人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
12月31日(前編)
反乱軍はこの日珍しく街では無く、平原で野営する事になった。
その様子を後部座席にハリーを乗せた偵察仕様のガイで高空から観察する。
しかしこの高空まで音が聞こえる程騒いでいる様子は、とても軍隊とは思えず野盗の群れにしか見えない。
ただそんな集団の中にあって、静かな部隊が離れて存在している、魔道具で望遠して見ると思った通りアロイス王国軍であった、複雑な気分で眺め目を転じると更に離れた場所には『白』の報告にあった、大量の馬車と大きな石像50体が静かに佇んでいる。
此れがアラム聖国のゴーレム部隊かと上空からの偵察を続け交代要員と代わり進軍中のベルタ王国正規軍に合流した、既にベルタ王国正規軍は反乱軍の北20キロメートルで駐屯し野営の準備と若干早いが夕食の準備に掛かっている。
反乱軍はもある程度斥候を出している様だが、最大限10キロメートル半径でしか出しておらず此方に気付いてる様子は無い、余程大軍であるという自信からかすっかり気が緩んでいる様だ。
アラン様が、部隊長以下に探知魔法と空軍の偵察により警戒網は万全であり、早朝の戦いに備え装備等の確認をしたら早目に就寝して置く様に通達を出された。
作戦指揮車内では、備え付けのモニターと小型立体プロジェクターで偵察した動画の分析を行い、策定して置いた作戦案の幾つかを修正されたが、殆どは変わらず遂行する事が決定した。
自分も夜中の偵察当番に備え、17時には早目の夕食と就寝に入る。
22時偵察当番になり、上空からの偵察をハリーと共に行い始めたタイミングに、予定通り反乱軍の野営地のヴィリスの私兵がいる場所に向けてヒタヒタとゴブリンキング率いるゴブリン部隊(1万匹)が迫る、先の戦いで半数に減らされているが先鋒としては充分な数だろう、至近の森に隠蔽(コンシール)の魔道具で潜んでいて夜闇に紛れて接近していたのだ。
「ガー!」
というゴブリンキングの雄叫びを合図に、ゴブリンジェネラルやゴブリンロードが率いる各種ゴブリンが反乱軍のヴィリスの私兵、傭兵、野盗の屯している場所目掛けて夜襲を敢行した。
突然の夜襲に備えを怠っていた反乱軍は、大混乱に陥り魔法を唱える事も出来ず、剣で応戦しようとする者もいたが、ゴブリン達に篝火を倒され暗闇の中では次々とゴブリン達に倒されていった。
そうこうする内にオークキング率いるオーク各種(約5千匹)、コボルトキング率いるコボルト各種(約2千匹)が戦場に到着し、後詰めとしてグランド・タートルに乗ったケットシー128世とヒルダ嬢とフェンリルそして護衛役のオーガ5匹がゆっくりと地響きを点てて戦場に向かっている。
彼等魔物軍は、ファーン侯爵領での戦いの際にアラム聖国の工作員であったギランが、『魔獣使いの杖』を正規の手順を踏まずに無理矢理大量の魔石を注ぎ込む事で、魔物の自我を奪いただ命令通りに本能の儘敵を攻撃する傀儡になっていたのだ。
アラン様はこのままではただ衰弱して死んでいく魔物達に、せめて自分達を利用し尽くしたアラム聖国の扇動に乗った反乱軍と工作員に一矢報いさせるのが魔物達の復仇になるのでは?と、ケットシー128世とフェンリルに提案され、両者も此れに同意してケットシー128世が『魔獣使いの杖』を使い魔物達に反乱軍へ攻撃させているのだ。
夜襲の効果でかなり当初は押し気味に反乱軍を攻撃していた魔物軍も、時間が経つにつれて数の劣勢がバレ更には魔法を仕える魔物の少なさから、徐々に魔法の攻撃により数を減らして行くが自我が無い為に退却しようとせず最後の一匹になる迄戦い続けていた。
最後のオーガが大型ストーンゴーレムに頭を砕かれ、グランド・タートルに反乱軍の一部が向かおうとした処でベルタ王国正規軍が戦場へと現れた。
丁度朝日が上り始めたその太陽を背に、正規軍全軍が戦闘態勢で行軍して来る。
既にこの段階で反乱軍は凡そ3万の死者重軽傷者を出しており、更に夜の間ずっと戦っていた為、やっと魔物達を叩き潰したと思ったタイミングに新たな敵が現れた事になり士気はドン底に迄下がっている。
正規軍が残り500メートルに近づいた段階で反乱軍の中で特に雑軍と呼べる、ヴィリスの私兵、傭兵、野盗の集団は及び腰になり、至近に迫った段階では目の前に見た事も無い装甲車が重装騎兵と共に吶喊して来た。
弾け飛んだ!正にそう表現するしか無い形で反乱軍は装甲車と重装騎兵の吶喊で正面にいた者達は、吹っ飛ばされて行き、真っ二つに反乱軍は引き裂かれた!
そして引き裂いた正規軍は、軍団毎に陣形を変え分断した反乱軍其々に対応する。
第一集団に当たるアロイス王国軍とアラム聖国の工作員と覚しき集団には、一軍(2千)が方陣になり防御魔法の掛かったラウンドシールドを敵に向け、更に土魔法のアースウオールを軍団の両脇に重ね掛けして土壁を高さ3メートル横200メートルずつ構築する事で容易に越えられない様にした。そして一軍の後ろに二軍のバズーカ部隊が第一集団に向けて間断なくバズーカから魔法を放つ。
それに対して反乱軍の第一集団は、積極的に攻撃せずマジックシールドを軍団毎展開するアーティファクトによってバズーカから放たれた魔法を防御して一種の膠着状態に陥らせた。
もう一方の第二集団は、二軍からバズーカ部隊を抜いた装甲車を先頭に軽装騎兵と軽装歩兵で以って長蛇の陣を展開する。
先頭の装甲車部隊が敵を切り裂き、続いて軽装騎兵が追い打ちの弓矢と魔法による攻撃を掛け、最後に軽装歩兵が剣で撃ち漏らした敵を戦闘不能にして行く。
この長蛇の陣の攻撃を二軍が繰り返している間に遊撃隊(5百)が、敵本陣のヴィリスとその親族の貴族達目指して突き進む。
その先頭には赤い新型戦闘バイクに乗るセリーナ隊長の姿が、朝日を浴びて燦然と輝いている。
新型戦闘バイクは、初の3輪タイプで安定感に優れていてセリーナ隊長は両手持ちの柄の付いた長刀(薙刀と云うそうだ)を振り回し、更には頭上で回転させ敵からの矢や魔法を弾き飛ばしている。
反乱軍の第二集団は、数こそ4万と多勢であったが所詮寄せ集めの雑軍でしか無く、既に士気は無く軍としての秩序も後数分で崩壊すると云った時に、第一集団後方にいたゴーレム部隊が動き出し、馬車群からは飛び立つ物があった。
其れは当初石像であったが、朝日を浴びて明らかに肉質を持った伝説の悪魔と化した。
此れこそ『白』の報告にあった『ガーゴイル』アラム聖国の秘匿していた兵器にして、我々空軍とグローリア殿への対抗手段である。
其れ等50体が空を飛び一軍に襲いかかろうとした瞬間、上空から『エアーウオール』が一軍の真上に展開され『ファイアーサイクロン』が『ガーゴイル』達目掛け放たれた!
そう、この時まで我々空軍とグローリア殿は、上空で待機していたのである。
ただ『ガーゴイル』達も警戒していたのか直ぐに散開し、倒した数は5体であった、此れは倒すのに時間が掛かりそうだと覚悟を決めた時に、全軍に作戦指揮車にいるアラン様から、
「新軍団魔法『サンダーサイクロン』を持って覆滅する、全軍マジックシールドを全力展開!!」
と命令が下る。
少し離れた場所で、補給隊(2千)を守っていた本隊(5百)の作戦指揮車の上に、アラン様とクレリア姫様が上がり二人掛かりで『ガーゴイル』達に向かって『トルネード』の上位魔法『タイフーン』を展開させた。
すると『ガーゴイル』達は天地を繋ぐ渦巻に絡め取られる様に拘束され、渦の中心で動けなくなる。
その渦巻は移動を始め土壁を壊そうとしていたゴーレム達の真上で止まり、その儘ゴーレム達に覆い被さりゴーレム達も渦の中心に集めた。
そしてグローリア殿に空軍全員(ワイバーン含む)の魔力を集中させ、グローリア殿が集まった全ての魔力で放つは、現時点最強の魔法である天の裁き『インドラの矢』!
新軍団魔法『サンダーサイクロン』・・・・軍団魔法『サンダーストーム』が1体の強力な敵を倒す事に特化しているのに対して、『サンダーサイクロン』は複数の敵をアラン様とクレリア姫様が二人掛かりで魔力を融合させた巨大な『タイフーン』で絡め取り、グローリア殿に不足の魔力を空軍全員で補填し天の裁き『インドラの矢』を最大魔力で放つ。
その瞬間凄まじい轟音と共に、朝日が上り明るくなり始めた戦場を真っ白に染め上げた。
視界が晴れ、『ガーゴイル』達とゴーレム達を確認すると、ただ地面に石塊が残骸として転がっていた。
他はどうなったのかと確認すると、正規軍はマジックシールドを全力展開していた為問題なかったが、反乱軍はその大半が爆風と『インドラの矢』の余波の雷撃で行動不能に陥っていた。
アラン様は、
「補給隊が持ってきた大量の拘束具で、反乱軍を拘束せよ!
拘束した後に怪我を補給隊は治療する様に。」
と命令を発した。
其の命令に従い全軍が行動を始めた瞬間、
倒れ伏しているアロイス王国の中から、3人の修道士姿の人物が現れ大声で叫んできた。
後編に続きます。