人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月27日②(人類銀河帝国 コリント朝3年)
恐らく見た瞬間から、洗脳を仕掛けてきて居たのだろう。
当初は違和感を感じなかったその姿。
改めてなだらかな山脈の上に立つ人を眺めると、とても普通の人間には見えなかった。
何故ならその頭頂部はとても普通の人間とは異質過ぎた。
何と額の部分に不思議な色に輝くクリスタルが埋め込まれているのだ。
ファッションとして見ても奇抜に過ぎると感じたが、同じくモニター画面を見ていたカルマ殿が驚愕の表情を浮かべて、
「・・・『アグニ』、貴様まさか、禁断の遺物で有る『聖なる頭脳』の中枢、『ゾア・クリスタル』との禁断の融合を果たしたのか!」
激怒と評して良い顔をカルマ殿は示して、モニター越しに『アグニ』に食って掛かる。
そのカルマ殿を見て、『アグニ』は軽蔑の眼差しを向けてカルマ殿に鼻を鳴らす。
「フン!・・・カルマか・・・お前、惨めにもあの時他の有象無象と一緒に死ななかった様だな。
どうやら、アラム聖国本土にまだ居るらしいが、何らかの方法で覗いている様だ。
お前の言う通り、此れこそ『ゾア・クリスタル』!
偉大なる『サイヤン帝国』の全てを記録している『聖なる頭脳』、そしてその中枢回路を統括する『ゾア・クリスタル』は、この世における秘宝中の秘宝だ!
その秘宝と融合した我こそは、『ルミナス神』を越えた最高神としてこの世を永劫に支配してやろう。
精々我を崇め奉り、忠誠の限りを尽くせ!」
と、痴人の夢としか言えない妄言を繰り返す。
改めて、狂人としか形容出来ない男だが嘲笑え訳が無い!
今まで戦ってきた獣化兵(ゾアノイド)・レギオン・鳥の様な怪物、そして強すぎた巨大レギオンと云う生体兵器は、あまりにも此の『惑星アレス』の技術としては異質過ぎる上に、存在すべきでは無いと感じる。
じっと、『アグニ』とカルマ殿の罵り合いを聞いていたが、当然歩み寄る事は無く完全決裂すると、いきなり『アグニ』が消えた。
恐らく最初から立体プロジェクターか何かだったのだろう。
するとまたも例の振動が起こり始めたので、大事を取る為に連合艦隊はドリルバイクを中核とした小型掘削マシーンを回収すると、一気に全速力で後退する。
だが、振動の規模は今までと桁が違い、まるで天地がひっくり返ったかの如く際限が無い。
連合艦隊は、ブーストを使い一気に地上100メートルの空を飛び、10キロメートル後退した。
先程まで居た地点は地下に崩落し、地下から迫り上がる物体が有った。
今までにも、様々な巨大な敵が居たが、今回は趣が違う上に巨大さの桁が違う。
先ず勢いが違い、ゆっくりと迫り上がって来る物体はとても静かで、あくまでも巨大過ぎるから振動が半端で無かった事が判った。
未だその巨大な物体の全貌が全然見えないが、殆ど山脈にしか見えない巨大な物体は迫り上がり続ける。
そんな山脈にしか見えない巨大な物体は、奇妙な事に金属的な部分や生物的な部分が有り、何とも統一性に欠ける。
連合艦隊はしっかりと防御陣形を講じた上で、超高性能ドローンによる探査の報告を受けた。
その内容を確認すると、何と山脈にしか見えない巨大な物体は、途轍も無く巨大で50キロメートルに及ぶ巨体で、然も内包するエネルギー量は今までの敵を遥かに凌駕している。
数値の資料だけで圧倒されてしまうが、なるべく平静を装いながら細かい情報を精査していると、どうやら全体の端の部分に噴射口と思われる物が3つ有った。
もしかするとこの巨大な物体は、この噴射口から何らかの推進剤を放出して飛び回れるのだろうか?
そんな疑問を抱いていると、突然巨大な物体の側面から触手が幾つも生えて来た。
ただ、山脈にしか見えない巨大な物体から出現した触手は、本隊のあまりの巨大さにまるで髭の様だ。
何の役割が有るのか疑問で注視していると、その触手の先端からビームの束が飛び出し、連合艦隊とドローン群に照射された。
幸いこのビームはバリアーで防ぐ事が出来たので大過無かったが、此方側も攻撃に軸足を移せず巨大な物体が徐々に迫り上がるのを見ている事しか出来ない。
やがて完全に迫り上がり、空中に躍り出た巨大な物体は何とも歪な形では有ったが、船体の体を成している。
すると、巨大な物体の前方にまたしても立体プロジェクターの様な方法で『アグニ』が再度現れると、額の中に埋め込まれた『ゾア・クリスタル』を輝かせて宣言する。
「此の雄大な船体を持つ巨艦こそは『方舟』、我とともにこの惑星アレスを支配し、何れは天の星々の世界へと飛び出し、失われた『サイヤン帝国』の権威を遍く星々に刻み込んでくれる!」