人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

327 / 352
4月の日記②(人類銀河帝国 コリント朝3年)《アラム聖国の変事》

 4月16日(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 早朝にアラム聖国の首都『マーラーヤナ』に、アラン様と自分其れに親衛隊の手練達は、ドラゴンの輸送カーゴに久し振りに乗って到着した。

 始めての来訪で以前の賑わいを知らない所為かも知れないが、早朝の為か人っ子一人いない路上と人が居れば当たり前の喧騒と炊事の煙が無く、まるで廃墟の様に閑散とした都市で有った。

 

 そんな中、予め此の『マーラーヤナ』に潜入していて、三聖人の一人で有る『カルマ』殿に協力している帝国中央情報局の職員が、片腕に包帯を巻いた状態でドラゴンが着陸した広場に出迎えた。

 帝国中央情報局の職員は直ちに跪くと、

 

 「陛下!申し訳ありません!

 私共の任務である『パウロ法皇』と一部の宗教指導者の身柄保護と云う、最重要任務を果たす事が出来ませんでした!」

 

 と報告して来たのだが、直ぐにアラン様は職員を立ち上がらせると答えられた。

 

 「いや、其処まで謝る必要は無い。

 あくまで最重要任務とは云え、出来ればと云う程度の話しでしか無くて、お前たち帝国人の生命を脅かしてまで保護する必要は無いよ。

 其れに、概略として報告された状況では、小型の獣化兵(ゾアノイド)もかなりの数襲撃に参加していた様だし、無理をして全滅する方が余程帝国にとって損失だ。

 生きて私に報告出来ているそなたの判断は間違えていない」

 

 と断じられたので、帝国中央情報局の職員は涙ぐみながらも「ハッ」と返事した。

 

 そして職員の案内の元で、アラン様と我々は『マーラーヤナ』中心部で存在感を否応無く放っていたであろう壮麗な建造物に向かう。

 その建造物の名は『タージマハール』と言い、東方教会圏に於ける最高権威を象徴していて、膨大な信者の寄進により維持運営されていたらしい。

 らしいと云うのは、現在此の『タージマハール』は明らかに半壊していて、其の特徴的な屋根部分には穴が空き、横に有ったと思われる礼拝所は完全に崩壊している。

 

 ある程度原型を保っている聖職者用の宿舎から、褐色の肌で体格の良い上半身裸の男が出てきて、アラン様と我等を迎えてくれたが、何だか自分は此の男に見覚えが有った。

 

 《何時か出会っていたかな?》

 

 と疑問に思いながら、その男から案内されて室内に入ると、2年半前の不可侵条約を締結する為に、帝国に来訪された外交交渉団に身分を偽り参加していた、三聖人の一人で有る『カルマ』殿が複数の男女を引き連れて現れた。

 何故か、その従者の様な男女にも見覚えが有り、自分の中で疑問が広がる中アラン様と『カルマ』殿は互いに歩み寄られ握手された。

 『カルマ』殿が、

 

 「良くこんな不躾な喚び出しに応じて頂き、有難うございますアラン陛下!

 もう少し物事が片付いて来訪して貰う予定だったのに、突然の事態の所為で緊急の呼び出しに応じて貰うしか無かったのだ。

 此の様な形での来訪要請に応じて頂き、且つ礼をわきまえない対応を寛恕して貰いたい。

 話しを進めさせて頂くが、事前連絡した通り、アラム聖国の代表たる『パウロ法皇』と一部の宗教指導者が殺されたのだ。

 犯行は、昨日の朝の三聖人と各部門の宗教指導者7人による、定例会議中に起こった。

 何時もの様に、今後の帝国との関係修復と戦後の事後処理を議題としていたのだが、此処最近は和平に傾いていた『パウロ法皇』と宗教指導者7人に対し、私『カルマ』は敢えて中立の立場で対立しない様にしていたのだ。

 しかし、三聖人の一人にして教団内NO,2に位置する『アグニ』が、徹底抗戦を以前より主張し、全く歩み寄ろうとしなかったので、昨日とうとう『パウロ法皇』と宗教指導者7人は『アグニ』を無視して、停戦交渉に入ろうと決定した。

 すると『アグニ』は突然静かになると、会議室を断り無く出て行き、暫くすると小型の獣化兵(ゾアノイド)を含む兵士を伴ってやって来て、我々を殺そうとする凶行に走った!

 本来、獣化兵(ゾアノイド)や聖国の兵士は、調整培養の段階で絶対的な服従が、聖国の宗教関係者に対して施されていて、此の様な犯行が出来る筈も無いのだが、恐らくは『アグニ』が子飼いの獣化兵(ゾアノイド)や兵士を事前に調整培養していて、此の日の為に近くに伏せさせて居たのだろう」

 

 と長い溜息をついて、『カルマ』殿は嘆息すると続けて話し出した。

 

 「いきなりの凶行に、私以外の『パウロ法皇』と宗教指導者7人はアッサリと殺されてしまったが、私は隣室に控えさせていた『十二神将』の懸命な奮戦と、帝国の情報局の職員の頑張りのお陰で無事虎口を脱すると、奴らが知らない隠れ家に籠もり貴方方との秘密回線を通し連絡を取ったのだ。

 だが、その間に『アグニ』とその一派は、此の『タージマハール』に存在する、膨大な数のアーティファクトと魔道具、そしてアラム聖国の最秘奥の遺物にして法王庁地下に眠る『聖なる頭脳』が奪われてしまった!」

 

 それを聞いた途端アラン様は、傍目にも判る程の怒りを示されて拳を握り締めている。

 恐らくあの時に『カルマ』殿が話された、『サイヤン帝国』由来の遺物を奪われた事に、相当怒られているのが察せた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。