人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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3月の日記⑧(人類銀河帝国 コリント朝3年)《第3都市『ムンバイ』到着》

 3月13日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 昨日の激闘と出来上がってしまった巨大クレーターの跡地近くで駐屯し、戦闘後の後始末と精査を行っている。

 本来なら、アラム聖国の首都の『マーラーヤナ』に向けて進軍すべきなのだろうが、昨日起こった幾つかの想定外の事態を確認しないと、これからのアラム聖国との戦いを優位に進められるか帝国軍上層部が不安に思ったからだ。

 

 3月16日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 色々な痕跡やドローンで撮影されていた動画を確認して、幾つかの事実が確認された。

 若干残っていた植物の蔦を精密検査した処、どうも獣化兵(ゾアノイド)が変異した物である事が判明した。

 つまり、土魔法で防御壁を作って籠城したと思われていたが、実はその段階で獣化兵(ゾアノイド)は植物の蔦に変異していた様だ。

 そして『破滅竜ジャバウォック』が其処へ落ちて行ったのも、偶然などでは無く最後の力で植物の蔦で覆われたドームに向かったらしい。

 そして植物の蔦から巨大な花が咲く直前に、空気が吸い込まれたと思われていたのだが、厳密に言うと吸い込まれていたのは二酸化炭素らしく、逆に酸素濃度が付近一帯に満ちていたらしい。

 らしい、と言うのは自分は今までしらなかったのだが、植物と言うのは光合成とやらをする際に、二酸化炭素と云う空気中に含まれる物質を吸収し、酸素と云う空気中に含まれる物質を精製するそうだが、自分には判らない(何でも『学校』では小等部で教わるそうだ)。

 

 自分はその当時他の方向を見ていたので気付かなかったが、どうやらジャバウォックを中心に構成された『種子』の様な物が形成されていて、次の瞬間巨大な花が大爆発を起こしてその『種子』を放出したらしいのだが、その規模が常識外過ぎていて、何とその『種子』は此の惑星から飛び出して、宇宙へ放出されたらしい。

 信じ難い話しだが、そもそもそんな事をしてまで何をしたかったのか理解不能なので、一旦棚上げにしてアラム聖国攻略に力点を置こうと決断した。

 

 3月20日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 準備を整えて、アラム聖国攻略する為に帝国軍艦隊は、主要幹線道路をゆっくりと東方に進軍する。

 此れまでの帝国軍の道程はしっかりとインフラ整備を行い、カトマンズには巨大なドームを建設する為に、小型のドームが20基カーゴシップで輸送されて来ている。

 現在、帝国でのインフラ整備を統括する超巨大省庁である国土交通省大臣は、ファーン大将の長男であるレオン財務省・総務省大臣が此れまでは兼任していたのだが、カトル大臣(運輸省・ギルド管理庁・企業庁)とアベル(元ベルタ王国宰相ヴェルナー卿の息子)外務大臣と共に協力し、ヴェルナー国務大臣が全体を統括している。

 まあ、実際の処はアラン様の指示の下、優秀な高級官僚が事務を推し進め、各企業体と一緒に活動している。

 お陰で、此の超巨大省庁である国土交通省には、帝国の官僚と地方職員だけで10万人に及び、実際に仕事を熟している関連の企業体とギルド職員を含めると500万人を越えるので、帝国軍と帝国警察機構に次ぐ巨大組織に今では成長している。

 恐らくは、現在組織化され始めた崑崙皇国の『土木工事共同体』とも関係を密にするだろうから、遠からず帝国最大の組織となるのだろうな。

 

 3月22日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 アラム聖国の3番目の都市である『ムンバイ』に到着した。

 此処は、アラム聖国の内陸に有る商業都市としては最大の都市で、帝国の宣戦布告を受けてからは早々に中立宣言をだして、事実上アラム聖国からの独立をした国家となった形だ。

 元々、アラム聖国の首都である『マーラーヤナ』は、人口では『ムンバイ』の30分の1しか居ない純粋な宗教都市で、経済活動等の人の生活に根ざした基盤を持たずに、周辺の都市や宗教的な利権でしか成り立たない都市なので、3番目の都市である『ムンバイ』と2番目の都市である『デリー』は不満を募らせていたのだ。

 此の点に着目していた帝国中央情報局は、エルヴィン局長が最重要と考え密かに三聖人の『カルマ』殿の協力の元、予めムンバイの上層部に働き掛けて帝国とアラム聖国が戦争状態に入り、アラム聖国が国内の締付けが緩んだ段階で、ムンバイに居た軍隊を三聖人の『カルマ』殿がワザと命令を出して『マーラーヤナ』の援軍に向かわせた事で、事実上軍事力の存在しない無抵抗都市となっていたのである。

 そして帝国軍が、ムンバイに到着して早々に東方教会の宗教指導者達は、アッサリとムンバイから放逐されてしまい、かなりの人数が『マーラーヤナ』目掛け退去していく。

 

 どうもアラム聖国と云う国は、聖と云う言葉を冠している割には宗教色がそれ程浸透していないと感じる。

 その事を疑問として、会議の時にカトウに質問すると、カトウが説明してくれた。

 

 「帝国始め西方教会圏では、『ルミナス神』の前では全ての民は皆平等な信徒でありますが、アラム聖国の東方教会圏ではカースト制と呼ばれる階級制度が存在していまして、『ルミナス神』を同じく信仰していますが、順位のある階級制度で神の恩寵がある事になっているのです」

 

 と、自分を含む帝国人にとっては想像出来ない論理を開陳して来た。

 

 《それでは何か、『ルミナス神』が人の階級によって差別する事を容認する社会体制だと言うのか?!》

 

 とてもでは無いが、あの優しげに常に微笑まれている『ルミナス神』が人を差別すると云う、信じ難い事を東方教会圏では信仰しているというのか!

 カトウは続けて話してくれて、

 

 「実は、アラム聖国とその従属国では階級によって、『ルミナス神』を信仰する度合いは全く違い、より階級の上の者ほど信仰心は強く、平民はそれ程信仰しておりません。

 そしてその階級が上とされている者達の、アラム聖国での人口比率は3%程で、大多数の平民はそもそも国がどうなっているのかサッパリ判らない状態が、アラム聖国が始まって以来疑問にも思わずに過ごしています」

 

 との説明をされて、自分は此れまでのアラム聖国に侵攻してからの道中、アラム聖国の平民から一度も敵意を向けられず、ただ帝国軍の艦艇を物珍しそうに見ている風景が思い出された。

 

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