人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月10日(人類銀河帝国 コリント朝3年)
連合軍は昨日までに補給と修繕を終えて、早朝からトンネルの有る方向とは90度異なる方向に進発した。
つまり、アラム聖国にとってもセリース大陸全体としても最南端に当たる地を、そのまま南下する。
それは当然海洋に出ると云う事だが、帝国製の陸上艦船はそもそも浮いているので、波の影響をまるで受けずにアッサリと港を経由する事無く外洋を進んで行く。
連合軍が進発するに当たり、アラム聖国の留守部隊として進駐している、ビクトール大将率いる北方方面軍50万人の内、10万人が例のトンネル出口を封鎖して、何時でも崩落させて『レギオン』が再度侵攻される事を防げる様に処置して置いた。
暫くの間、何事も無く外洋を進みアフリカーナ大陸の東岸部を臨みながら、ゆっくりと連合軍は進んで行く。
『レギオン』の死体を回収し、身体の構造上海水に潜る事も泳ぐ事も出来ないのが判っているので、『レギオン』は襲って来ないだろうが、他の生体兵器に類する物は出てくるかも知れないので、ドローンが徹底的に進路上の海面及び海面下を探査している。
自分の乗艦である巨大空母『グラーフ・ツェッペリン』には、同僚であり武術仲間であるシュバルツ殿とミツルギ殿そしてカトウが同乗していて、全員が自分の幕僚達が上げてくる様々な提案を、自分とともにオブザーバーとして推敲してくれる仲間でも有る。
「・・・此のまるで死の大地の様な大陸を見ていると、正直とても同じ惑星の大陸とは思えない風景だな。
だからこそ、此れ迄このアフリカーナ大陸には人が住めなかったのかな?」
とシュバルツ殿はドローンから上がってきた情報を、動画と紙での資料で見ながらゲッソリとした顔で確認している。
「・・・全くひたすら気が滅入る光景だ!
こんな砂漠だらけの大地は、まさか遥か大昔からなのかな?」
とミツルギ殿が感想を述べると、
「いえ、どうもこの砂漠化は恐らく、100年程まえからゆっくりと進行していたらしいのですが、此処5年位前から一気に進んだらしく、それを裏付ける証拠が此れです!」
とカトウがモニターに映る画面を幾つかに分割して、様々な動物の骨の画面を指し示す。
その分割された画面に映る動物の骨は、化石と化している物やまだミイラ化の段階の物、が散見された。
カトウが続けて、
「つまり、遥か大昔から死の大地であれば、此の様に状態の年代が異なる動物の骨が有る訳が無く、明らかにアラム聖国が侵攻して干渉した証拠に、同心円状に砂漠が広がっているのが上空からのドローンによる観測で判ります!」
その言葉通り、アフリカーナ大陸の全体図をモニターで見ると、確かに同心円状に砂漠が広がっているのが判った。
アラム聖国は遥かな過去から、ある意味アフリカーナ大陸を食い物にする事で、強国になっていた様だ。
何とも胸糞悪くなる話しである。
とても、同じ『ルミナス神』を信奉する国家とは思えない思考で、違和感が有る。
真実は、カルマ殿自身が自嘲気味に話してくれた様に、アラム聖国の代々の指導部と組織は『東方教会圏』と名乗っていたのだが、実際は『ルミナス神』を信奉する体に国民を騙して、例のサイヤン帝国とやらの遺物であるアーティファクト、そして信じられない程に高度の科学技術で以って、何れは西方教会圏を侵略すると云う野望を培って来たのだ。
このアフリカーナ大陸の現実を眺めていると、代々のアラム聖国の指導部よりも先鋭化した存在である『アグニ』がこのまま、サイヤン帝国の遺物であるアーティファクトと、『レギオン』等の生体兵器を支配下に置いている状況を許して置く事はすべきで無いと判る。
5月15日(人類銀河帝国 コリント朝3年)
連合軍はアフリカーナ大陸の中部の東岸に拠点を確保して、此処に補給ルート用の兵站基地を作り上げる。
ここから内陸部の砂漠を通過して、アフリカーナ大陸の地下に存在する大空洞に向かう。
恐らくは、凄まじい数の『レギオン』が『アグニ』の尖兵として敵対して来るだろうから、相当な反撃が想定出来る。
其れに対して、『レギオン』の死体を解剖する事で、幾つもの対抗手段を用意する事が出来ている。
しかし、『レギオン』だけが『アグニ』の兵力では無いだろうから、新たな生体兵器等のサイヤン帝国由来である兵器が、連合軍に敵対して来る事が想像出来る。
その都度、臨機応変に対処する事が連合軍に求められていて、帝国軍上層部と崑崙皇国軍の綿密な作戦案が練られている。
そうやって、出来る限りの用心を重ねて連合軍は、アフリカーナ大陸に上陸して初の夜を迎える。
《いよいよ、『暗黒大陸』と称されるアフリカーナ大陸の夜か!》
些か用心のし過ぎかも知れないが、ドローンの警戒網を何時にも増して頻繁にした上に、ドラゴン軍団は空戦装備の上で待機状態にして置いた。
そしてその状態を確認しにアラン様が、グラーフ・ツェッペリンに来られた
そのまま自分もアラン様と共に、警戒しながら夜を迎える事になり、夕食をアラン様と共にしながら話し込んだ
「・・・ケニー、虫の知らせなのか、今夜襲撃が有ると私の勘が囁くんだよ!
君もそうじゃないか?」
とアラン様が、非常に珍しくナーバスになっているのに内心驚きながら、
「・・・確かにドラゴン軍団を何時でも出撃出来る様に待機させた理由は、この嫌な胸騒ぎが有る所為です。
ですが、我々はきっと充分に対抗出来ると云う予感もまた有るのです!
アラン様も同じ予感が有るのでは無いですか?」
と進言すると、アラン様も鷹揚に頷かれた。
そしてアラン様と自分は警戒を解かずに、恐らくやって来る襲撃に備えた。