人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
3月12日③(人類銀河帝国 コリント朝3年)
アラム聖国軍の『聖獣騎士団』《光翼隊》と『破滅竜ジャバウォック』と思われる一団は、アラム聖国の首都である『マーラーヤナ』から出撃すると、一路戦場を目指して飛行して来る。
その速度は音速に達していて、戦場に程無く到達して来る事は確定である。
帝国軍は、植物の蔦に覆われたドーム型の防御壁に籠城したアラム聖国本隊の包囲を解除し、全力で『聖獣騎士団』《光翼隊》と『破滅竜ジャバウォック』を迎え撃つ事に決めて、直ちに迎撃用の布陣を取る。
その間に、自分が統括する空軍はアラン様と共に出撃準備に入った。
今此処に参陣している空軍は、全体の5割で他の5割は、北方と東方に振り分けているが主力のドラゴン軍団は120頭が、此処に居る。
ドラゴン軍団は、各々最強の空戦形態に武装を換装させ、次々と準備を終えたドラゴン達は帝国軍艦艇の上空に飛び立ち滞空し始めた。
そして自分の乗艦である巨大陸上空母『グラーフ・ツェッペリン』から、両サイドに有るカタパルトデッキに、専用の装備に身を固めたアトラス殿とグローリア殿が迫り上がってきた。
アトラス殿が気合いの乗った声を上げる。
「アトラス及びグローリア!
『光翼竜(ケツアルコアトル)モード』増装タイプにて出撃する!」
と2頭共に通常の『光翼竜(ケツアルコアトル)モード』は両翼に100枚の羽根を装着しているのだが、その羽根部分も増加装甲に覆われ、胴体部分にも武器が幾つか増加している。
そしてその増加した装備の重量分を賄う為に、胴体下部には量産型ドローンに使用されている『スクラムジェットエンジン』が取り付けられていて、ドラゴンとしての飛行能力以上の推進力が確保されている。
魔力による飛行推進で静静と音も無く全ドラゴンが帝国軍艦艇の上空で一塊の戦闘集団に固まった。
やがて地平線の彼方に、『聖獣騎士団』《光翼隊》と『破滅竜ジャバウォック』が目視で見えてきた。
奴らも戦闘集団としてかなのかは判然としないが、大きな塊となってやって来る。
量産型ドローンからのカメラで細かい『聖獣騎士団』《光翼隊》の構成が判ってきた。
種類は、
キマイラ、ワイバーン、フライングワーム、マンティコア、虹蛇、ロック鳥、ヒポグリフ等の帝国の『魔の大樹海』でも見られる飛行魔獣達だが、一様に通常の魔物よりも身体が大きく、種類によっては3倍はありそうだし、全ての飛行魔獣が頭に光輝く兜と翼にも光輝く皮膜を被っている。
どうも此れが、《光翼隊》の異称の由来の様だ。
構成されている飛行魔獣は多岐に渡る様だが、ドラゴンは『破滅竜ジャバウォック』だけらしく、ドラゴン特有の反応は他に無い。
ならば分断は容易いと見た自分は、ヘルメットでの龍脈(レイライン)を通した遠隔感応システムで、ドラゴン達に命令を下し『聖獣騎士団』《光翼隊》と『破滅竜ジャバウォック』を分断した上で、先ずは『聖獣騎士団』《光翼隊》を殲滅する戦術を取る様に指示し、その間はアトラス殿とグローリア殿が『破滅竜ジャバウォック』を牽制するように命じた。
「「承知!」」
と云うアトラス殿とグローリア殿の返事の感応波がヘルメットに届くと、アトラス殿とグローリア殿は一気に高空に舞い上がり、両肩に装着している大口径ブラスター砲で超遠距離に居る『破滅竜ジャバウォック』の胴体に攻撃をぶち当てた!
「シャギャアアアアーーー!」
『破滅竜ジャバウォック』は明らかに戸惑い、そして痛みに驚愕した様な絶叫を発した。
もしかすると奴は、まともな攻撃を一度も受けたことが無かったのでは無いだろうか、実際アラム聖国軍の戦い方にも現れている通り、同格以上の戦闘の経験が皆無の印象を常に受けていた。
それ故に、敵に対しての読みが常に上から目線で、正確な見積もりが出来ないでいる。
恐らく其れは『破滅竜ジャバウォック』にも当て嵌まり、きっと帝国にドラゴンが居る事は把握しているだろうが、決して同格とは思わずに容易く倒せると捕らぬ狸の皮算用をしていたのだろう。
その格下の相手から、超遠距離攻撃を受けた上に少なく無いダメージを被り、『破滅竜ジャバウォック』は怒り心頭に発しているに違い無い。
案の定『破滅竜ジャバウォック』は、高空に居るアトラス殿とグローリア殿目掛け大きく羽ばたいて、《光翼隊》を残したまま移動して来る。
《想定通りだ》
と思わず声を出さずに自分はほくそ笑み、ドラゴン軍団の先頭に居るガイとサバンナに命令した!
「直ちに新軍団魔法『ファイアートルネード3』を以って、『聖獣騎士団』《光翼隊》を一匹残らず殲滅せよ!
地上から帝国軍の艦艇による艦砲支援も有るので、バリアーは胴体下部を厚くして、くれぐれも被害を受けないように!」
と指示すると、
「「了解!」」
と2頭からの返答が返ってきて、ドラゴン軍団はガイとサバンナを先頭とした紡錘陣形を取る。
紡錘陣形が出来上がったドラゴン軍団の周囲に透明な膜が出来上がり、次の瞬間猛烈な炎がドラゴン軍団の周りに吹き上がった!
そしてその炎は、ゆっくりと旋回し始め暫くすると尋常でない回転となり、戦場の空を赤く燃え上がらせる!
その信じられない程の猛火に、あからさまに《光翼隊》は怯み、散開して避けようとしたのだが、それを帝国軍が許す訳もなく、《光翼隊》が逃げようおする空域には艦砲による弾幕を張り、一切の逃走ルートを断つ!
やがて充分過ぎる火力と回転力を得たドラゴン軍団は、紡錘陣形を維持した上でその凄まじい炎を纏った螺旋回転で、約10倍の《光翼隊》に突進する!
逃れようのない状況に、半狂乱となりながら《光翼隊》は炎を吐いたり魔法を唱えたり毒液を吐いたりと、ありとあらゆる攻撃をドラゴン軍団に対して放った!
だが、そんな攻撃が『ファイアートルネード3』に通用する筈も無く、攻撃が届く遥か手前で「ジュッ」と云う音を残して雲散霧消する。
そしてドラゴン軍団の『ファイアートルネード3』は《光翼隊》の先頭部隊と接触する。
いや、接触したと見えただけで、実体はまるで其処には最初から《光翼隊》の先頭部隊など居なかったかの様に、抵抗無くドラゴン軍団は進んで行く!
5秒程で《光翼隊》を呆気なく貫くと、直ぐ様ドラゴン軍団は踵を返し、180度進路を変更すると《光翼隊》の後方部隊に向かって突進する!
同様の行軍を5回ドラゴン軍団が繰り返す事で、7割の《光翼隊》が燃え尽くす形で地面に落下して行き、落下した《光翼隊》は当然帝国軍艦艇が回収して行く。
頃や良しと自分は判断し、ガイとサバンナに最後の命令を下す。
「トルネード・スパーク発射!」
「「了解!」」
直ぐに訓練通りの返事が2頭から返り、ドラゴン軍団は突進する方向を斜め上に変え、ファイアートルネードだけは《光翼隊》の残り部隊目掛け直進する!
「「スパーク!」」
ガイとサバンナを始めとしたドラゴン軍団が、戦場に轟く咆哮の様な叫びを上げると、ファイアートルネードが《光翼隊》の残り部隊の中心部辺りで、一気に爆散した!
この凄まじい爆発で、辛うじて飛行していた《光翼隊》の残り部隊は全て炎に包まれて落下して行った。
此処に、周辺各国を蹂躙し続けたアラム聖国自慢の『聖獣騎士団』《光翼隊》は、一匹残らず殲滅の憂き目に遭ったのであった。