人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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6月の日記①(人類銀河帝国 コリント朝3年)《真実の最終戦争①(ハルマゲドン)》

 6月1日①(人類銀河帝国 コリント朝3年)

 

 帝都コリントに帰還した我等は、直ちに全ての連合軍艦船を港湾施設に収容させようとしたが、如何せんほぼ全ての艦船が被害を負っているので、取り敢えずは『魔の大樹海』周辺の空き地にも停泊させ、修理の順番待ちをさせる事にして、重傷の軍人達を帝国国立病院に搬送させたり、連合軍の上層部はアスガルド城に報告する為に、専用の車両に分乗して出向く事になった。

 

 何とも気が重くて、誰かが肩代わりして報告して貰いたいと、上層部の軍人誰もが思う中、気が進まないのに専用車両は何の妨げもなく、アスガルド城に着いてしまった。

 

 そして帝国軍上層部でも一部の軍人が、アスガルド城の地下に有る、特別会議室に通された。

 其処は、本当の意味で重要な者しか存在を知らされない場所で、自分の妻で有るミーシャも将官で有るのに知らされていない。

 

 其処には、クレリア様と賢聖モーガン殿そして妹の婚約者マリオンが居て、ダルシム大将と呼び戻されたヴァルター大将そしてセリーナ・シャロン中将、其れに加えて自分が同室した。

 

 特別会議室の入り口付近は、エルナ親衛隊団長とその部下達が地下に続く廊下で警備している。

 そして防諜対策が完璧だと判断された賢聖モーガン殿が話し始めた。

 

 「皆さん、無事のご帰還ご苦労様でした。

 改めて後日式典が行われるから、其の際には色々と演技してもらう必要があるので、今の内に真実の情報を共有して貰いたいのでこの場を設けたの。

 此れから見てもらうのは、『神の戦場』でのアラン様と敵の首魁であるクトゥルフとの戦いの全てよ!」

 

 と全ての連合軍人が見たいであろう戦闘の記録を、我等だけに見せると云う説明だった。

 

 そして特別会議室に備え付けられている、AR空間を立体プロジェクターに再現する装置が起動した。

 

 我々と別れ、『神の戦場』と呼称される白い空間にアラン様と『玄武』が侵入した処から、その動画は始まった。

 

 アラン様と『玄武』が侵入した段階で直ぐに空間は閉じた様で、例の半透明の壁の様な檻以外にはひたすら白く広大な地面と、薄暗いが光源が判らない空間が果てが見えない程空を覆っていた。

 

 半透明の壁の様な檻が、アラン様と『玄武』から1キロメートル程の距離離れた場所に、無造作に放置されている。

 

 やがて、半透明の壁の様な檻の周囲に紫電の火花が散り始める。

 

 暫く紫電の火花が散っていたが、突然轟音を上げて半透明の壁の様な檻が破壊され、虚無の穴からズルリといった様子で巨大でまるで蛸の脚の様な触手が、幾つも虚無の穴の縁に掛かり真ん中から不気味な六眼の頭部が飛び出て来た。

 

 《・・・ンッ、何だかサイズに違和感が有るな・・。》

 

 そう当初は蛸の脚の様な触手は、クトゥルフの手か脚だと考えていたのだが、どうやら頭のサイズと繋がりから触手は、クトゥルフの顎髭である事が判った。

 更に頭部の全体が出て来たのだが、どう見ても虚無の穴はクトゥルフの続く身体が出てくるには小さすぎた。

 その事が判っているらしいクトゥルフは、その頭部に有る六眼から何やら奇妙な波動が発せられて、虚無の穴が10倍以上に広がった。

 

 そしてゆっくりとクトゥルフの全身が姿を現す。

 

 クトゥルフは頭足類(タコやイカ)に似た六眼の頭部、顎髭のように触腕を無数に生やし、巨大な鉤爪のある手足、水かきを備えた二足歩行の姿、ぬらぬらした鱗かゴム状の瘤に覆われた数百メートルもある山のように大きな緑色の身体、背にはドラゴンのようなコウモリに似た細い翼を持った姿をしている。

 

 今までの『古きものども』の『ダゴン』達に比べれば、かなり小さいサイズでしか無かったが、感じる存在感は圧倒的で、少しも侮る事が出来ない!

 

 全身を現したクトゥルフは、大きく伸びをする様に巨大な鉤爪のある手を伸ばすと、人の神経を逆撫でするオーボエのようなくぐもった声を張り上げた。

 

 此の人間に取って原初の恐怖を促す姿と、狂いそうになる声、に思わず助けを求める様に、特別会議室にいる人々を見渡す。

 

 一番気になっていたクレリア様は、セリーナ・シャロン中将に両脇を支えられて恐怖に耐えているのが見え、賢聖モーガン殿とマリオンも手を繋いでいるし、ダルシム大将とヴァルター大将は気丈にも両脚を踏みしめて耐えている。

 

 此の場にいる全員が、クトゥルフに対し恐怖を感じているのが如実に判ったが、実際に対峙しているアラン様は、微塵も恐怖を感じていなさそうだし、寧ろ全身から凄まじい闘気を発し続けている。

 

 流石はアラン様だ!

 

 アラン様は、どの様な敵であろうと怯えた事も無ければ、弱気になった事もない。

 そして、我等帝国軍全てを必ず背後に庇いながら、敵に相対している。

 

 過去、アラン様程のお方が存在したのだろうか?

 歴史上ありとあらゆる王侯貴族、指導者、英雄、勇者、色々な呼称に彩られた偉人は居たのだろうが、此処まで偉大な人物が居たとは思えないし、我々が崇める神々でさえアラン様を超える存在はいないに違い無い。

 そう、アラン様は『玄武』の頭上に仁王立ちしてクトゥルフと対峙し、クトゥルフもまたアラン様と『玄武』を侮る態度を見せずに対峙している。

 

 いよいよ、真の最終戦争が始まろうとしていた!

 

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