人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月5日(後編)
各地上軍が城内と城外で布陣する中、巨人とグローリア殿の戦闘が開始される。
先ずは小手調べといった感じで、グローリア殿が火球を連続発射し、巨人の四肢其々に攻撃を当てる。
すると、明らかに障壁と思われる、膜が巨人の表面に現れる。
そして、戦場に魔道具で拡声された大声が響き渡った。
「ハーッ、ハッ、ハッ、ハーッ!
愚かなる者共よ、この偉大なるルージ王の強さを思い知ったか!
お前達は、ただ余の命令に従ってさえおれば良いものを、大貴族共は賢しくも嘆願や勅言そして諫言すら余に対して行い。
終いには集団で余に直訴してくるとは増長も甚だしい、よって制裁してやったが、貴族でも無い平民までもが、余に楯突くとは到底許しがたい!
この上は余が直々に、この強化ネクロス・ジャイアント(死体の集合した巨人)『ルチリア』で天罰をくれてやるわ!」
と巨人の胸辺りから、ルージ王と覚しき人物が喚いている。
「ルチリア?!」
とアラン様やベルタ王国の上層部が、訝った様な声を上げると、
「おおっ、そう云えばお前達ベルタ王国の者共には、説明してやらねばな。
この強化ネクロス・ジャイアントは、アーティファクト『ゾンビ・マスター』を触媒とする人間に埋め込む事で発動し、巨人を人間と同様の運動性能を持たせる事が出来るそうなので、ベルタ王国ではお尋ね者となったルチリア卿を、ベルタ王国への仕返しが出来る様に触媒とさせて貰った、本人もさぞ喜んでおる事だろうよ。」
と平然と、外道な事を口にし更に、
「まあ、お前達もこれから、この巨人の材料にして余の覇道の糧にし、大陸全土の掌握を手伝わせてやるぞ。」
と狂人の戯言をぬかしている。
アラン様は、
「そうか、ルチリアも哀れな結末を迎えたものだな。
ルージ王、人道を無視した行為を堂々と宣言するその心根、既に人の物では無いと判断する。
このアラン総帥が、天に代わって制裁を下す!」
と宣言された。
すると、
「アラン?!
そうかお前がアランか!
お前の所為で、余の聖なる覇業が一々頓挫して終い、結局余自身が出張らなくてはならなくなった。
そのツケを今この場で支払わせてやるぞ!」
とルージ王がほざいたが、
アラン様は、黙ってグローリア殿を駆り攻撃を開始した。
各種攻撃魔法をアラン様とグローリア殿は、巨人の周りを旋回しながら繰り出すが、やはり巨人の防御膜が展開され、有効なダメージを与えられない。
突然巨人は、大きな口を開け轟々と息を吸い始めて、吸い終わると黒い瘴気をグローリア殿に向かって吐いた。
当然グローリア殿はアッサリと避けられたが、避けられた黒い瘴気が地面に達すると、触れた地面が一面黒く染まり、明らかに地面が汚染された事が判る。
ルージ王は、王自ら自分の治める国土を汚染させているのだ。
『セシリオ王国救国軍』の面々は、
「嗚呼、我等の国土を!」
と嘆き、次々にルージ王に向かい怨嗟の声を上げる。
それに対して、
「煩い、余が余の物をどうしようと余の勝手だ、そもそも余の物であるお前達が、余を非難するとは、烏滸がましいにも程がある、分をわきまえよ!」
と一国の国王が国民に対して、言うべきでない言葉を堂々と吐く。
その言葉を聞いた『セシリオ王国救国軍』の面々は慟哭し、ルージ王を見る目付きは自分達の国王を見る目付きではなく、侵略者や悪魔を見る目付きである。
アラン様は、一連の事態を観察し生半可な攻撃では、防御膜を突破出来ないと判断され、切り札の一つを切る事を決断された。
「空軍!軍団魔法『サンダーストーム』展開!」
と号令を発した。
用意万端を整えていた我々は、魔法障壁を貫くドラゴンランスを巨人に向かって投擲、15本全部が突き刺さり、巨人を中心に巨大なストーム(嵐)が展開された。
其処へ空軍全員のサンダーの魔法が放たれ、徐々に周囲が静電気を帯び始め準備が整ったと見たアラン様が、グローリア殿と協力し天の裁き『インドラの矢』を最大魔力で放った!
「ドゴオオーーンン!!」
瞬間世界が白く染め上げられ、轟音が辺り一面に鳴り響き振動が周囲を震わせる。
巨人は流石に耐えられなかったのか、跪いていたがゆっくりと立ち上がった。
「驚いたぞ、まさかこれ程の魔法を使えるとは!
だがお前達の切り札は、バリアーを壊したのみ、『ルチリア』は健在だ、勝負はあったな!」
とルージ王は、勝利宣言した。
確かに現在アラン様とグローリア殿は、『インドラの矢』を最大魔力で放った為、魔法を直ぐには放てない、だが他の軍団は魔法を撃てる。
状況を把握した各軍団と城壁の魔導砲そしてバズーカ砲部隊は、遠距離魔法を次々と巨人に放つ。
だが巨人は、防御膜が無いにも関わらず殆ど効いていないのか、小揺るぎする程度で城邑目指し歩を進める。
不味い!
と誰もが思い、撤退の二文字が脳裏に浮かんだ時、唐突に陽の光が天空から差してきた。
曇天だった筈と疑問に思い皆が空を仰ぐと、ゆっくりと天空から舞い降りてくる存在が有った。
「「「イザーク様!!!」」」
この場にいる全ての者が呆気にとられ、ただ天空から舞い降りてくる使徒イザーク様を見つめていると。
使徒イザーク様は、地面で休息しているアラン様とグローリア殿に、祝福の光を放射した。
祝福の光は、高密度の魔力を伴っていた様で、アラン様とグローリア殿の魔力を回復し、更に装備された魔石ケースの魔石も魔力をフル充填した様だ。
その様子を見た巨人に乗るルージ王は、
「ば、馬鹿な、イザーク様だと?!
偉大なる聖王である余にでは無く、薄汚い敵をイザーク様は祝福するというのか?!
有り得ん、この様な事が有ってはならん!」
と震えた様子が拡声された声の震えで、判った。
そしてグローリア殿は、神聖な輝きと共に静々と羽ばたきもせずに浮かび上がる。
その際、グローリア殿がイザーク様に振り向き、「D10、ありがとう!」と言っていたが、恐らくイザーク様をドラゴン語で称する尊称であろう。
アラン様が、
「待たせた様だな、仕切り直しだ、決着を着けよう。」
と言われ、ルージ王は、
「おのれー、おのれー、屑の分際で聖王たる世を愚弄しおって、絶対に許さん!」
と喚き散らし、再度瘴気のブレスを吐こうと巨人が息を吸い始めた。
「させるか!『ホーリーレイ(聖なる光)』」
とアラン様が唱え、次の瞬間アラン様が光輝かれ、その光が巨人の頭部を突き刺す。
あの、我々の遠距離魔法を尽く跳ね返した巨人の頭は、光に貫かれアッサリと爆砕した。
続いて、
「拘束せよ!『ホーリーストーム(聖なる嵐)』」
とアラン様が唱え、グローリア殿のオリハルコン製の装甲を施した翼から、光の玉が吹き出して巨人の周りを取り囲むと、徐々に旋回し始め天地を繋ぐ竜巻と化し、完全に巨人を拘束する。
そしてアラン様は、
「トドメだ!『ホーリースパーク(聖なる閃光)』」
とアラン様が吠える様に唱えると、アラン様とグローリア殿の輝きが凄まじい勢いで増し、そのまま上空へ昇り、輝き諸共急降下して来た。
ぶつかると思った瞬間、アラン様とグローリア殿は上に急上昇し、光だけが巨人の胸辺りを貫いた!
次の瞬間、
「カッ!」
という音と共に衝撃波が、体を通り抜けた気がしたが、爆発とは違い物理的な衝撃は感じなかった。
白く染まった世界の中、徐々に視力が戻って行くと、上半身の無くなった巨人が居て、残りの残骸も徐々に光りながら崩壊し消えていく。
皆が、ホッと安堵のタメ息を吐いていると、突然地面に居る誰かが天を指差し、大声を上げた。
「みんな、あの天空を見ろ!」
その声の通りに、天を見上げると、
去って行かれる使徒イザーク様を迎え、我々を祝福される様に微笑まれた『女神ルミナス』様が天空に光と共に居られた!
戦場に居る全員が、
「ハハーッ」
と地面に跪き礼拝する中、『女神ルミナス』様と『使徒イザーク様』は天空高く昇られ、去って行かれた。
我々全員は、ゾンビ軍団との陰惨な戦いをしたにも関わらず、『女神ルミナス』様と『使徒イザーク様』に助けられた事で非常に救われ、今後も『女神ルミナス』への信仰を欠かさずに行おうと心に誓った。