人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月2日
新年が早朝からの戦争に始まった今年は、戦争漬けの年になるのでは?と嫌な予感を覚えたが、そもそも我等は国を興し大陸に覇を唱える事を目的としているのだから、今更かと含み笑いをしてしまい隣を歩くミーシャに何かあったの?と訝しがられた。
粗方の後始末を終え、魔物の魔石回収と遺体の焼却処分も後少しで終わる、やはり車両とトレーラーによるピストン輸送は早い、戦争捕虜の輸送も昨日から夜通し続けられたので今日で終わるだろう。
そう思いながら作戦指揮車に向かうと、シュバルツ殿がセリーナ隊長の薙刀を手に取り素晴らしい業物だと、感心していた。
セリーナ隊長が自分を見つけ、
「この薙刀は、ケニー隊長の父親が鍛えてくれたんですよ。」
と紹介して来たので、
「ケニー隊長の御父上は、刀工なのですか?」
と尋ねられたので、
「いえ、親父はありとあらゆる鍛冶仕事に手を出す、技術の摘み食いをする傍迷惑な技術バカですよ。」
と答えると、シュバルツ殿は、
「謙遜なさるな、御父上は溢れんばかりの才能の発露として、色々な技術に挑戦なされて居られるのだろう、是非お会いして某の長年の夢だった、刀の魔法剣も鍛えて頂ける事をお願いしよう。」
と嬉しそうに言われたが、あの親父が興味を持って引き受けてくれれば良いが、と願わずには居られなかった。
1月7日
空軍は今コリント領に全員戻っている、何故なら相棒たるワイバーン達が卵を産む為に、巣のある専用の厩舎に入って籠もってしまったからだ、詳しくは知らなかったがグローリア殿がワイバーン達から聞き出した処、本来卵を産む時期では無いらしいが、暖かなドームの環境と騎竜として連戦した事でタイミングがズレたそうで、其々の番同士で卵を温め合うらしい。
ガイの番のパートナーはミーシャの騎竜サバンナで、共に一つの巣で交互に卵を温め合う様だ。
こうなってしまうと空軍全員は、日に一度ワイバーン達にエサを大量に運ぶ以外の事はする事が無く、溜まっていた報告書等の事務作業をこなしていく。
1月15日
ファーン侯爵の長男レオン殿が、ファーン侯爵領の留守番をカイン殿に委託してコリント領にやって来られ、其れに同行されてセシリオ王国亡命政権のビクトール侯爵含む首脳陣がコリント領に来訪された。
一同は、迎賓館にてアマド陛下へ表敬訪問された。
その後、宰相に返り咲かれたヴェルナー・ライスター卿も交え、今後自分達がベルタ王国内で生活して行くにあたり、ベルタ王国国民並の権利を認めて頂きたい旨をビクトール侯爵がアマド陛下に申し出られ、幾つかの条件を付けられたが了承された。
レオン殿は、以前王都で年齢が一緒(現在28才)で仲の良かったアベル・ライスター殿と再会されて共に無事を確かめ合い、早速アベル殿がレオン殿にコリント領の案内を買って出て、双方楽しそうに諸々の先進性にとんだ施設を見学され喜ばれていた。
1月20日
アラン様がグローリア殿で、コリント領で療養中のアマド陛下とヴェルナー・ライスター卿を迎えに来られた。
王都にて、コリント領に居るアマド陛下、ヴェルナー・ライスター卿とモニター越しに審議した反乱軍への裁きにより、明日行われる反乱の主犯たる前宰相ヴィリス・バールケ、そして王都で反乱を主導したガンツ伯とカリファ伯の刑の執行を見届ける為である。
自分も無聊を囲っているのに飽きていたので、志願し護衛としてグローリア殿に同乗させて貰う。
以前グローリア殿に乗せてコリント領に来られた際は、毒の症状から意識が無かった為今回が初めて見る空からの景色でアマド陛下は楽しまれた様だが、ヴェルナー・ライスター卿は思いつめられたご様子で、じっと俯いた儘でその理由を察し、自分以外の同乗者も敢えて声を掛けず王都に向かう。
王都に到着し、アラン様とアマド陛下達は直ぐに王宮に向かわれ、自分は放送局の職員達が詰めている会議室に向かいハリー達の作業を手伝う。
一通りの作業を終え現在の王都の様子を職員達に聞くと、例のピストン輸送で王都に連れてきた戦争捕虜の内、罪状の軽い一般兵士だった者等(約4万5千人)を王都守備軍が監督し、荒廃してしまった王都のインフラや城壁、道路そして家屋等を整備、改修、建て直し等の作業員として使い、練兵場のグラウンドにテントを張り寝泊まりさせて、見張りは防衛軍が行っているそうだ。
1月21日
早朝、シュバルツ殿と一緒に練兵場のトレーニング室でを訓練を行った。
シュバルツ殿は、あのアラン様とミツルギの一騎討ちでのアラン様の格闘技術に感銘を受けて、是非帝国軍格闘術を教わりたいとアラン様に懇願され、丁度手の空いている自分に白羽の矢が立ち訓練する事になった。
一連の訓練項目を共にこなすと、シュバルツ殿は初めて行うストレッチにいたく感心し、明日からもお願いすると頼まれたので代わりに、神剣流の剣術を見せて頂く事で了承された。
午後13時、王宮の裏手に有る死刑執行場で、アマド陛下臨席の元今回の反乱者達の罪状が読み上げられた。
その間、前宰相ヴィリスは、ろくに罪状読み上げをしている係官を見ずに、ひたすらアラン様を憎々しげに睨んでいる。
他のガンツ伯とカリファ伯は、顔色が真っ青な儘身体を震わせ続けている。
やがて罪状読み上げが終わり刑の執行となるが、本来なら公開処刑を王都大広場で行われる処、後日モニターを通し放送する事にして大掛かりにはしない事にしている。
刑の執行内容は、ヴェルナー・ライスター卿が強く要望された、前宰相ヴィリスが暗殺用に使用していた黒蠍の毒を使う事になった。
アマド陛下が最後の温情として、盃に入った毒を自分で飲む自裁を許したが、3名共自分で飲もうとしない。
アマド陛下は溜息をつかれ、
「貴族としての矜持も無いのか・・・」
と呆れられ、死刑執行人に命じ無理矢理飲ませる事になった。
ガンツ伯とカリファ伯は、何やら言葉にならない絶叫を上げていたが、死刑執行人に無理矢理口を開けさせられ、毒を飲まさせられて口から泡を吹きながら絶命した。
ヴィリスの番になり死刑執行人が近づくと、突然ヴィリスはアラン様に向かって大声を上げた、
「お前だ!
お前さえ居なければ、全ては私の思い通りになり今頃は玉座に座れていたものを、お前の度重なる妨害の所為でこの様な羽目になってしまった!
呪われよアラン!未来永劫呪われるがいい!!」
と鬼気迫る形相で言い放った。
だが、その放言を聞いてアクションを起こしたのはアラン様では無くヴェルナー・ライスター卿であった。
ヴェルナー・ライスター卿は立ち上がると、徐ろに拳にナックルガードを装着しヴィリスの腹を抉る様に殴った。
「ウゲエエエー!」
と云う豚の呻き声の様な声と共にヴィリスは吐瀉し、周りに吐瀉物の据えた匂いが立ちこめる。
ヴェルナー・ライスター卿は、ヴィリスの顎を掴み上げ後頭部を掴み己の吐いた吐瀉物目掛け、ヴィリスを顔面から叩きつけた。
「お前のくだらん野望の所為で、どれだけの人命が損なわれた事か!
お前の意地汚い欲の所為で、どれだけの人が塗炭の苦しみを強いられた事か!
そしてお前の分不相応な出世欲の所為で、よくも私の愛する息子以外の家族を殺してくれたな!!
お前にはやはり自裁などさせない!
この儂自ら毒を飲ませてやる!!」
と血の涙を流しながら、ヴィリスを足で仰向かせて顔面を足裏で踏みつけ、死刑執行人達に両手両足を押さえさせ、ヴィリスの顎を足裏で上から踏みつけたまま無理矢理口を開かせると、盃では無く瓶ごとヴィリスの口に突っ込み嚥下させた。
「ゴボッ!」
とヴィリスは咳き込んだが、吐き出させない様にヴェルナー・ライスター卿は瓶を上から踏みつける。
暫くヴィリスは藻掻いていたが、やがて体を突っ張らせる様にしなった後動きを止め、他の二人と同じ様に泡を吹き絶命した。
ヴェルナー・ライスター卿はその様子を凝視し続けたが、やがて膝を着き嗚咽し始めた。
こうして、ベルタ王国を乗っ取ろうとした奸物『ヴィリス・バールケ』は、自らが使用し暗殺をしていた毒で惨めな最期を遂げた。