人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
6月5日
セシリオ王国に於ける新たなる施策が発表された。
今後セシリオ王国という名称は無くなる。
当面はアラン総帥が治める自治領になり、総帥府が統治する。
税制は、物品等の買い物時に支払われる代金に2割の消費税を乗せるだけで、それ以外の税の徴収は無い、よって人頭税等も一切廃止する。
今回の内乱で被害に合われた人民に対しては、速やかなる王都への移住を勧め、家屋・食料・仕事等は総帥府が責任を以って用意し、無担保且つ無期限で無利子の事業資金も貸し付ける。
各地の人民に対しても同様で、もし王都に移住を希望するならば、総帥府がその移住費用を負担する。
同時にセシリオ王国国軍は無くなったので、改めて『総帥府軍』が創設され、軍人を募集する。
人員は、各国境の守備軍3方面に3万人ずつと、港湾都市『オスロ』に配備する海軍1万人、王都に配備する王都守備軍と常設軍其々1万人、計12万人の軍となる。
元セシリオ王国国軍の軍人は、スライドして『総帥軍』になって貰い、貴族の私兵や義勇軍は軍人教育を受けて貰い、希望する軍に入って貰う。
各ギルドは、王都でのギルド再開の為に地方から王都に人員を派遣して頂き、ベルタ王国のギルドとの融合を図り、ベルタ王国で進められている新たな物流システムとインフラ、そして通信機とモニターに代表される、情報インフラを学んで貰う。
また、希望者には、コリント領と同じくカード登録が出来て、カード登録するとギニーだけでなくポイントも使用する事が出来、ポイントは何時でもギニーと交換出来る様に、総帥府が窓口を設け対応する。
カード登録をし、軍人或いは公的職業に就職した場合、希望者には『ナノム玉』を配布する。
(『ナノム玉』に関しては、別項目で詳しく説明する)
といった内容の概略が発布され、この時点でセシリオ王国は正式に消滅した。
6月12日
発布から1週間が経ったが、殆どの元セシリオ王国国民は反発せず、逍遥として新たな施策と総帥府の統治を受け入れた。
これは、前国王のルージ王が7割という税を課した上に、別途の人頭税や労役を課され、とてもでは無いが生活出来ない状態にさせられ、生き地獄を体験していたのが理由として大きく、更に街や都市には街頭モニターを設置し、ニュースや特集番組でルージ王がどの様な事をしていたかや、先の戦いの際どの様な内容の話しを喋ったかを赤裸々に放送した所為で、前王朝であるセシリオ王国を国民自身が嫌悪し、一刻も早く忘れたい心理が働いたのかも知れない。
また、内乱の最後の局面で、使徒『イザーク様』がアラン様を助けたシーンと、『女神ルミナス様』がその戦いに参加した全ての民を祝福されたシーンを、動画でご覧になったルミナス教の西方教会が、教皇始め全ての上層部の承認の元、『女神ルミナス様』の顕現と使徒『イザーク様』のアラン様への助力を認められた。
更に、王都から『女神ルミナス様』に脱出のお告げを賜ったり、使徒『イザーク様』が脱出の助力を得たユリウス大司教は、アラン様こそ『女神ルミナス様』に認められた真実の『王権神授』の当事者であり、我等元セシリオ王国国民は、今まで偽物の王朝に支配されていた、哀れな人民であり、漸く真実の指導者に出会えたのだと熱弁を振るって信者達に聞かせ、放送局の特集番組にも出演され、証拠動画と共に元セシリオ王国国民は総帥府の施策を全面的に受け入れ、アラン様達と共に進む事が『女神ルミナス様』の望みであると祈りの言葉を唱え述べられた。
この放送を見た元セシリオ王国国民は、『女神ルミナス様』への信仰を改めて誓い、率先して総帥府の指導に従う姿勢を見せている。
生き残った少数の貴族達は、前王朝の貴族である事に我慢出来なくなり、貴族の身分を捨てられて、総帥府の指示の元、能力に相応しい役職に就いて貰い、元セシリオ王国国土全てが総帥府の直轄地となり、総帥府から派遣された政治行政官が、各地方の行政と司法を司る事になった。
6月23日
周辺各国の内大半の国が、西方教会を国教にしている事もあり、セシリオ王国を総帥府が暫定統治し、これまで以下の入国税で貿易を再開し、港湾施設の使用料及び滞留費を当面減免する、との発表に全面的に賛成し国交の樹立を調印した。
しかし、アロイス王国はこれを断固拒否し、
「総帥府はベルタ王国の策謀により、正当な前セシリオ王国王朝を所以も無く簒奪した暴虐な政体であり、アロイス王国は義により近く制裁を下す。」
と各国に声明を発表した。
だが、アロイス王国と歩調を合わせると思われたアラム聖国は、奇妙な沈黙を守り、国交の樹立こそしなかったが、人の往来を阻害する様な事も無かった。
ある意味不気味な沈黙と我等も疑い、アラム聖国から流入する商人や旅人には、『漆黒』の人員を割き警戒する事になった。
アラン様の指示の元我等は、新たに組織された『総帥府軍』を戦力として使える存在にする為に、装備をベルタ王国正規軍並みに整えるべく、コリント領で増産された各関節部を保護する合金製のサポーター、そして剣や槍は大量生産品ながら魔法武具に切り替え、隊長以上には『ナノム玉』服用とイメージ動画の教育により魔法教育を施した。
6月30日
アロイス王国がベルタ王国の国境線守備軍に、昨日攻撃を仕掛けてきた。
常識で考えるなら、アロイス王国が非難した元セシリオ王国である、現総帥府に対して攻撃するのが筋であるが、一応ベルタ王国も非難していたし理屈は通るのかな?と愚にもつかない事を考えながら、王都にある『総帥府軍』演習場の大広場に向かう。
其処には、此の日が有る事を想定し、準備していたベルタ王国から派遣されていた遠征軍全軍と、『総帥府軍』の内、王都守備軍と常設軍其々1万人が集結していた。
アラン様が壇上に登られるのと同時に、頭上に巨大な立体プロジェクターが展開され、
「皆も聞いたと思うが、昨日ベルタ王国の国境線でアロイス王国軍とベルタ王国の国境線守備軍が、戦端を開いた。
その際アロイス王国軍は、前セシリオ王国国王ルージの弟を名乗る人物が旗頭である、と公言しその人物をセシリオ王国国王とする為にベルタ王国に侵攻した、と宣言を行い攻撃して来た様だ。
総帥府も確認の為、前王朝の系譜資料を精査したが、その様な人物は資料上存在せず、もし真実だとしても前王朝の公認の存在では無い、つまり僭称しているだけの人物であり、アロイス王国の企図している事は、この国にアロイス王国の傀儡政権を樹立して、アロイス王国への従属国家を成立させる事だ。
よって、総帥府はこの国の民をアロイス王国への従属国民にさせない為に、アロイス王国の野望を粉砕する。
空軍と自分及び王都守備軍を除いた全軍は、此処から南のアロイス王国の国境線に向かい、其処で国境の守備軍3万と合流し、アロイス王国国境要塞を攻撃せよ。
空軍と自分は、現在戦端の開かれている、ベルタ王国の国境線に向かい、アロイス王国侵攻軍を攻撃する。
良いな、2正面作戦になるが互いに連絡を密にして、連携して行動する。
では、順次出撃!」
とアラン様は号令され、全軍、
「「「「「オオオーーーー!!!」」」」」
と地響きする様な雄叫びを上げ、次々と軍団毎に出撃し始めた。
そんな中、我々、旧スターヴェーク王国出身者は、凄まじい闘気を胸に秘めてある思いを共有していた。
今度の戦いこそは、我々の悲願である国土奪還戦であり、どの様な難敵が現れようが必ず国土を回復してみせるとの決意である。
自分の闘気を感じたのかガイも武者震いして飛び立ち、空軍全軍のワイバーン95頭はグローリア殿を先頭に、ベルタ王国の国境線に向かい出撃した。