人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
12月6日(前半)
昨日漸く昏睡状態から脱しベッドから起き上がれる様になったアマド陛下に、アラン様とクレリア姫様そして元宰相ヴェルナー・ライスター卿、『黒』の隊長のエルヴィンが面会され、何事かを相談された様だ。
我々は、現在の敵軍の状況と其れに対抗する味方の兵力の配置図を確認し、どの様な対抗策で望むか?想定される敵の行動をどうやって迎え撃つか?兵站線をどの様に構築し其れをどの様に維持するか?等の作戦案を策定し何時如何なる時に出動が掛かっても対応出来る体勢を整え始めた。
昼過ぎに大会議室で、車椅子に座られたアマド陛下臨席の元で作戦会議が開かれた。
アマド陛下に現状の説明として、敵の勢力の状況と味方の勢力の状況、そして周辺各国の動静がアラン様の口から語られた。
アマド陛下は顔を強張らせながらも、
「アラン辺境伯、今後どの様に行動すべきか?余に示して欲しい。」
と仰せられ、其れにアラン様は、
「其れでは、進言させて頂きます。
先ずは、一刻も早く王都を取り戻しましょう!
まだ王城は陥落しておりませんし、王都を奪還し陛下が無事で有る事をベルタ王国全土に発表すれば、様子見を決め込んでいる貴族諸侯の敵への寝返りを鈍らせる事が出来ます。
恐らくは、敵の主力であろう前宰相ヴィリス・バールケの領地に集まっているアロイス王国の軍とベルタ王国国境守備軍そしてヴィリス・バールケとその親族である貴族の私兵合わせて約7万の軍勢は、大軍ではありますが、逆に大軍であるが故の弱点として小回りが効きませんし、兵站線を維持するのも大変な事になります。
よって・・・」
と話の途中で、「ピピピッ!」とアラン様の背後から音が聞こえてきて、皆アラン様の背後のモニターに注目する、モニターの画面にシャロン隊長が出てきて、
「会議中失礼致します、緊急事態につき通信させて頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
と言われたのでアラン様が、
「陛下宜しいでしょうか?」
と許可を願い、陛下も「うむっ」と許可をだされた。
シャロン隊長は、
「ありがとうございます、つきましては私では無く当事者であるフランシス伯爵から報告する事になります。」
と言われ画面にフランシス伯爵が映り、
「陛下ご無事なお姿を拝謁し、臣は安堵致しました。」
と画面内で片膝を着いた。
それに対して陛下は、
「フランシス伯爵にも心配を掛けた、余は此の通りコリント辺境伯のお陰で無事だ。
ただ毒を使われた所為で暫くは無理を出来ないので、車椅子を使う事になるが喋る事には不自由は無い。
其れよりも緊急事態の用件の方が気になる、報告内容を聞かせてくれ。」
と尋ねられ、フランシス伯爵は、
「承知致しました、其れでは報告させて頂きます。
前宰相ヴィリス・バールケの領地にて、大変不穏な状況になっており、此処に居るシャロン隊長と『黒』の隊員が情報収集に励んでいた処、伝令がベルタ王国の中立派貴族とヴィリス一派の貴族に出され、その内の一人の伝令を捕らえ身体検査した処、檄文とヴィリスからガンツ伯宛の密書を発見致しました。
ただ、内容が些か過激且つ虚偽を多分に含んでますので、此の場で公表するのは如何かと思います。」
と檄文については陛下が別室で報告を受けて貰いたさそうに言ったが、陛下は、
「どうせ檄文ならば何れ全土に向けて公表するだろうから、今公開された処で構わないし、密書も一緒に公開すれば良い。」
と答えられた。
了承された、フランシス伯爵が咳払いの後檄文を読み上げた、
「告、
我宰相ヴィリス・バールケ侯爵は、ベルタ王国国王アマド一世を弾劾する。
この者は、日頃から奢侈贅沢にうつつを抜かし、政治を顧みず我に無理難題を押し付けて来た。
更に自らの欲を満たす為に、税率をこの3年間で5割から7割に上げるという暴挙を行って来た。
そしてこの者は、何と他国にまで狙いを定めセシリオ王国にまで攻め入ったのだ。
我はこの愚行を収めるべく心ある同士と共にこの者を諌めたが、逆に蟄居・閉門させられ心ある同士に至っては逮捕されたり、降格させられる憂目にあった。
そして我等をこの様な目にさせるべくアマド一世を唆した、アランと其れに与する貴族の一部は我が世の春を謳歌していると聞く。
此処に至って我ヴィリス・バールケ侯爵は、現状を変えるべく武力で正義を行う事を決意し心ある同士達と共に決起するものである。
そしてこの決起にはセシリオ王国とアロイス王国からも賛同を得られ、アロイス王国に至っては援軍4万を派遣して頂いている。
心ある貴族の方々は、正義が我が方にあるのはお判りの筈だ、直ちに我が軍と合流してベルタ王国の為に正義を行おうではないか!
連名
アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニ一世
セシリオ王国国王セリオ・ルージ一世
我等は宰相ヴィリス・バールケ侯爵に賛同し、協力する事を此処に誓う。」
と聞いててあまりの呆れた内容に周りの者と苦笑いを交わしていたが、ふと気になってアマド陛下の様子を伺ったら顔を紅潮させ、かなり憤慨されている事が見て取れた。
続けて密書の内容が読み上げられた、
「ガンツ伯よ、お主はカリファ伯と共に王宮を陥落させたら、囚われているアンテーヌ伯爵ロドン将軍を助け出しロドン将軍を総大将として軍を再編成せよ、そしてその軍でもって我等に靡かない愚かな貴族達の領地に攻め入り従属させよ、その際お主が許可を求めていた略奪をしても構わないが、略奪した物品の内宝物の高価な物は我に上納せよ誤魔化すのは許さん、そうすれば貴族位を上げてやるし領地の加増も考えてやる、必ず成し遂げろよ。」
と檄文の内容との差に笑えて来るが、アマド陛下が苦悩されている様子を見て笑いを引っ込めた。
アラン様が陛下を気遣い直ちに病院へ送り届けようとすると、陛下が、
「いや気遣い無用だ、其れよりも先の進言通り一刻も早く王都を奪還して貰いたい、アラン護国卿頼めるだろうか?」
と問われたので、アラン様は、
「安んじてお任せあれ、此れより空軍を率い夜間の闇に紛れて王都に向かいます。
王都奪還の後の方策は、此処に居るダルシム副官に概略は伝えて有るのでどうぞご質問下さい、ダルシム頼んだぞ。」
と言われたので、ダルシム副官は、
「ハッ、了解致しました!」
と敬礼して答えられた。
その姿を陛下は眩しい物を見るかの様な目つきで、とても羨ましそうに見ている様に自分には見えた。