人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月27日⑥(人類銀河帝国 コリント朝3年)
未完成の怪物『柳星張(りゅうせいちょう)』は、4本の触手である『テンタクランサー』を振りかざして『超音波メス』を発射しようとしたが、『柳星張(りゅうせいちょう)』は突如上空を振り仰ぐと『テンタクランサー』からの『超音波メス』を遥か高空に照射した。
暫くしてから、かなり離れた距離の高空が突然赤く染まると、灼熱した『プラズマ火球』が『柳星張(りゅうせいちょう)』目掛けて飛んで来る。
「ドゴオオオオオオーーン!」
と轟音を上げて『プラズマ火球』が爆発したが、『柳星張(りゅうせいちょう)』のかなり手前で炸裂した。
『柳星張(りゅうせいちょう)』の『テンタクランサー』が5キロメートル程伸びて、『プラズマ火球』をその鋭い先端部で弾いたのだ。
『プラズマ火球』という事は、つまりそういう事だ。
『玄武』が間に合ったので有る。
カルマ殿が、
「間に合って良かった!
漸く調整槽を出れて、改良した『北極佑聖真君(増加装甲)モード』を装備して前線に急行させたのだが、ギリギリと云ったタイミングだったな!
連合軍の方々には、心配させてしまい申し訳無い!」
と謝って来て。
その一部始終を見た『アグニ』は、
「やはり、それが『玄武』なのだな!
おのれ、お前達こそ『サイヤン帝国』の遺産を自分勝手な都合で利用する偽善者ではないか!
『サイヤン帝国』に於いて門外不出の遺産を、利用するとはな!」
と罵って来たが、正に『柳星張(りゅうせいちょう)』を己の独善で利用しておいて、どの口がほざくのかと呆れてしまった。
その間にも確実に『玄武』は接近して来ていて、盛んに『柳星張(りゅうせいちょう)』は『テンタクランサー』先端から『超音波メス』を照射し続ける。
しかし、対ギャオス用に改良した『玄武』の『北極佑聖真君(増加装甲)モード』は、遠距離での『柳星張(りゅうせいちょう)』の『超音波メス』を見事に防ぎきり、着実に『柳星張(りゅうせいちょう)』とそれが乗る『方舟』に近づいて行く。
『アグニ』の注意が完全に『玄武』に向いた所為か、連合艦隊に一切の攻撃が来なくなり、被害の大きかった艦船から乗務員を他の艦艇で収容し、急いで安全と思われる距離を取った上で、土魔法による強固な遮蔽物を作り上げて連合艦隊はそれを盾にした。
そして漸く『玄武』が戦場に肉眼で視認出来る程近づくと、カルマ殿の指示が飛び、先程までの前足を翼状にして滑空するのを止めて、四肢からジェット噴射させると回転し始める。
この状態は、相当な防御力を備えているようで、ギャオスに比べかなり強力な『柳星張(りゅうせいちょう)』の『超音波メス』も防御する事に成功している。
だが、その防御体勢では、当然『プラズマ火球』を発射する為の攻撃体勢には移れない。
暫くの膠着状態が続いたが、アラン様からの指示が各連合艦隊の艦船に飛んだ。
「・・・どうやら、超高性能ドローンによる詳細な探査により、『方舟』に使用されている幾つかの箇所に、『古きものども』の関与が確定したので、神鎧『ジークフリート』の使用権限が承認された!
此れより俺の最高武装で有る、神鎧『ジークフリート』の全力戦闘に入る。
全ての連合軍軍人は、其れ其れの指揮官の指示通りに戦場から距離を取って、防御に専念せよ!」
との命令を受けて、連合艦隊は現状より強固なバリアーを重ね掛けすると、完全防御体勢となりアラン様と『玄武』に全てを託す。
やがて、連合軍総旗艦『ビスマルク』の甲板の上に歩を進めたアラン様が、ふわりと舳先に立たれた。
そしてアラン様が唱えた。
「対外敵プログラム"武神アラミス"起動!
モード『異空間からの侵略者』!
『神人』の要請に従い顕現せよ!
神鎧『ジークフリート』!!!」
と叫ばれると、アラン様の眼前に神々しい光を放つ鎧が現れた!
そしてモニター上に文字が綴られていく。
《其は、神々の大いなる遺産、如何なる者も傷付ける事能わず、不滅なる特異点、神々が祝福と共に鋳造せし神の鎧、汝の名は『ジークフリート』!》
たちまち神鎧『ジークフリート』は、各パーツに分かれ、アラン様の身体の部分に次々と装着して行く。
アラン様に完全装着した神鎧『ジークフリート』は、まるで歓喜するかの如く、七色の光を煌めき放ち辺りを照らす。
そしてアラン様は、神鎧『ジークフリート』を纏ったまま防御壁を越えて、やって来た『玄武』と合流して『方舟』正面に静静と浮かび上がった。
その一連の一幕の間、何故か『方舟』と『柳星張(りゅうせいちょう)』の攻撃は、不自然に止んでいて静かでさえあった。
その神鎧『ジークフリート』のあまりの神々しさに驚愕したのか、『アグニ』が信じられないと云った体で、
「な、何だその鎧は?!
此の様な鎧の存在を我は知らぬ!
どうしてこんな鎧が存在するのだ!」
と絶叫しながら狼狽え始める。
まあ、特に帝国としては秘密にしていなかったが、『アグニ』の様な自己顕示欲と傲慢な思考の持ち主ならば、他人の事を見下す事は有っても、慎重に相手の事を分析する事は無いだろうから、恐らく帝国の情報を精査する事などしてはいまい。
今、そのツケが払われようとしているのだった。