人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
12月11日
籠城戦も終わり、王都を元に戻すべく全員で忙しく戦後処理をしていく中、セリーナ隊長から通信が入りアラン様達上層部が会議を開いた。
セリーナ隊長は、ブリテン侯爵領で軍事訓練とインフラ整備の陣頭指揮を取って居られたが、内乱が発生したためブリテン侯爵領兵と連れてきた近衛兵達で、周辺の貴族領を含む街や村を鎮撫して廻っていたのだが、時折狂人の様な兵士や騎士に会い、ブリテン侯爵領の牢屋に入れていたのだが、食事も受け付けず衰弱しているという、以前我々がアマド陛下を救出した際に似た様な騎士がいた事を思い出しながら話を聞いていると、どうもその者達はアラム聖国から来た宗教使節団の人員と何らかの形で接触していたらしい。
アラム聖国から来た宗教使節団は、ゲルトナー大司教から聞いた話によると王都に来訪し陛下への謁見を望んだ者とエクスキューショナー部隊以外の大半は、各地の教会に向かった様だ、もしこの者達がアラム聖国の意を汲んだ工作員であったとすると、ベルタ王国各地で王都の様な混乱が起こる可能性がある。
アラン様はセリーナ隊長に王都に進軍する際、ルート上の地域の鎮撫とアラム聖国の工作員の逮捕を命じた。
そしてブリテン侯爵とヘルマン卿と相談し、王都守備軍から以前我々と共同で行った『王都掃討作戦』に参加していた者達を中心に、『第二次王都掃討作戦部隊』を編成しアラム聖国の工作員と先日の戦いでの落ち武者狩りをさせる事となり、『黒』の精鋭もこれに参加する。
会議が終わり自分とアラン様二人になり、雑談をしながら魔道具の機材を仕舞おうとしていると、「ピピピッ」とアラン様の通信機が鳴り『黒』の隊長エルヴィンが通信して来た、モニターと繋いで貰いたいとの事で自分が操作するとコリント領の牢屋に居るエルヴィンが映る。
エルヴィンが、
「アラン様お忙しい中申し訳有りません、ですがどうしても話をさせて欲しいと言われ、話をさせてくれれば困っているであろう狂った人々の原因と対処法を教えても良いと、アラン様達が捕まえられたエクスキューショナー部隊の隊長から懇願され通信致しました。」
と報告して来た。
アラン様は、「良いぞ、繋いでくれ。」と言われ獄中のエクスキューショナー部隊の隊長が画面に出た、
エクスキューショナー部隊の隊長は、アラン様を見ているが不思議な事に自分を倒した人間で有るにも関わらず、敵を見る様子では無くむしろ尊敬の眼差しでアラン様を見ている。
エクスキューショナー部隊の隊長は口を開き、
「私は、エクスキューショナー部隊の隊長を務めている『カトウ』と云う者です。実はアラン殿に確認したい事があり、エルヴィン殿に嘆願した次第です。」
と言われたので、アラン様は、
「確認したい事とは?」
と聞かれ『カトウ』は、
「失礼ですが、アラン殿のご出身は?」
と聞かれたのでアラン様は、
「何かそれが重要な事なのか?」
と問い返された。
すると『カトウ』は居住まいを正し座り直し(正座という体勢だそうだ)、
「これから話す内容は私の戯言で有り、アラン殿は答えて頂かなくても結構、ただ聞いて頂きたい。」
と言われ、アラン様が頷かれると話始めた、
「我々の一族は、5年程前にある目的の為に遠く東の果ての島国から船で旅立ち、我等の故郷から西に当たるこの地に来ました。
その目的を叶えるには一族の力だけでは難しく国の様な組織の力が必要で有り、更には生きていく為には生業も持たねばならなかった、そこで我々は島国で培った暗殺の業と技術を持ってアラム聖国と取引し仕事を請け負っていました。」
と自分達の出身を明かされた。
アラン様は「フム」と頷かれ先を促された、『カトウ』は続けて、
「我々の故郷である島国は、或る強大な魔物に支配され屈従を1000年に渡って強いられて来ました。
何度も倒そうと抗いましたがどうしても倒せずにいましたが、5年前我々の崇める神に仕える最高位の巫女が神から神託を受けとられました。」
とアラン様を見つめながら続けた、
「此れより3年半後、西の国にて星々の欠片が多く地に落ち、その星々と共に『神人』が天より降る。
『神人』は神の化身(アヴァターラ)にして、強大な力を持ちその傘下には神の使徒が数多存在する。
『神人』は数年の後、降り立った西の国にて君臨し、その力でもって周辺の国々を平らげ豊かに治める。
そして東の大国を平定した後、この島国を訪れ我等の苦難を取り除くべく、かの魔物を退治される。」
自分は驚愕しながら横からアラン様を窺うと、何時もは明快に受け答えされるアラン様が、ただじっと『カトウ』を見つめている。
『カトウ』は、
「今は答えを求めません、ただ我等はこれより神託を信じ貴方様に仕える事で、出来るだけ早く故郷の民を救うべく、貴方様の覇業へのお手伝いをさせて頂きたいのです。」
と頭を地に着けて(土下座というそうだ)懇願して来た。
アラン様は、暫く目を瞑り沈思黙考されていたが、意を決したのか、
「其の件は一旦置いておいて取り敢えずは、狂った人々の原因と対処法を教えて貰いたい、その結果如何でお前達の採用を考えよう。」
と言われ、『カトウ』が隣に居るエルヴィン隊長に紙と筆記用具を求め、渡された紙に薬の調合のレシピを記入する姿を自分は見ながら、『カトウ』が話した神託を思い返さずにはいられなかった。
だが、様子を察したアラン様が自分に、
「ケニー隊長とエルヴィン隊長、この場で話された内容は他の者には秘密にしてくれないか?」
と頼まれたので、
「了解です、我等は決して今の会話の内容は他に漏らしません!」
とほぼ同時に答え、アラン様も頷かれた。
今日からこの日記は鍵を付けて、家族も見れない様にする事にした。