人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
12月7日
夜の内に適当な広場にグローリア殿とガイとサバンナに降りてきて貰い、拘束し眠らせたエクスキューショナー部隊をグローリア殿に乗せコリント領に連れ帰って貰い、我々9人はガイとサバンナに往復してもらう事で、遠巻きに王城を取り囲んだ敵の上を飛び越し王城へ入った。
既に明け方近くだった事もあり、我々は小休止の後当直の者の案内でシャワーを浴び、籠城されている方々と会議する事になった。
ブリテン侯爵とヘルマン卿そしてゲルトナー大司教が、早朝にも関わらず意気軒昂な様子で会議に参加された。
アラン様と其々が握手し合って互いの無事を喜びあい、双方の現状を報告し合った。
現在王城は、ガンツ伯とカリファ伯が遠巻きに囲んで時々城門に攻撃を掛けて来るのだが、破城槌やその他の攻城兵器を使うでも無くただ効きもしない魔法や弓矢で攻撃するだけだ、どうやら一度本格的に攻撃した際に手酷く反撃され懲りた様だ、此方も城を討って出るには兵力が足りず膠着状態に陥っている。
コリント領では、アマド陛下を無事保護し現在療養に入って頂いているが命に別状は無く、会話も長時間で無ければ問題無い事、そして軍の一部をブリテン侯爵領に向かわせ領兵と合流の後王都に進軍させ、其れとは別の一軍は王都に向けて進軍中である事をアラン様は教えた。
そして最大の懸念である、前宰相ヴィリス・バールケの領地に集まっているアロイス王国の軍とベルタ王国国境守備軍そしてヴィリス・バールケとその親族である貴族の私兵合わせて約7万の軍勢は、近隣の貴族の領地へ進軍し吸収したり、降伏させたり、略奪したりして版図をベルタ王国の東側三分の一まで広げている状況も籠城組に説明した。
朝食を全員で済ませ方策を練る段でアラン様が、
「先ずは、遠巻きに王城を取り囲んだ敵の様子を見て作戦を決めましょう。」
と言われ、自分とミーシャを連れ城門に向かう。
城門の上にある望楼に登ると、一人の武者と出会った。
その武者は明らかに接近して来た我々を遠くから感知していたらしく、望楼からずっと我々特にアラン様を観察していた。
望楼に着き其処に居た兵士が挨拶して来る中、武者はアラン様の前に立ち頭を下げ、
「お初にお目に掛かる、此の方は『シュバルツ』と申す武辺者であります。
武者修行をしておりまして、剣豪と云われる方々との試合を求めて諸国を遍歴していた処、ベルタ王国にてドラゴンスレイヤーが現れたとの噂を聞きやって参りました、是非アラン様と試合をと望みアラン様と懇意であると聞かされたゲルトナー大司教へ表敬訪問をしに伺った処、『神罰執行部隊』とやらに連行されかけていたので、そやつらからゲルトナー大司教と他の方々を奪還し、王都が大混乱する中王城に匿って現在賊軍と対峙している方々の助太刀をしている者です。」
と挨拶をして来た。
アラン様も、
「其れは大変忝ない、ゲルトナー大司教の救出と王城の守備への力添え、幾重にも御礼させて欲しい。」
と返答された。
シュバルツ殿は、改めて惚れ惚れとアラン様をご覧になり、
「素晴らしい!これ程練り上げられた身体、そして圧倒的な気の充実を表に出さず身体の隅々まで行き渡らせる技術、是非この動乱が終息した暁には試合をして貰いたい!」
と手を合わせて願い出られた。
アラン様は苦笑され、
「そうだな、この内乱が終息したらその試合受けて立とう。」
と快諾されたので、シュバルツ殿は「有り難い。」と感謝された。
そして両者は連れ立って望楼から敵を観察し始め、自分はハリーから預かった撮影魔道具を使い敵軍を満遍なく撮影した。
アラン様は充分観察した後シュバルツ殿を伴い、会議室に戻られ自分に動画をモニターに映す様に指示された。
会議室にブリテン侯爵とヘルマン卿そして武官の方々が席に着かれた。
アラン様が、
「其れでは作戦会議を始める、先程敵軍の状況(モニターに画面を映し出し)を確認し人数、装備、編成、士気、攻城兵器等を把握して来た、自分には作戦の腹案が出来上がったので各現場指揮官には其々の現場状態と兵士の数そして備蓄食糧の量を細かく報告して貰いたい。」
と指示され、武官達が現在の状況と備蓄食糧の量を細かく報告し、皆に現況が知れ渡った処でアラン様は、
「其れでは、作戦を説明する。
敵軍はガンツ伯とカリファ伯が指揮官で両名の私軍4千が主力だ、其れに王都に居た悪党5百と近隣の野盗や傭兵凡そ2千5百合わせて約7千となるが、この映像から判る様に戦う為の布陣が出来て居らずただ雑然と各々で固まっているだけでつまりは雑軍でしか無い、其れに対して我々は王都守備軍千と防衛軍千の合計2千である、数の上では負けているが装備、士気の面では比べ物にならない程勝っている、食糧備蓄もブリテン侯爵が王都に赴任してから、励まれたお陰で半年分は確保されている、ただ我々王城に籠城している分には問題無いが、王都で苦難に合っている王都民の事を考慮すると一刻も早く敵軍を王都から追い払う必要がある、よってコリント領から持ってきた新兵器を王都守備軍が運用し空からはワイバーン隊で敵を混乱させ、その間隙をつき私がガンツ伯とカリファ伯を取り押さえ、そのタイミングに防衛軍が王城から出撃し敵を王都から退却させる、この作戦概略に沿って作戦を詰めて行きたい。」
と作戦の骨子を述べられ皆が納得している処、シュバルツ殿が手を挙げられた。
どうぞ、とアラン様に促されると、
「作戦の大まかな流れと要諦は理に叶っていると感心致しましたが一点だけ納得しかねる、何故か皆様ご指摘しない様だが、アラン殿お一人が敵軍に入り込み敵の指揮官達を取り押さえると云う話が当たり前の様に納得されているのか?」
と呆れた様に問われた。
するとシュバルツ殿以外の皆様は苦笑され、代表してブリテン侯爵が、
「その通りだ、貴殿の言われる通り普通はそう考えるのが妥当だ、だが我々はアラン護国卿のこれ迄の戦いとその凄まじさをこの目で或いは(モニターを指差し)映像で目の当たりにしている。
まあ、信じられないのも無理のない話なので、今度の戦いの際に存分に見聞されよ。」
と言われたので、シュバルツ殿は周りを見渡し皆納得している事を確認し、身体を震わせアラン様に、
「では、是非、某も同行させて頂きたい!ドラゴンスレイヤーたる貴殿の力を間近で見れるこの機会を逸したくない、お願いだアラン殿、某も連れて行ってくれ!」
と頼まれた。アラン様は、
「其れは、願っても無い申し入れどうぞ同行され、剣王としてのお力を存分にお示し下さい。」
と返事され、シュバルツ殿も、
「忝ない!」
と満面の笑みで応じられた。