人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月21日
昨日の反乱軍首謀者達の死刑の様子を(人が死ぬシーンを省いた)ダイジェスト版で王都始めモニターの設置された場所全てで報道され、ベルタ王国全土に向けて内乱が完全に終わった事を、アマド陛下が宣言されたとニュース番組で繰り返し報道された。
殆どの者が内乱が終わった事自体は知っていたが細かい内容は知らず、ニュース番組で前宰相ヴィリス・バールケやガンツ伯、カリファ伯の悪事を知り、改めて貴族の平民に対しての横暴が明らかになり相対的に反乱軍を打ち負かしたアラン様達に人気が集まった。
そして大多数の国民が、反乱軍がバラ撒いた檄文に連名していたアロイス王国とセシリオ王国が、この内乱の陰にいた事を把握しておりこの2国に対しての反発心も育っていた。
1月23日
ミツルギ殿が、戦争捕虜になっていたアロイス王国軍と国境守備軍の洗脳を解く日が来た。
あの一騎討ちの翌日、ミツルギ殿はアラン様に臣従を申し出られアラン様も条件付きで認められた。
その条件の一つに、アーティファクト『テンプテーション』の効果の切れる3週間後に、全員の洗脳を解き元に戻すというものが有ったのだ。
ミツルギ殿は、全員に洗脳する場合の『聖水』とは逆の効果を持つ『解放の水』を飲ませ、練兵場のグラウンドに全員を仰向けに寝る様に命じ、拡声する魔道具を使いキーワード(鍵になる言葉だそうだ)を唱えた。
暫くして、全員がゆっくりと起き上がり自分がどこに居るのかも判らず、呆然自失している。
事前に準備していた、大掛かりの聞き取り用の机と椅子に防衛軍と本隊の総勢で、アロイス王国軍と国境守備軍全員の聞き取りを行う。
やはりミツルギ殿の報告にあった通り、アロイス王国軍は軍と名乗っていたが、実はアロイス王国の北部と東部に暮らしていた農民や職人そして商売人で、つまり生粋の旧スターヴェーク王国国民を無理矢理洗脳して戦わせていたのだ。
そして国境守備軍も、アラム聖国の工作員が事前に井戸や水道に『聖水』を混入させ、アーティファクト『テンプテーション』を使用して洗脳して戦わせていたのだ。
此れは『白』がアラム聖国側に居た時に使用していた技術と異なり、大規模且つ長期間洗脳状態に出来る恐るべきアーティファクトで有る。
アラン様は、アマド陛下や他の重臣方と協議しこのアーティファクトは、王宮の特別魔道具保管室に厳重に保管される事になった。
1月25日
元に戻った国境守備軍(1万5千)を、元のベルタ王国とアロイス王国の国境線に戻す為に、トレーラーによるピストン輸送が始まった。
コリント領の工場で大規模に生産ラインを拡充し生産され、補給軍に配備されているトレーラーは200台に登り、他は商業ギルドに貸し出している100台とサイラス商会のアリスタさんが統括されている物流部門が買われた30台、他にタルス商会のカトルがアラン様と軍事と物流で双方使う形で契約している70台が有り、それ以外にも諸々の商会や商人が予約待ちで購入している様だ、あの時親父が興奮していた様にこの国は今物流の転換点に来ているのかも知れない。
それに伴い、車両の運転技術を学ぶべくコリント領に短期滞在をする者が激増している様だ。
何といってもこの技術を持っているだけで、雇い主が高額の給与を約束してくれるし、軍でも高給で雇ってくれる、お陰でコリント領には運転技術講習所用のドームが新設された。
1月28日
此の日、アロイス王国軍として洗脳されて使われて居た旧スターヴェーク王国国民(約3万人)にクレリア姫様を公開する事になった。
実はアマド陛下やベルタ王国の重臣方には、コリント領での秘密会談でクレリア姫様の素性と我等旧スターヴェーク王国兵士そして国民が、コリント領で生活を営んでいる事は明かされていた。
アマド陛下やベルタ王国の重臣方と話を照らし合わせて行くと、アマド陛下はアロイス王国との交渉内容や秘密協約等は全然関知しておらず、全ては前宰相ヴィリスの独断で行われていた事がこの件でも明らかになり、ハインツ隊長やブルーノ副隊長達は、やはり前宰相ヴィリスがアロイス王国との交渉材料の一つとして捕らえていたのが確認されている。
そしてアマド陛下は、自分のハトコにあたるクレリア姫様とそのクレリア姫様と婚約されているアラン様を自身の親族と認め、更にはベルタ王国に於ける準王族であると重臣方と教義の上で決定している。
練兵場のグランドに集められ、其々長いテーブルと椅子に座った旧スターヴェーク王国国民に対して、壇上に登られたクレリア姫様は、
「諸君、座ったまま聞いて欲しい。
実は今から話す内容は、貴方方へのスターヴァイン王家からの懺悔だ。
私は、スターヴェーク王国第一王女『クレリア・スターヴァイン』その人であり、現在唯一のスターヴァイン王家の継承者だ。
スターヴァイン王家はロートリゲン・アゴスティーニ侯爵の野望を見抜けず、スターヴェーク王国を乗っ取られアロイス王国の僭称を許してしまった。
貴方方は、自身の所為では無くスターヴァイン王家の不甲斐なさから、現在の状況に追い込まれているのです、スターヴァイン王家の継承者として、スターヴェーク王国国民を守れなかった罪を詫びる(クレリア姫様はここで頭を下げられた)。」
慌てて旧スターヴェーク王国国民達は、椅子から立ち上がりクレリア姫様に、
「「「クレリア姫様とスターヴァイン王家の所為ではございません、全てはアロイス王国を僭称する奴等の汚い騙し討と其れに乗っかった貴族共の裏切りの所為です!」」」
と言いクレリア姫様に頭を上げさせた。
クレリア姫様は、
「ありがとう諸君、私とスターヴァイン王家を許してくれて、
取り敢えず我々は、諸君を元の故郷に帰れない代わりに、此処に居るアラン総帥のコリント領で預かる事となった。
既に其処には、諸君等と同じ旧スターヴェーク王国国民達4万人以上が生活している。
諸君等に必要な生活基盤は充分用意していて、様々な仕事や農地も有る、安心して向かって欲しい。」
と言われた。
そしてクレリア姫様に変わりアラン様が壇上に登られ、
「私がアラン総帥だ、私の領地に行くにあたり色々と不安に思う事も多いと思う。
その不安要素の一つである食の問題を払拭する為に、用意した私の故郷の食事だ是非味わって食べて欲しい。」
と言われた瞬間大量の食事を積んだトレーラーがグランドに横付けされ、次々とテーブルに食事を補給軍が載せて行く。
その料理から立ち昇る美味しそうな匂いに、皆喉を鳴らしている。
アラン様が、
「さあ、マナー等気にせず存分に食べてくれ、もう無粋な説明は無しだ。
私が監修した料理の数々を味わって貰いたい。」
と言われ合図にグラスを掲げ、
「乾杯!」
と音頭を取られた、慣れている我等も「乾杯!」と唱和し、真似て皆も「乾杯!」と言い食事をし始める。
料理の美味しさに歓声が上がり、皆徐々に盛り上がり始めた。
その様子を一緒に食べながら見ていて、此の者達も我々と同じ様にコリント領の凄さに驚く一連の儀式が繰り返される風景を思い描き、クスリと笑い隣のハリーと顔を見合わせハリーも同じ様に笑い、終いには二人して大笑いしてしまった。