人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

33 / 352
25. 11月の日記⑥

  11月12日

 

 昨日の激戦を終え、当直の者以外は皆泥の様に眠り自分も珍しく昼近くまで寝ていた。

 起き出して練兵場広場に用意された、補給軍主導の炊き出し隊が作った臨時食堂で朝食兼昼食を摂り、厩に居るガイの所に行き食事とブラッシングをしてやり、ガイが満足気な鳴き声を上げ再度休息に入ったので作戦指揮車のある城へ向かう。

 其処では、ダルシム副官とヴァルター機動第一軍指揮官が指揮を取り、城内の被害のあった箇所への修復要員の派遣や怪我人への手当(ヒール)要員の派遣、そして城外の魔物の死骸から魔石を取り出す要員に簡便に魔石を取り出せる魔道具の貸し出しが行われていた。

 自分は初めて見たが、この魔石を簡単に取り出せる魔道具はバズーカの様な形をしており、砲部分の先端にはアダマンタイトを輪状に尖らせた物が付いていて、容易に魔物の身体を貫き魔石のある箇所をくり抜いてスイッチである引き金を引くと魔石と弱冠の肉片を取り出せるのだという。

 此れは、今迄の魔石取り出しの苦労を思うと画期的と呼んで良い魔道具だ、開発者は誰ですか?とダルシム副官に聞くと、ゴタニアからコリント領に来られた魔術ギルドのカーラさんだと答えてくれた。

 嗚呼、そういえば非常に派手な服を着ていて荷物を馬車一杯に積んだ目立つ人が居たな、と思い出す。

 何でもコリント領に着くなり、アラン様とクレリア姫様と交渉し大きな開発所と職員10名を預けられ精力的に研究と開発を行い、今では職員30名・工場一棟を抱えて、タラス商会とサイラス商会更には商業ギルドに其処で生み出された商品を卸すコリント領の稼ぎ頭だそうだ。

 そうなのかと思いながら、その魔道具を借りて城外の魔物の死骸から魔石を取り出す作業を午後は行った。

 

 11月15日

 

 昨日まで、魔石を取り出す作業と魔物の死骸を焼く作業を行ったお陰で、粗方の戦場の後始末は終了し城内の片付け手伝いをしていた所、アラン様の呼び出しを受け城の会議室に向かう。

 会議室では対面式に席が設けられ、片方は30席でアラン様始め軍の上層部とレオン殿、カイン殿と家臣5人が座られている、反対側は6席と何故か長椅子が1席並んでいる、訝しく思いながらハリーと何時もの立体プロジェクター設置をしていると、セシリオ王国の軍服を着た軍人らしき5名と白いローブの女性そして女性の横に寄り添う銀色の狼が1頭入室して来た。

 アラン様始め皆様立ち上がり、入室して来た人達と黙礼をし双方席に座った。

 徐ろにアラン様が、

 「それでは、暫定的ながらセシリオ王国亡命政権との交渉と経緯説明、そして対アラム聖国との対策検討会議を始めます。」

 との宣言がなされた。

 自分は内心驚いていたが、此処に居る面々は既に承知の様なので顔には出さずにいた。

 そしてセシリオ王国側の中央の人物が立ち上がり発言し始めた、

 「私はビクトール侯爵、先の戦争でセシリオ王国の総大将をしておりましたが、戦争に負けて捕虜としてこの城に捕らわれておりました。

 そもそも何故先の戦争が行われ、私達が何故今解放されているのか?その根本理由と経緯を説明致したく思います。」

 続けて、

 「約1年半程前に、アラム聖国の宗教使節団がやって来たのがそもそもの原因です、彼等は王宮に来て先王との対面後ルージ王(この時は王子)と会談が持たれました、そして何故か使節団代表ギランがルージ王の相談役として就任し諸々の宮廷会議にも顔を出す様になりました。

 それに対して心ある貴族や官僚がルージ王に諫言すると、その後面談と称した面接をルージ王とギランの居る部屋で行われ、帰ってくるとその諫言した者はまるで人が変わった様に、ルージ王とギランの意見に全面賛成と唱える傀儡と化していたのです。

 かくいう私もその一人で、そのカラクリはこの首飾りが原因です。」

 と言い首飾りを掲げられ、立体プロジェクターに其れが映し出されその概要が示された。

 「この首飾りは、精巧な魔道具で一度嵌めると映像にある通り皮膚と同化してしまい、他者からは首飾りを着けている様には見えません、そしてその能力は嵌めた人物への従属と云う形で現れます、私の経験から考えますとルージ王の意見は素晴らしく反対する事等考えられなくなり、侵略戦争を起こすと言われた際も素晴らしい大賛成だと思い総大将に志願した程です、此処に居る面々も同じで志願して将軍となりました、そして戦争捕虜となった後もルージ王は正しいと考え続けて居たのですが、こちらに居られるヒルダ嬢(白いローブを着た女性を示され)が首飾りのロックを外してくれたお陰で正常な判断が出来る状態に解放されました。」

 そしてヒルダ嬢が立ち上がり話始めた、

 「私もビクトール侯爵と同じくこの首飾りに支配されて居たのですが、『グランド・タートル』の指揮所に居たギランの持つコントロール用の魔道具を、アラン様達が攻撃をされ集中が途切れた瞬間にこの『フェンリル』(隣の銀色の狼を撫でながら)が奪ってくれたのです。

 それからは皆様もご覧になられていた通り『フェンリル』が私を守りながら戦い、アラン様達がギランを討ってくれたお陰で私は完全に解放されました。改めて感謝致します。」

 と頭を下げられた。

 代わってアラン様が、

 「皆に補足説明をしよう、以前から『黒』がセシリオ王国の不穏な動きに警戒し内偵を進めていたのだが、突然戦争に懐疑的な人物が好戦派に変わる理由が皆目判らず、どの様なカラクリが有るのか?と疑っていたのだが、この首飾りとコントロールの魔道具を入手したお陰で説明が着いた、つまりルージ王は貴族や官僚の反対意見を封じ込め国家を私物化した上でベルタ王国に大義の無い侵略戦争を仕掛けたのだ。

 だがその侵略戦争が大失敗に終わり、王都以外の地方領主から糾弾され始め事態に焦ったルージ王は、ギランに事態の収束を求め、ギランはセシリオ王国の切り札(『フェンリル』に目を向けられ)を使い戦争捕虜を奪還するべく此処に攻め入ったのだ。」

 と説明された。

 すると長椅子から『フェンリル』が立ち上がり、首に着けた翻訳機で朗々と話始めた。

 突然狼が話始めた事に、レオン殿と家臣の方々は驚かれたが、カイン殿と我々はグローリア殿と話し、此処に来る前には猫から説明を受けていたので、今更狼が喋ろうと驚きは少ない。

 「俺は、このヒルダと誓約を交わしていてヒルダが願う事は最優先で叶える事になっている、そのヒルダが俺の知っている戦いに使える物や方法を教えて欲しいと願ったので、何時ものヒルダでは無いと判りながらも俺の知る盟友たる『ベヒモス』の守る『猫の王国』の事、そして其処に有る秘宝『魔獣使いの杖』の事も話さざるを得なかった。」

 と話し、

 「ケットシー128世と『ベヒモス』には大変申し訳無い事をした、事が収まったら彼等の王国と『ベヒモス』を解凍しに行く事と、この借りは必ず返すと伝えて欲しい。」

 と話終え長椅子に戻った。」

 そしてアラン様が、

 「以上が経緯説明だ、皆今まで判らなかった戦争原因やアラム聖国の介入等の新しい情報が有り咀嚼するに時間が少なかったと思う、休憩を挟み少数のメンバーで再度会議を行うので一旦解散。」

 と解散を宣言された。

 自分とハリーはあくまでも機材要員なので、ここでの用事は済んだのだが戦争の裏事情、そして見え隠れするアラム聖国の陰謀に、もしかするとスターヴェーク王国の崩壊にもアラム聖国が関与していたのではと考えざるを得なかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。