は倒れ伏して、その巨大な軀を晒している。
そう、帝国と『アラム聖国』の前哨戦は、帝国勝利で幕を閉じたのだ。