人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
4月23日(人類銀河帝国 コリント朝3年)
2日前に帝国から、魔法技術局の最新鋭の『飛空艇・魔法技術局専用機』がやって来て、山脈の開閉口から入って貰い、今は半ば地面に埋まっている船の探索と詳細な調査を行っている。
やって来たのは、賢聖モーガン殿を中心に魔法技術局の職員と、帝国の艦船開発の総責任者ドレイク殿とその愛弟子トカレフ達若手の技術者達だ。
現地の管理責任者や研究員と、早速様々な情報交換をやっていて、凄まじいばかりの熱気に満ちたやりとりが近くを通る度に聞こえて来る。
そんな中、カルマ殿とアラン様はお互いの幕僚達と共に、アラム聖国の軍隊の状況とアラム聖国の代表たる『パウロ法皇』と一部の宗教指導者を殺害し、雲隠れをしている三聖人の一人にして教団内NO,2に位置する『アグニ』が、潜伏していると思われる『アフリカーナ大陸』の地下都市に対して、どう対応するかの会議がぶっ通しで行われている。
あまりにも膨大なアラム聖国の全土に配備されていた軍隊と其の武器、そしてアラム聖国の従属国に駐留させていた軍隊の動向、其れ等の行軍進路をどの様に阻害するかの方針が検討されているのだ。
《しかし、本当にアラン様には頭が下がるな》
普通、此の大陸に於ける王族や皇族と云う国のトップは、ワザワザ危険極まりない戦場には近づかずに、安全な城の奥で軍人に戦を任せているものなのだが、子供を産む前までのクレリア様とアラン様は当たり前の様に、軍隊の最前線で指揮をするどころかアラン様に至っては、どの様な戦だろうと我こそは帝国の軍人であると言わんばかりに、我々帝国軍人にその雄々しい背中を見せながら先頭を駆ける!
そのあまりの当然であると云う態度に、何時しか帝国の軍隊は設立以前からアラン様の先陣が当たり前になっていた。
今も、アラン様が国家の方針と作戦を練るにあたっての状況把握を、率先している姿は正に帝国の指導者としての、凄まじいばかりの覚悟がお有りなのが良く判る。
此のアラム聖国との戦乱が終われば、事実上セリース大陸どころか、我々の住む此の惑星アレスの運命が決まり、漸くの平和な日常が皆で謳歌出来るに違い無い、そうなればアラン様も愛する奥方様達と御子様達に囲まれて平穏な暮らしを営める筈だ。
その日が一刻も早く訪れる事を念じて、我等帝国軍人一同は勝利の日に向かい邁進しようと思う。
4月25日(人類銀河帝国 コリント朝3年)
アラム聖国の従属国たるビルマ仏国から撤退して来るアラム聖国軍を、ゆっくりと追う形でビルマ仏国を通過して崑崙皇国軍がアラム聖国に入国した。
その崑崙皇国軍総司令官である『楊大眼』殿とモニター越しに、アラン様とカルマ殿は3者会議を行い、アラム聖国の2番目の都市である『デリー』で合流する事が決まった。
どうもアラム聖国軍は、獣化兵(ゾアノイド)を中心に従属国やアラム聖国各地の軍を全て糾合しながら、南方の『アフリカーナ大陸』と地下で繋がる大地下トンネルが有る基地に向かっている様なのだが、しきりと崑崙皇国軍に対して遊撃戦を加えて来ては、進軍スピードを落とす事に腐心しているらしく、何らかの意図を考えざるを得ず、その事も相談したいそうだ。
此のアラム聖国軍の比較的しっかりとした指揮統一が図れている状況は、カルマ殿によって説明されていた。
今から凡そ2年8ヶ月前の捕虜となった25万以上のアラム聖国軍は、『複製体(クローン)』という存在であり、例のアーティファクト『テンプテーション』と『聖水』の服用で命令通りにしか動かない、事実上の奴隷兵であったが、あれから『聖水』の改良と『テンプテーション』に頼らない形の『複製体(クローン)』達を操る魔道具が生み出され、更に新しい『聖水』を利用した獣化兵(ゾアノイド)を培養する技術が確立し、『複製体(クローン)』から獣化兵(ゾアノイド)を主体とした軍隊に移行させていた様だ。
更に此の獣化兵(ゾアノイド)達はアラム聖国の宗教指導者に対しての絶対服従が、培養する段階から刷り込まれている。
然もその絶対服従の順位は、アラム聖国の『カースト制度』と同様に身分に基づく順番なのだ。
つまり、アラム聖国の代表たる『パウロ法皇』が殺された現在、獣化兵(ゾアノイド)に命令出来る最上位者は、自動的に三聖人の一人にして教団内NO,2に位置する『アグニ』が手にしている。
然も、アラム聖国の最秘奥の遺物『聖なる頭脳』を略奪する事で、其の命令権限の解除が出来なくなっていて、恐らくはロックされている。
その事を確認する作業を何度か、アラン様とカルマ殿はあらゆる方向のトライアルで試したそうだが、全て通じなかったそうだ。
なので仕方ないから、『アグニ』の所在が判らない現在、獣化兵(ゾアノイド)達と戦わなければ、恐らく『アグニ』が潜伏していると思われる『アフリカーナ大陸』の地下都市に向かう事が出来ない。
一から製造された生命とは云え、殺さなければ前に進めない現状は、中々辛い話しである。