人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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2月の日記③(人類銀河帝国 コリント朝3年)《アラム聖国からの外交交渉団の先遣隊》

 2月24日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 沈黙を続けていたアラム聖国から、帝国に対して外交交渉団の先遣隊が来訪する旨が、ファーン大将の居るスターヴェーク公国のアラム聖国との国境線から齎された。

 どうやら、今年10月の不可侵条約締結期限を前に、事前協議として前提条件や更新内容の変更等を話し合いたいらしい。

 実際の処は、帝国とアラム聖国は水面下での小競り合い真っ最中だが、公的に表明している訳では無いので、未だ戦争状態に突入しているとは、国の内外には知らせていない。

 しかし、物資の略奪やテロ活動を西方教会圏で、アラム聖国側が起こしているのはほぼ間違いなく、後はアラム聖国側がそれを認めるかどうかだ。

 帝国は、和戦何れに状況が転ぼうと、対応出来る体制を既に構築しているつもりだが、例の『獣化兵(ゾアノイド)』や『故国奪還の役』の際にアラム聖国が使用した重火器類が、どの様に発展しているか予断を許さない面も有る。

 外交交渉団の先遣隊が、どの程度の権限を委託されて来訪するのかは判らないが、なるべく突っ込んだ交渉が出来ると良いなと漠然と思った。

 自分は、一人の帝国軍人としてこの様にどっちつかずの状態は、帝国と同盟国そして友好国にとって中途半端な警戒状態を今後も続けて行くのは、辛いだろうと想定出来るので、いっその事はっきりと敵国認定してくれた方が清々すると思った。

 

 2月27日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 魔導列車を経由して、アラム聖国からの外交交渉団の先遣隊が帝都コリントに到着した。

 様々な身体検査を受けてそれらをクリアして先遣隊は、帝国の外交交渉団と交渉に入る。 

 しかし、アラム聖国からの外交交渉団の先遣隊は、具体的な話し合いにはアラン様が出席しなければ、話せないと申し込んで来たそうだ。

 帝国の上層部としては、正直たかが外交交渉団の先遣隊に過ぎない分際で、皇帝陛下に対して無礼極まり無い!

 なので、モニター越しでの交渉を提案したのだが、アラム聖国側は渋っているようだ。

 

 2月28日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 結局、昨日の交渉では埒が明かないので、ありとあらゆる対策を施した上で、アラン様と周りに護衛の人員を配置した形で、臨時に用意した大会議室での外交交渉が行われる事が決まった。

 その大会議室の室外で、自分とカトウは幾つかの準備をして、待機している。

 

 改めて身体検査を終えた、アラム聖国からの外交交渉団の先遣隊メンバーは、周りを警護する帝国軍兵士の間を通って入室して来た。

 

 アラン様も護衛の人員と共に入室してきて、我等はその様子を中継されたモニター越しに見ている。

 アラン様が、

 

 「・・・さて、貴方方の望む形で、私が交渉の相手をさせて頂く。

 当然貴方方は私と交渉するに辺り、突っ込んだ内容での交渉が出来る権限を、アラム聖国上層部から付託されているのかな?」

 

 と発言されると、先遣隊メンバーは全員が突然笑い始め、

 

 「こんなに帝国の皇帝が愚かだとはな!

 あまりにも間抜け過ぎて信じられない程だよ!

 こんな奴に、聖なるアラム聖国の聖徒が犠牲になっていたとはな。

 精々地獄に堕ちて悔いるが良い!」

 

 とリーダーと思われる者が、アラン様を指差し戯言を吐いた。

 直ぐ様、アラン様の周りを護衛する様に親衛隊の精鋭が固め、他の親衛隊員が先遣隊メンバーを取り押さえようと迫ろうとした時、アラン様が押し留める様に指示し、先遣隊メンバーを遠巻きに取り囲む。

 その様子に、やや訝しんだ先遣隊メンバーだが、意を決した様に口から何やらシリンダーの様な容器を吐き出すと、10人全てが己の首筋にシリンダーの様な容器から出ている突起を突き刺し、その中に入っていた溶液を流し込んだ!

 

 「フフフッ、この時点で帝国の皇帝が死ねば、我等はアラム聖国の英雄として、未来永劫語り継がれるに違いない!

 オオッ、神よ感謝致します!!」

 

 と絶叫混じりに宣言すると、先遣隊メンバー全員が急速に膨張し始め、纏っていた服をアッサリと引き裂き巨大で異形な存在へと変貌していった!

 

 当然我等は、アラン様と帝国の要人を護衛して安全地帯へと向かおうとするが、元先遣隊メンバーの異形の一体が、出入り口に素早い動きで回り込み、我等の退避ルートを遮断した!

 

 そうこうしている内に、先遣隊メンバー全員の変化が完了し、その姿が確認出来た。

 その姿は数種類に分けられるが、この数カ月間に渡って我等帝国軍人の頭を占めていた存在、『獣化兵(ゾアノイド)』の姿であった。

 

 そして獣化兵達は、一気にアラン様とその護衛に向かって接近し、捕まえようと手を伸ばして来た!

 しかし、如何に体長5メートルという巨体で有りながらも素早く動くとはいえ、所詮は魔物のオーガを強化した程度の存在に過ぎない。

 アッサリとその掴みかかってきた手を掻い潜り、アラン様と護衛の親衛隊は出入り口に向かわず、すぐ側の壁を蹴り抜いて大会議室から出ると、

 

 「良し!

 想定通り正体を現したぞ!

 予定通り拘束せよ!」

 

 とアラン様が命じると、空中待機していたパワードスーツが一気に降下し、獣化兵を拘束する為に無力化しようと『電磁ブレードソード』を展開する。

 計画が狂ったと理解したのか、獣化兵の内5体が無理矢理パワードスーツ達に突っ込むと、突然自爆して来た!

 だが、当然その程度の事は想定していたので、やすやすとバリアーに防がれると他の5対は狂ったように手足を振り回し、パワードスーツを攻撃して来たが、簡単に四肢を切り落とされて無力化してしまった。

 化け物の顔のままであるが、何だか呆然自失している様子の獣化兵を尻目に、アラン様は命令を下す。

 

 「良し!

 此れでアラム聖国側が、帝国に戦端の口火を切った証拠としての動画が取れたし、ワザワザ獣化兵の生きた標本が手に入った。

 ファーン大将に臨戦態勢への移行を指示し、アラム聖国国境線に東方方面軍は布陣せよ!」

 

 との命令に我等は一斉に動き出した。

 しかし、如何に帝国の情報統制のお陰で、生の情報が手に入らないとは云え、外形的な事実として例のザッハークが討ち取られた事実から、帝国の凄まじい実力と舐めて掛かれない相手だと判らないとは、アラム聖国の上層部の傲慢さが透けて見える様だった。

 

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