人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月5日(前編)
この日、雲が低く空を覆い、朝なのにどんよりとした天気になった。
ビクトール侯爵領の主要幹線道路3方向から、城邑目掛け大きな音も立てず、ただ黙々と押し寄せる合計60万のゾンビ軍団。
対するは、
北門に陣取る、セシリオ王国亡命政権軍と義勇軍、そして氷雪魔術師団を合わせた『セシリオ王国救国軍』、合計5万人。
西門に陣取る、ファーン侯爵とカイン殿率いるベルタ王国国軍と第二軍団、合計2万人。
東門に陣取る、近衛軍団と第一軍団と親衛隊、更に機動軍団、合計9千人。
南門は、敵がやって来ていないので、警戒の人員が居て、空軍団と戦闘指揮車、合計百人。
各城壁の4角には魔導砲2門ずつ、そして全部の城壁には、ビクトール侯爵領兵がバズーカ砲を3人ずつで運用し、各門百ずつ計4百砲。
全て合わせて、合計8万強。
この陣容で迎え撃つ。
敵は策も無いのか、ただそのまま進んで来ているが、それを許す我々では無い。
予め用意していた罠を幾つも作動させる。
土魔法で其々の門の前500メートル程に大穴を掘り、その上に氷魔法で蓋をして置いた、穴の中には氷魔法の氷柱を上に向けて設置している。
ある程度のゾンビ兵が、穴の上に乗った段階で氷魔法の蓋を解除。
一気に数百のゾンビ兵が穴に落ち、次々と後続のゾンビ兵も穴に落ちて行く。
そして次の段階の罠を発動させる。
長大な『アイス・ウオール』を敵の半分の辺りに展開させた。
それは高さ5メートルに及び厚さは1メートル、そして円を描く様に半径2キロメートルに及び、南門前だけは開けている。
これでしばらくの間、敵は分断された。
そして城壁4角の魔導砲8門から、『ファイアー・グレネード』が連射される。
その魔法は、丁度大穴に固まっていたゾンビ兵の上に降り注ぐ。
「ドドドオオーン!!!」と云う轟音と共に、地響きが城邑を揺らす。
音は中々鳴り止まず、しばらく続いたがやがて終わり、偵察の為自分がガイで上空に上がり確認すると、ゾンビ兵達が死体の山に隠れて、攻撃をやり過ごしている。
これで予想された、幾つかの可能性が確定した。
つまりゾンビ兵は、本能だけで行動している訳では無く、少なくとも指揮官或いは、特定の行動パターンが予め命令されているという事だ。
すると半分に分けられた、後ろ半分から飛び立つものがあった。
それは、ゾンビや骨で出来た鳥のモンスター。
これの存在は想定されていたが、些か数が多く2万羽はいる。
これは、空軍全軍で迎え撃つ必要があると判断し、大人ワイバーン部隊は15頭全頭で迎撃に向かい、子供ワイバーン達は一塊になり城の上に陣取り、火力を集中させて射程は短いながら巨大な火炎放射器として活用し、敵の空軍の抑止力になる。
これ以上の空軍は敵に無いと見たアラン様は、空からの妨害を警戒して出撃させ無かった、各門の攻撃軍を出動させる。
北門は、氷雪魔術師団とフェンリルが共同して放つ『ブリザード』が、ゾンビ兵を凍らせて行く中、凍ったゾンビ兵を砕き、二度と蘇らない様にしながら、横陣を維持して敵ゾンビ軍団を『アイス・ウオール』まで追い詰めて行く。
西門は、敢えて敵ゾンビ軍団に接敵せず、炎属性の魔法を第二軍団が間断なく浴びせ、その援護をファーン侯爵率いるベルタ王国国軍が行い、更にカイン殿のドリルバイクを先頭に重装騎兵が、軍団魔法『オーディン』を発動させ、縦横無尽にゾンビ兵を薙ぎ倒し、敵ゾンビ軍団が第二軍団に近づけない様に牽制する。
東門は、この地上戦で1番華々しく戦ったと言える。
機動軍は2つに別れ、其々の先頭には先の内乱でお目見えした、新戦闘バイクに乗ったセリーナ団長とシャロン副団長。
そして其々の持つ得物は、セリーナ団長がオリハルコン製の大薙刀、シャロン副団長が伸縮自在のオリハルコン製のトンファー。
新戦闘バイクは3輪の安定性に優れ、操縦者がその上で得物をぶん回しても問題無い。
機動軍は、軍団魔法『イフリート』を展開し、凄まじいスピードでゾンビ軍団に突っ込む。
ゾンビ軍団はその炎に焼かれながらも、機動軍に纏わり付こうとするが、、セリーナ団長とシャロン副団長がそれを許す筈もなく、セリーナ団長は大薙刀に炎を纏わせゾンビ兵を焼き斬り、シャロン副団長はトンファーを光輝かせながら回転させ、伸縮自在にゾンビ兵を砕いて行った。
後ろに続く機動軍は、戦闘バイクに取り付けられた、バズーカで進行方向横のゾンビ兵に向けて発射して行く。
第一軍団は、機動軍が切り開いた道筋を辿り、その切り開いた道筋を更に広げる様に各種魔法と、魔法剣でゾンビ兵を攻撃して行く。
近衛軍団は、敢えて突っ込まず、ゾンビ兵が他の門に近づく気配を見せたら迎撃する為に待機している。
親衛隊は城内に留まり、空軍が焼き尽くした敵の空軍、ゾンビや骨で出来た鳥のモンスターの生き残り?を退治して行く。
我々空軍は、当初散解して攻めてくる敵の空軍に難渋したが、軍団魔法『ファイアーサイクロン』を二度放つと、目に見えて敵の空軍は激減したので、後は子供ワイバーン達の支援をしながら、個別に対処して行く。
1時間程戦闘が続き、大勢が決し敵半分はほぼ壊滅したが、此方も重軽傷者が多数出たので、作戦指揮車からの命令で魔導砲8門全部の砲身を換装させ、新機軸の『散布型ヒール』砲身に変えさせた。
そして其々の軍団目掛け、魔導砲から『散布型ヒール』が降り注ぐ。
人間にとっては、ヒールは回復魔法だが、ゾンビ兵にとっては攻撃魔法となり、横たわっていたゾンビ兵は散布型ヒールを浴び次々と溶けて行った。
其々の軍団がその場で、装備の点検と死者の搬送を行い、残り半分の敵に備えていると。
突然『セシリオ王国救国軍』の上に暗い影が差した。
雲が垂れ込めたかと、思って視線を向けると、何やら人型の影に見える。
まさか?と思い、残りの敵のいる『アイス・ウオール』の向こう側を見ると、『アイス・ウオール』を遥かに凌ぐ高さ50メートルの巨人が此方を見下ろしている。
「「「うわぁーーー!!!」」」
と『セシリオ王国救国軍』のほぼ全員が絶叫し、氷雪魔術師団とフェンリルを中心に『ブリザード』と『アイスロック』等を敵の巨人に浴びせるが、あまり効いていないのかゆっくりと城邑目指し歩き始めた。
「やはり、奥の手が有ったか。」
との後ろからの声に振り向くと、アラン様がオリハルコン製の金色に輝く装甲を纏ったグローリア殿に乗って居られた。
アラン様から、
「地上各軍団は、城内に退避!
此処からは温存していた戦力である、グローリアと総帥アランに任せて貰おう、空軍も上空にて待機、必要な時に援護せよ!」
と命令が下った。
地上の各軍団はその命令に従い、粛々と城内に引き上げて行き、我々大人のワイバーン達の空軍は、上空で待機する事になった。
戦場は、巨人VSグローリア殿とアラン様の対決となる、第二幕へ移行した。