人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
5月24日
残りの全軍が王都に到着し、其々が指示された部署に着き行動を開始する。
進路上の街々とその付近の町村には、部隊を派遣し現況を把握しており、我々空軍はその他の地域にセシリオ王国の人員を連れて行き、現況の確認と必要な物資や情報を提供していった。
そういった地域でも一番の重要拠点は、何といっても北の巨大港湾都市『オスロ』だろう。
そこには、ベルタ王国やアロイス王国には無い軍港が有り、そこを抑えるのは軍事的にも経済的にも最重要である。
その為我等空軍は、王都に5頭の大人ワイバーンを残し、子供ワイバーン80頭を連れ計90頭とを乗せ、親衛隊からシュバルツ殿とミツルギ殿が同乗されて、北の巨大港湾都市『オスロ』に向かった。
5時間程で、北の巨大港湾都市『オスロ』に着く事が出来た。
子供ワイバーンも翼長250センチメートルになり、ベックとトール達を1人ずつなら乗せる事が出来る様になり、今回はその飛行訓練も兼ねている。
オスロの市民を、無用に刺激する必要は無いので、近くの平野にワイバーン達を待機させ、自分とシュバルツ殿とミツルギ殿で市庁舎へと向かう。
オスロは漁港と貿易港の面も有るので、賑わっていると予想していたのだが、火が消えたように静かだ。
といっても王都と違い人が居ない訳では無く、漁民や港湾作業員そして商人は、そこかしこに居て屯っている。
「どうして海に出ないのか?」と近くに居た漁民に聞くと、最近海賊が近くの島を占拠し、海に出る船を片っ端から攻撃し、貨物や金銭を奪われるそうだ。
陸には山賊、海には海賊と、人が行き来する場所には必ず同種の賊が出没する、なんとも世知辛いと思いながら、市庁舎に入った。
市庁舎には、故オスロ公爵の娘婿である港湾都市長が居られ、市政を司っていて、早馬によってルージ王が死んだ事や王都が解放された事は把握されていた。
王都の現在始動している暫定政権に対しては、その政権運営には従うと応じられ、取り敢えずの目的は果たしたが、港の様子の話しを始めると、港湾都市長は途端に渋い顔をされ、困っている実情を説明された。
何でも昨年の夏にルージ王が、王位に着いた際に傭兵、山賊、チンピラといったならず者を大量に国家として集め、粗奴らに他国を荒らさせる事で侵略しやすくしようと考えたらしいが、その中に海賊もいて、オスロに有る海軍の軍艦を幾つか譲渡したらしい、そしてオスロ公爵がルージ王を諌めるべく王都へ行った際に、オスロ公爵と伴った軍がルージ王によって虐殺されてしまい、統制出来なくなった海賊が付近を荒らし始めたそうだ。
そう云えば、昨年の夏のベルタ王国への侵攻の時も、セシリオ王国軍所属の傭兵、山賊、チンピラがベルタ王国の街や村を襲っていたなと思い出し、こんな負の遺産を残すとはルージ王は歴史に残すべき罪人だなと改めて思った。
早速会議室の改装を許可を得て始め、放送機材を設置し王都のアラン様と連絡を取る。
港湾都市長は当初面食らっていたが、会話する内に便利な魔道具であると納得され、アラン様と親しく今後のセシリオ王国のあり方と、港湾都市『オスロ』の歩むべき道の展望を話し合われた。
そして今後の事を考えると、害悪でしか無い海賊は滅ぼしてしまおうと決定し、その役目を我等空軍に任された。
当然自分は承諾し、横に居たシュバルツ殿とミツルギ殿も承諾された。
港湾都市長から、海賊が占拠している島の見取り図と軍艦の仕様を聞き取り、今夜島に夜襲を掛けサッサと始末を着けようと決めた。
市庁舎を出て、海賊を捕縛する為のロープや足かせを港湾都市長から提供され、馬車に積んでいると後ろから、
「シュバルツ後輩じゃないか?」
とシュバルツ殿に話し掛けて来る女性が居た。
全員で振り向くと、異国風の服装をして腰に長刀を差した女武者が居た。
「オウカ殿!」
とシュバルツ殿が驚いていると、女性は、
「オウカ殿じゃなくて、オウカ先輩だろ!」
と不満そうに応じてきた。
「たった一週間の入門時期の差ではないか!」
とウンザリした声でシュバルツ殿も応じ、自分とミツルギ殿に、
「オウカ先輩は、某の同門である神剣流の先輩で、3剣王の1人だ。」
と女武者の紹介をした。
3剣王の1人は、女性だったのかと驚いたが、考えてみればセリーナ団長とシャロン副団長という、自分を遥かに凌駕する女性がいるのだから、驚く程では無いなと思い直した。
路上で話すのも憚れるので、昼間だが酒場に入り、お互いの事情を話す。
何でも、オウカ殿はシュバルツ殿と同じく諸国武者修行の旅をしていたが、異国へ行こうと港湾都市『オスロ』に着いてみると、海賊がのさばっているではないか、これは義を見てせざるは勇無きなりと、海賊討伐を考えていたが、肝心の島に行く船を探したが、誰も船を貸してくれないので困っていたそうだ。
シュバルツ殿が、その海賊退治は今夜我々が行うと話すと、驚かれて、
「船はどうするのか?」
と聞かれ、
「いや、船は使わない。」
と言うと、理解出来ない様子なので、ワイバーン達が居る平野に連れて行くことにした。
馬車で向かう道中、色々とオウカ殿はシュバルツ殿と会話された、
「エッ、あんた宮仕えなんてしてるの?!
確か道場にいた時、幾つかの大国から招聘されてたけど、修行の妨げになるからと、全部断ってたじゃない、どういう心変わり?!」
とオウカ殿は驚かれていたが、シュバルツ殿は堂々と、
「その修業の為だ、敬愛するアラン総帥は人格、識見、民への慈しみ全てに於いて、人として見習うべき方で、恐らくは大陸に比肩し得る者は皆無だ。
そして何より、アラン総帥は某より強い!」
断言された。
その意見に自分とミツルギ殿は大いに賛成なので、
「その通りだ。」
と頷きながら、答えた。
オウカ殿は、
「アラン?
もしかして、ドラゴンスレイヤーとして名高い、今時の英雄と噂されているベルタ王国のアラン男爵?!」
と聞いてきたので、
嗚呼、世間ではまだ正確な身分が伝わっていないのが判ったが、真実の立場の前にはどうでも良いかと思い直した。
「処でシュバルツ後輩の双剣が、双刀になっているけど、腕利きの鍛冶師見つかったの?」
とオウカ殿に聞かれ、突然シュバルツ殿が破顔され、ニコニコと双刀を腰から外し自慢し始めた。
「良くぞ聞いてくれた、此の2刀こそ某が夢見ながら持つ事が叶わなかった刀だ!
『銘は右月と左月』
オリハルコン製で製法は秘密だが、2刀とも魔法剣の最高峰クラスだ!」
と尋常でない喜び様だ。
すると、ミツルギ殿も負けじと、
「ならば、俺の此のガントレットも見てくれ!
シュバルツ殿の2刀を鍛えた鍛冶師が、特別に鍛え上げた代物で、ガントレットでありながら、打つ・掴む・投げる・突く事が出来る。
『銘は豪雷』
同じくオリハルコン製で製法は秘密だが、魔導武具の最高峰クラスだ!」
と豪快に笑いながら、自慢している。
些か、呆気にとられながらオウカ殿が、双方の魔導武具を観察されていると、徐々にその目が険しくなった。
そして、
「誰だ?その鍛冶師は、こんなアーティファクトと言って良い魔導武具を作れる天才は?!」
と問われたので、シュバルツ殿とミツルギ殿は自分を指さされ、
「「此のケニー殿の、御父君だよ。」」
とハモッて答えたので、オウカ殿が剣呑な目付きで、
「そなたの御父君は、何処に居られる?
是非教えて頂きたい!」
と尋ねられたので、
「コリント領ですよ、もし行きたいのであれば、我々に付いて来て下さい、案内しますよ。」
と答えたら、
「有り難い、恩に着る!」
と頭を下げられ、感謝された。
しかし、親父が天才鍛冶師ねえ、ルドヴィークに居た頃は、近所の家庭の包丁の打ち直しと研ぎで生計を立てていたのに、変われば変わるもんだと思った。