人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
11月11日
早朝、偵察任務を交代する為に食事を摂っている時に、カイン殿がレオン殿にドリルバイクを自慢している姿が目に入る。
レオン殿は興味津々と行った感じでドリルバイクのドリル部分やダイナモ、タイヤ周りをカイン殿に尋ねながら触ったり動かしたりしている、その様子は親父が妹や自分にダイナモの素晴らしさや車両の画期的な先進性を熱弁を振るって説明している姿に酷似していて、魔道具が御兄弟共に好きなんだろうなと食事を終えガイに向かいながら、この分だとレオン殿のコリント領入りは早まるだろうと予感を覚えた。
ミーシャとサバンナのペアから偵察任務を引き継ぎ、魔の大樹海に居る魔物達の軍団を高空から偵察する、本来なら敵対して攻撃し合う魔物達が、鳴き声一つ上げずにじっとしている姿は異様の一言に尽き、この不自然さは例の『魔獣使いの杖』の強制力の強さを物語っている。
そういった諸々の事情を考えながら観察していると、グランド・タートルが突然動き始めそれと同時に各魔物達も動き始めた。
通信機で作戦指揮車に敵軍が行動を起こした事を報告し、そのまま偵察任務を続ける事を命じられ偵察任務を続行する。
相変わらずグランド・タートルはゆっくりと進軍しているが、グレイハウンドやコボルトは素早く30分もすれば城に到達しそうである。
ファーン侯爵領城邑でもこれに備え、南門を除いた城門の上には魔道砲を配置して敵が射程圏内に入り次第包筒に刻まれた刻印魔法に魔力を魔石から供給して、ファイアーグレネードとサンダーボルト(サンダーの上位魔法)そしてサイクロンカッター(ウイングカッターの上位魔法)を放つ用意が完了している。
そして城壁上には領兵と共に支援軍が配置され各種魔法を放つ準備は出来ており、そのサポートに補給軍も待機している。
近衛軍は城門が破られたり城壁を越えて来た敵に対処する為に城門内側に待機しているが、機動軍は南門の外側に既に出ておりその機動力で以って敵を撹乱する事になる。
我等空軍は、城に敵軍が攻撃を掛けている間に、手薄になった敵の本陣である『グランド・タートル』、そして最も強いと思われる『フェンリル』を倒すべく高空に待機している。
想定通りにグレイハウンドが城壁に到達するが、当然グレイハウンドに城攻め出来る訳がなくひたすら城壁を駆け上がろうとするが、城壁上から各種魔法攻撃が放たれ良い的となっていた。
其処へ、コボルトキング率いるコボルト各種(約5千匹)が続いて城壁に到達し、突如城壁下に穴を掘ろうとし始めた、だが其れも予想通りの行動であり城壁上から土魔法が放たれ、地面が硬くなり穴が掘れなくなったり、穴が出来た所は穴が閉じて生き埋めになったりしている。
コボルトとグレイハウンドが攻めあぐねて、立ち止まり始めた次の瞬間に機動軍が横合いから軍団魔法『イフリート』を発動させ突っ込む。
近衛軍と比べて圧倒的な速力を誇る機動軍は、その速力を最大限に活かし旋回運動する事で城の周りを周回し始めた。こうなるとコボルトとグレイハウンドは城に近付く事すら出来ない。
それから15分程経ち漸く、ゴブリンキング率いるゴブリン各種(約2万匹)、オークキング率いるオーク各種(約1万匹)そしてオーガ10匹を含めた雑多な魔物(約5千匹)が戦場に到着、土塁と化しとても登れない高さの南門を避け、北門にオーガ隊、東門にオーク隊、西門にゴブリン隊、そしてその周りにグレイハウンド隊とコボルト隊といった具合に其々が分担する様だ、明らかに知性ある者が配置を行ったと推測され、その者を第一目標として倒す事が全軍に通信機を通して通達された。
その最も怪しい候補地である、敵本陣目掛け空軍が空から急降下し軍団魔法『ナパーム』を使用する。
僅かに残っていた直掩の魔物達を一掃し、多少焦げているが健在の『グランド・タートル』が轟々と息を吸い込み始め次の瞬間口を開け空に向けて何かを発射する体勢になる。
慌ててグローリア殿が旋回すると空気の塊と思われる物が連射され、自分とガイの脇をかなりのスピードで空気の塊が飛んでいった。
これは、侮れないと思って距離をとり様子を見ていたら突然『グランド・タートル』の下から『フェンリル』が飛び出して来た。
強敵が2匹連携してくるのか?と空軍は警戒し更に距離を取ると、何だか様子がおかしい事に気付いた。
どうも『フェンリル』が『グランド・タートル』に対して攻撃を始めたのだ。
よく見ると『フェンリル』の後方に白いローブを着た女性らしき人物が居て、『フェンリル』はその人物を庇っている様に見え、『グランド・タートル』の甲羅の上にも魔法障壁が張られた小屋から杖を振りかざした人物が確認出来た。
此れはもしかして仲間割れか?と疑って見ていると、『グランド・タートル』が例の(空気弾)を『フェンリル』に向けて発射し、『フェンリル』は氷壁を前面に作りそれを跳ね返す。
その様子を見たアラン様は、
「第一目標である『魔獣使いの杖』を持つ者を確認出来た、その者と敵対していると思われる『フェンリル』とその後方に居る人物は一旦攻撃対象から外し、『グランド・タートル』の上に居る人物目掛けサンダー系の魔法で集中攻撃を掛ける。
総員『グランド・タートル』の攻撃を避けつつ攻撃開始!」
早速自分とガイも『グランド・タートル』の首の可動域外から協力して放つサンダーボルトを小屋目掛けて集中させる、グローリア殿とアラン様は敢えて攻撃せずに『グランド・タートル』の前に降り立ち、(空気弾)をエアーウオールで無効化させる。
その間『フェンリル』は女性らしき人物を守ったまま、我々と『グランド・タートル』の戦いを静観している。
サンダーボルトが5回程小屋に直撃すると、魔法障壁が「パリンッ!」と音を出して割れ、その後すぐに浴びせられたサンダーで杖を持った人物は小屋の中に倒れ込む。
すると『グランド・タートル』は攻撃を止め、突然魔の大樹海の有る後方に向きを変えると進み始めた。
どうやら『魔獣使いの杖』の強制力から解放された様だが、そのまま上の小屋に倒れ込んで居る人物を連れて行かれては困るので、自分とガイは『グランド・タートル』の上の小屋毎倒れ込んで居る人物を引きずり落とす事で『グランド・タートル』を解放した。
生存確認をしようと近付き仰向きにひっくり返すと口から青い泡を垂れ流し絶命していた。
アラン様が来られて件の人物の様子を見て、青い泡に触れない様に指示してグローリア殿の後部座席に乗せさせ、『魔獣使いの杖』もご自身が回収された。
そして『フェンリル』に向かい、
「我々は、君と背後に居る彼女に敵対する意思は無い。
どうか彼女と話させてくれないか?」
と尋ねられ、『フェンリル』も言葉が判るのか頷くとアラン様が彼女に近付くのを容認し脇に退いた。
アラン様が白いローブを着た彼女に近付き、挨拶を交わそうとしたタイミングに彼女は膝から崩れ落ちた。
どうやら今迄は気が張っていて立っていた様だが、安心したのか立っていられなくなった様だ。
此処では治療も出来ないとアラン様が『フェンリル』に話しかけられ、『フェンリル』も納得した様で彼女を器用に自分の背に載せると城に向かってくれた。
既に『魔獣使いの杖』の強制力から解放された魔物達は、城への攻撃を止め魔の大樹海に向けて退散しており城に帰るのは簡単だったが、そこら中に散乱する魔物達の死体を見て此れは後始末が大変だと明日からの作業を想像して思わず溜息が出た。