人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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閑話⑯「ガトル親父の雑記」③(親父、工場長になるの巻)

 8月1日

 

 工房の清掃も昨日で終わり、今日から工場で働く事になってたんだが、最初に予定されてた工場では無くて工業ブロックの奥の方の、出来たばかりの工場に連れて来られちまった。

 8ちゃんに聞いてみたら、

 「オヤカタハ、2カマエノオヒロメデスバラシイセイカヲアゲタノデ、シンコウジョウノコウジョウチョウニニンメイサレマシタ。」

 とかぬかしやがった。

 工場長?長って付く役職は、まさかこの工場の責任者は俺なのか?!

 8ちゃんに再度聞いてみたら、

 「ソウデス。」

 とぬけぬけと答えやがった。

 呆れちまったが、考えてみたら今迄の工房を大きくしただけで、やる事は決まってるんだし広い空間を使えるのは有り難え、アラン様とクレリア姫様のご期待に添える様に頑張るだけだぜ。

 新工場に入って行くと、8ちゃんとは別のボットが居て、箱から全員に何やら玉っころを渡された。

 「何でえ、この玉っころは?」

 とボットに聞いたら、

 「コレハ、『ナノムダマ』トイッテ、ミナサマガタニ『セイレイノカゴ』ヲアタエルモノデス。」

 と教えてくれたから、俺は驚いちまった。

 これが、息子と娘が教えてくれた『ナノム玉』か!

 何でも怪我はすぐに治るし、魔法まで使える様になるそうじゃねーか、凄えプレゼントもあったもんだ。

 俺は早速『ナノム玉』を口に放り込んだんだが、あっという間に口の中で溶けちまった。

 ドップ達は躊躇してたんだが、俺がアッサリと飲んじまって特に問題無さそうなのを見て、全員問題無く飲み込んだ。

 するとボットが新たな工員20名を連れて来て、この連中も『ナノム玉』を既に飲んでいます、と説明してそれぞれ紹介してくれた。

 これでこの工場は、元の工房仲間の23(俺とドップと8ちゃんそれに元孤児院出身者の20名)人と新たに加わった20人、合計43人で稼働させる事になった訳で、然も俺が責任者か!

 1年半前まで、俺はしがない個人工房の鍛冶屋に過ぎなかったてえのに、今じゃ工場長かよ、人の運命なんて判らねえもんだなとつくづく思い、今日はそれぞれの働く場所、役職、道具類、部屋の配置、トイレ他を確認し、明日からの仕事をする前のお祝いを内輪で祝う為、最近出来た居酒屋に繰り出して親睦を深めさせた。

 

 8月3日

 

 漸く、工場を稼働させ例の試作品の車を改良した、先行量産型を10台作り始めた。

 この10台はそれぞれ、オプションパーツを前部や後部に付ける事で、用途をそれぞれ特化させていて、俺が荷物運搬や物を上下に上げ下げする車両、ドップが農業用の耕運、田起こし、刈り入れ、田植え、稲刈り等を作る事になった。

 先日飲んだ『ナノム玉』のお陰で『精霊の加護』が受けられて、昨日から身体の調子は良いし、俺の汚かった書く文字も信じられねえ位見やすくなった、『精霊の加護』って奴は本当に偉大だぜ。

 

 8月6日

 

 工場員全員で、備え付けられたモニターから放送される動画を見せられた。

 正直な処、こんな娘が好きそうな可愛らしい精霊達が、魔法の『ヒール』を使うと光と共に現れて傷や打ち身を治してくれるのかと疑っちまうが、モノは試しだ早速やってみようと言い出しっぺの俺が、ハンマーで左腕を殴り(結構痛かったが、何故かすぐ痛くなくなり)打ち身を作って、ドップが『ヒール』をイメージして手を翳すと、本当に光ってきて青あざがキレイに無くなりやがった!

 凄え凄えぜ、昨日まで魔法の魔の字も使えなかったドップが、魔法の中でも高位の『ヒール』をアッサリ覚えちまった。

 全員で『ヒール』を使えるかどうか試してみたら、全員傷、打ち身を治せる事が確認出来た。

 こいつは便利だ、なんたって俺等の仕事はハンマーや旋盤等の危ねえ物だらけだから、怪我なんてしょっちゅうだ、それを其の場で治す事が出来りゃ大助かりだぜ。

 ついでのように覚えた『ウオーター』も有り難え、水は鍛冶仕事に必須だし、暑い現場で冷たい水は大助かりだ。

 

 8月20日

 

 先行量産型のドップが手掛けた農業用の、耕運、田起こしオプションが出来上がり早速農業ブロックで試運転する事になり、まだ手つかずの農地で試してみた。

 おお、『ダイナモ』で回る器具部分が中々力強く回り、土を掘り起こして行くな。

 運転していたハロルドが、

 「これは、面白い位地面を掘り起こせますね、見事ですドップ副工場長。」

 と褒めたんだが、ドップの奴何と泣いていやがる。

 「どうしたんでえ!」

 と尋ねたら、

 「コイツがルドヴィークの時に有れば、両親が死ぬ事なんて無かったのに。」

 と嗚咽しながら答えてくれた。

 俺もシンミリしちまったが、ドップの肩を叩き、

 「そうだな、けどお前の作ったコイツはこれからそういった不幸を、無くしてくれるんだ、きっとお前のの両親も天国で息子の活躍を喜んで見てる筈さ。」

 と言ってやったら、

 「ありがとうガトル工場長、自分もそう思う事にするよ。」

 と涙を拭って答えた。

 すると、遠巻きに見ていた農民の一人が、尋ねて来た、

 「貴方方が、この魔道具を作られたんですか?」

 俺は、

 「このドップ副工場長が、作り上げたんだよ。」

 と答えてやったら、

 「どうすれば、この魔道具を使えるんですかね?」

 と更に聞いてきたので、ハタと気がついた。

 そうだよ、作る事に夢中で、使う人達の運転技術の事すっかり忘れてたぜ。

 これは、今後問題になるなと判ったので、アラン様とクレリア姫様に上申したい処だが、戦争にお二人とも行かれてるから、留守を預かってるロベルト老に相談する事にした。

 質問して来た奴にも、上の人に聞いておくよ、と答えた。

 

 8月21日

 

 昨日の農民からの質問を胸に、生活ブロックの執務ビルでロベルト老と面会して、運転技術の普及を考えなければならない事情を話したら、ロベルト老は、

 「安心せいガトルよ、アラン様から運転技術講習所を9月に開校する為に、ドーム外で車両の運転練習を出来るようにしており、教習用の人員も教育している最中じゃ。」

 と答えてくれたので、『トラクター』(名前はこうなった)の練習項目も追加してくれる様に頼み了承された。

 工場に帰りながら、大規模移民団も昨日到着した事だしトラクターの需要は、右肩上がりだろうなあと想像して、ドップ副工場長が喜んでいる姿が脳裏に浮かび、思わずにやけちまった。

 

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