人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
7月3日
戦争捕虜達の怪我をヒールで治して臨時の捕虜収容所を設営し、雨風を防げる様に手配した。
国境線上の砦に備蓄されていた補給品や食料の備蓄を確認し、十分当面の兵站としては賄える事を確認すると、ベルタ王国に待機していた『漆黒』とその配下の宣伝部隊を、アロイス王国各所に送り込み、徹底的な宣伝工作をさせる。
内容は、
「現アロイス王国に住まう全ての者に告げる!
私は、旧スターヴェーク王国王女『クレリア・スターヴァイン』である!
現在私は、元セシリオ王国からアロイス王国先遣部隊を駆逐し、元ルドヴィーク辺境伯領を目指している。
目的は、不当にも旧スターヴェーク王国を簒奪し、旧スターヴェーク王国国民に対して塗炭の苦しみを背負わせる、アロイス王国を名乗る逆徒を旧スターヴェーク王国から追い払う為である!
此れは、西方教会全面支持の行動であり、西方教会圏全ての国家が支持し物資及び資金の援助を表明している。
更に、ベルタ王国と元セシリオ王国で現総帥府は軍隊を派遣し、此れより復活する新生スターヴェーク王国への全面支持を表明された。
心ある者は、元ルドヴィーク辺境伯領に参集する事を望む。」
という、我等旧スターヴェーク王国国民の希求する宣伝文である。
「いよいよ此処まで来たか・・・」
自分の心に今迄の様々な場面が、走馬灯の様に去来した。
自分は宣伝部隊を現アロイス王国の要所に届けながら、上から見る故郷の風景に必ずこの国土を新生スターヴェーク王国として、復活させて見せると決意した。
7月10日
デコトレのピストン輸送が終わり、戦争捕虜4万3千をベルタ王国王都に送り、代わりに要塞に運び入れたのは10万の兵士が1年は戦える物資だ。
此処を中継基地として、先ずは元ルドヴィーク辺境伯領に拠点を移す事にする。
現在、元セシリオ王国から発した総帥府軍とベルタ王国と総帥軍の混成軍は、アロイス王国側の国境線の要衝を、移動式魔導砲の集中運用で城門を粉砕し、全てのアロイス王国側の国境線の砦等を接収し其処の守備を総帥府軍の国境守備軍に任せ、一路元ルドヴィーク辺境伯領へ南下している。
クレリア姫様始め旧スターヴェーク王国出身者は、長い者は2年振りの故郷の地だ、様々な思いを抱かれているに違いない。
7月11日
『ホシ』と『ジョナサン』を先頭にして、計200台のデコトレが元ルドヴィーク辺境伯領に続く主要街道を爆走する。
その上空をグローリア殿と我等空軍が、護衛しながら飛行する。
アロイス王国側は、不思議な程此方を牽制する様な素振りを見せない。
我々空軍の偵察でも、アロイス王国は王都に北部と東部の軍を呼び寄せており、まるで国土の北部と東部は捨てたかの様だ。
作戦会議の席でも議題に上がったが、恐らくアロイス王国側は元々旧スターヴェーク王国への忠誠の篤い北部と東部はアロイス王国への馴致が思う様に行かず、已む無く手放したのであろう。
それが証拠に続々と、旧スターヴェーク王国の貴族とその領民兵、そして北部と東部から義勇兵が集まって来て、我等の軍と合流し一路元ルドヴィーク辺境伯領を目指す。
7月15日
とうとう、元ルドヴィーク辺境伯領に辿り着いた!
懐かしの故郷であるが、城郭は壊れたままだし、家屋や道路は一切整備されていない。
まるで廃墟の様で、元の賑やかな様子が嘘の様である。
一足早く入城された混成軍の方々と合流して臨時の会議を開き、直ぐに城郭及び道路の整備をして籠城戦でも戦える様にすると決定され、アラン様とクレリア姫様の命令の元、各軍は工事に取り掛かる。
粗方の廃材やゴミの撤去を終えると、旧スターヴェーク王国の上層部とアラン様達は、残っていた人民が保存してくれていた、『ルドヴィーク辺境伯』と『アルセニー男爵』そして『ダヴィード伯爵』の遺髪を受け取り、後日懇ろに弔う事にした。
クレリア姫様は、
「伯父上、約束通り帰って参りましたぞ!
このクレリア、必ず伯父上や我が家族の仇である、アロイス王国を討滅して見せます。
そして、スターヴェーク王国を復活させた後、もう一つの約束であるルドヴィーク家の後継者を、此処に居るアランとの間にスターヴァイン家の後継者の次に、必ず産んで見せます!」
とルドヴィーク辺境伯の遺髪を胸に抱き、魔力を込めて『女神ルミナス』に誓う。
『女神ルミナス』が誓いが受け入れられた証として体が光った。
その様子を後ろに控えていた、アラン様と旧スターヴェーク王国の上層部更に合流した旧スターヴェーク王国の貴族達はご覧になり、改めて国土の回復とスターヴェーク王国を復活させる事を『女神ルミナス』に全員が誓った。
7月16日
早朝、同僚のミーシャを連れて元の家の有った場所に向かった。
その場所は家屋が全て燃やされ、ただの空き地と化していて、思い出の痕跡も無い様だ。
思わず拳に力が入り、地面に拳を叩きつけた。
「ゴッ!」
という音と共に地面が陥没」する。
知らず知らずの内に魔力を込めていたらしい。
「大丈夫?」
とミーシャに心配されたが、拳は魔力を纏っていた為に傷一つ無い。
「この様子だと、君の故郷であるダヴィード伯爵領も酷い有様な気がするな。」
とミーシャに言うと、
「心配要らないわ。
貴方の家族と一緒でコリント領に全員移住出来ているから、あくまでも元の故郷は故郷でしか無く、今はコリント領こそが私達の家よ。」
と答えてくれた。
ミーシャの言葉に、その通りだと思い返すが、アロイス王国には当然そのツケを支払って貰おう。