人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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53. 7月の日記①(2年目)

 7月1日

 

 昨日出撃してから、子供ワイバーン(既に3メートル半の翼長なので子供では無いが)の航続距離を考えて、4回に分けて休息しながら、20時間を掛けてベルタ王国の国境線に辿り着いた。

 そしてアラン様を含め空軍全員が、信じ難い戦場を見る事になった!

 ベルタ王国とアロイス王国の間の国境は、緩衝地帯を挟み其々要所に要塞と検問所が有るのだが、アロイス王国軍は、ベルタ王国側の要塞にも近づけていなかったのだ。

 何故かというと、其れは今現在凄まじい音(クラクションというらしい)を鳴らしながら、アロイス王国5万の軍勢に襲いかかるド派手なトレーラー200台による、暴走突入の所為で間違いない。

 そのド派手なトレーラー(デコレーション・トレーラー:通称デコトレというそうだ)達は、前方に張り出したトゲ付きバンパーと、車体全体は軍団魔法『オーディン』と同じく風の魔法で保護し、時折音響破壊魔法『サウンド・ソニック』をクラクションと共にアロイス王国軍に浴びせ、蹴散らしている。

 その中で、一際目立つ先頭をはしる2台のデコトレが有り、その2台を自分は知っている。

 親父の飲み仲間で、トレーラーを開発し自ら改造を施し、更には自ら暴走気味に乗り回す、コリント領でも関わるのはタブーとされている、『ホシ』と『ジョナサン』の愛車である。

 その2台が、其々99台のデコトレを率い御意見無用!と言わんばかりに、アロイス王国の誇る戦車(チャリオット)部隊をアッサリと粉砕して行く。

 あまりにもあまりの光景に、アラン様も珍しく呆然とされていたが、暫くして正気に戻られて空軍に指示を出され、デコトレに魔法攻撃を仕掛けているアロイス王国軍の後続魔法部隊に対して絨毯魔法爆撃をする様に命じられた。

 ワイバーン95頭による火球攻撃と竜騎士100人による『ファイアー・グレネード』により、アロイス王国軍の後続魔法部隊はアロイス王国軍全体の魔法防御を厚くしなければならず、敵に対して魔法攻撃が出来なくなる、恐らくは以前我等空軍の空からの攻撃に対応する為に、魔法防御をアロイス王国軍全体に出来る様にしていたのだろうが、そんな事は想定済みだ。

 其処に、魔法とは関係無いワイバーンの爪攻撃とドラゴンランスの攻撃が空中から襲いかかり、地上ではデコトレのトゲ付きバンパーが蹴散らして行く。

 打つ手がないアロイス王国5万の軍勢は、1万の軍勢を戦闘不能にされ、這々の体でアロイス王国側の国境へと退却して行った。

 漸く戦場にクラクションが鳴らなくなり、アラン様がグローリア殿から地上に降りられると、『ホシ』と『ジョナサン』始め400名のトレーラー乗りが、アラン様の前に集結した。

 我々も地上に降り彼等の話しを聞くと、どうやらロベルト老の差し金らしく、1週間前にアロイス王国が各国に声明を発表した時点で、旧スターヴェーク王国出身者のトレーラー乗りがロベルト老に嘆願書を出し、故郷を奪還する為に自分達のトレーラーを役立てて欲しいと訴えたそうだ。

 ロベルト老は、恐らく補給や怪我人の搬送を頑張って貰うつもりで、彼等を送り出したのだろうが、まさかアロイス王国正規軍に正面から喧嘩を売るとは、想像していなかったに違いない。

 取り敢えず、全員魔石の補給等を受けねばならず、ベルタ王国の国境要塞に全員で向かい、駐屯する事になった。

 要塞にいた国境守備軍2万も籠城戦を覚悟してたのに、街道を様々な色の魔力光をこれでもかと言わんばかりに光らせながら驀進して来たデコトレが、そのままアロイス王国軍に襲いかかり、あっという間に乱戦状態になった為、魔導砲で援護する事すら出来なかったそうだ。

 アロイス王国軍もまさかこの様な形で敗退しようとは、考えていなかったろうなあと、ミーシャに話し掛けたら「間違いないわね。」と笑いながら答えられ、近くにいた空軍の面々も笑い合い、其々のワイバーンに餌を与えながら、明日からの戦争へ思いを馳せた。

 

 7月2日

 

 デコトレの魔石充填をして、敵の8千人に及ぶ戦時捕虜を収容し、デコトレのピストン輸送で王都に送って貰い、例のレール敷設工事要員として働かせる様に王都守備軍のヘルマン卿へアラン様は依頼された。

 

 午前9時、要塞の会議室で、アラン様が作戦説明をされた。

 

 1、空軍のみで、敵の国境線の要塞に向かい、投降を呼びかける。

 

 2、その際、これから5分後に戦術級魔法『メテオ・ストライク』を要塞に行使するので、投降しないなら退避する様に呼びかける。

 

 3、戦術級魔法『メテオ・ストライク』は、天空より隕石を落下させる召喚魔法なので、落下時凄まじい音と衝撃波が伴うので、要塞にいる国境守備軍も防音措置を取る事、そして空軍と居残っているデコトレ20台のトレーラー乗りも防音措置を取る。

 

 4、音と衝撃波が収まり次第、国境守備軍は敵アロイス王国の国境線に進出し、国境の砦等を接収する。

 

 5、居残っているデコトレ20台は、『メテオ・ストライク』により落ちてきた隕石を、熱が冷め次第分割し、コリント領に輸送する。

 理由は、隕石に含まれる鉱物資源は大変貴重な物で、今後の研究資材として有用な為。

 

 以上の説明がされ、アラン様の今までの魔法能力を知っている軍人は、説明に寸毫の疑いも抱かないが、トレーラー乗り達は目を白黒させている。

 まあ、トレーラー乗り達ももう少ししたら、アラン様の凄まじさを理解する事だろう。

 

 1時間後全ての用意を終え、我等空軍を連れてアラン様は敵の国境線の要塞に向かった。

 要塞手前500メートルの処で、全員滞空状態になり、アラン様は拡声器と立体プロジェクターを起動させ、敵アロイス王国軍に向け勧告を行った。

 「要塞に立て籠もる、アロイス王国軍に勧告する。

 速やかに要塞を立ち退き投降せよ!

 投降出来ないというのであれば、一刻も早く要塞から最低でも1キロメートル離れ、耳を塞ぐ事を勧める。

 今より5分後に発動する魔法は、戦術級魔法『メテオ・ストライク』。

 天空より隕石を落下させる召喚魔法であり、その威力は如何に堅固な防御魔法を展開しても無駄な魔法だ、賢明な判断をアロイス王国軍上層部が下される事を切に願う。」

 と要塞にいる、アロイス王国軍に呼びかけられた。

 それに対して、

 「我等を謀り、この要塞を無償で手に入れたいのであろうが、無駄な事だ!

 此処に居る者達は、アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニに無二の忠誠を誓う、誇り高き者達だ、援軍が来次第お前達なぞ滅ぼしてやるから、精々吠えているが良いわ!」

 と敵も拡声器で返答した。

 敵上層部はともかく、付き合わされる兵士を哀れに思い、心の中で黙祷し空軍は要塞から2キロメートル程距離をとる。

 5分後、天空から灼熱の炎を纏った星の欠片が、要塞目掛け落ちて来た。

 徐々に落ちてくる星の欠片を見て、偉そうに吠えた敵の指揮官は、最後に何を思ったのかな?

 と耳を塞ぎながら埒も無い事を考えていたら、凄まじい衝撃波が我等空軍に襲いかかった!

 予め距離を取り、防御魔法を展開していたから問題なかったが、要塞は半壊していた。

 多くの敵が衝撃波で吹き飛ばされ、5体無事の者も鼓膜は破られ突っ伏した状態だ。

 敵の指導部に生き残りは居らず、我等空軍は倒れている敵軍を次々に拘束し、ロープで数珠繋ぎにして行く。

 アロイス王国軍の中で徐々に意識を回復する者が増え始め、殆どの者が茫然自失している。

 そんな中、ベルタ王国の国境守備軍1万が到着し作戦通り接収作業に移った。

 どうやら、アロイス王国軍は5千人が犠牲になり残り3万5千を戦争捕虜に出来た様だ。

 特に戦争捕虜達は、抵抗の意志は示さずにただ項垂れる様に地面に座っている、余程戦術級魔法『メテオ・ストライク』はショックだったのだろうと想像出来た。

 自分がもし敵側で、あの様な神の如き魔法を使用されたら、とてもでは無いが敵対する意志を保てないだろう、本当にアラン様が味方で有ることの有り難さを染み染みと感じた。

 

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