人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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55. 7月の日記③(2年目)

 7月20日

 

 新生スターヴェーク王国の拠点として、急速に元ルドヴィーク辺境伯の城は整備され、外縁部まで土魔法を徹底的に使う事で広大な駐屯地を抱え込む土壁を構築した。

 更に、持ってきた魔導砲計20門を城門と土壁上に配備し、バズーカ砲も200砲用意している。

 此れで、長い籠城戦でも戦い抜ける戦う城が出来上がった。

 現在、続々と旧スターヴェーク王国の貴族だった方々と、兵士だった人民が参集して来ている。

 ベルタ王国内乱時にミツルギ殿が使用していたアーティファクト『テンプテーション』を、魔法ギルドのカーラさんが解析し、その能力の一部である人を催眠状態にして本音を聞き出すと云う魔道具が開発され、僅か5分間しか効き目の無い簡易版で有るが、其れを使用して新たに合流して来た面々を検査した。

 すると、貴族の10分の1と兵士の100分の1にスパイが紛れ混んでいて、逆にそのスパイからアロイス王国の指令内容を聞き出す事に成功し、『漆黒』の上げて来る情報と照らし合わせ、アロイス王国が次に何を企図しているかを、大まかに把握出来た。

 アロイス王国側は、此れまで隠し徹してきた我々との戦争に於ける惨敗と、敵方にクレリア姫様が存在する事、そして西方教会がアロイス王国を非難し、周辺諸国もクレリア姫様を支持している事実をバラされた所為で、士気がかなり落ち込んでおり、中々元ルドヴィーク辺境伯の城に攻め寄せられない様だ。

 其処で、アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニは、後ろ盾であるアラム聖国に援軍を要請した。

 直ちに、アラム聖国は義によってアロイス王国を支援すると表明し、聖徒を主軸とした30万の義勇軍を海路と陸路で派遣するそうだ。

 流石公称100万の軍勢を持つとされるアラム聖国だが、今迄の工作員を派遣したり、アーティファクトや魔道具を使った裏工作等の姑息な手段をひたすらして来た経緯を考えると、方針転換せざるを得ない何事かがあったのだろうか?

 何れにせよ、近い内にアロイス王国10万とアラム聖国の義勇軍30万の計40万の大軍勢と、この改修の終わった新生ルドヴィーク城は戦端を開く事になる。

 

 7月25日

 

 ノリアン卿、 アウラー卿、イルクナー卿他多数の貴族が家臣と旗下の兵士を連れて、『漆黒』の案内で王都を脱出したとの報告が有り、空軍(大人ワイバーン10頭)と機動軍(1000)が出動し護衛する事になった。

 クレリア姫様付き親衛隊のエルナ隊長とデリー隊員、ニルス隊員他が其々の家長を助ける為、機動軍の装甲車に便乗させて貰い、共に出撃した。

 いち早く空軍は、脱出して来た1万の軍勢と合流したが、その後方には砂塵を巻き上げながら追っ手が迫っていた。

 脱出して来た軍勢を新生ルドヴィーク城へ向かわせ、空軍は追っ手を牽制する為、軍団魔法『ソニックインパルス』の体勢に入った。

 次の瞬間、

 「「「バババッーン!!!」」」

 という猛烈な音と共に、

 「「「キキキッーン!」」」

 という硬質な音が、ワイバーン達のオリハルコン外装の表面から響き渡る。

 オリハルコン外装の表面を見ると、薄っすらと何か硬い物が当たった跡が有る。

 此れは、ワイバーン達のオリハルコン外装だからこそ良かったが、竜騎士の軽装では当たり所が悪いと怪我を負うかも知れない。

 急遽、軍団魔法『ソニックインパルス』を取り止め、追っ手の前面に『アース・ウオール(土壁)』を交互に展開し、徹底的に追っ手の足を鈍らせる事にした。

 それにしても、あの猛烈な音と共に発射された物は何だったのか、非常に気になった。

 

 7月27日

 

 機動軍が前方に現れ、脱出して来た1万の軍勢と合流し、我々空軍も合流地点で休息して、魔石の交換作業に入る。

 この2日間でノリアン卿達に確認した処、あの猛烈な音を出す兵器は『銃』と云って、原理は教えて貰えなかったが、魔法に基づかない火薬と言われる物を使用し、金属片を飛ばす代物だそうだ。

 弓矢やボウガンよりも遠くの標的を狙う事が出来て、魔法に基づかないからマジックシールド系の魔法防御は、意味を為さないそうだ。

 どうもこの『銃』は、アラム聖国が供与した物らしく、相当数アロイス王国に入って来ているらしい。

 『銃』の報告を、機動軍を率いて来たシャロン副団長に伝えると、、

 「厄介な物を・・・・」

 と苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、アラン様へ通信機で連絡を取られた。

 アラン様から通信機越しに、

 「直ちに空軍は帰投し、機動軍は脱出して来た1万の軍勢の殿を務め、無事に新生ルドヴィーク城に届けよ!」

 と命令された。

 命令に従い、空軍は新生ルドヴィーク城に帰投し、自分とミーシャはそのまま上層部の集まる作戦会議室に通された。

 作戦会議室では、自分がこの2日間で撮影した動画から、ハリー率いる『放送局』の画像解析版が、『銃』の画像を抽出し、大凡の外観を抜き出しモニターに映し出している。

 アラン様に求められ、相対した自分の感想と実体験に基づく大凡の射程距離と命中率を述べた。

 皆、今まで見たことも無い兵器の登場に緊張した様子で、アラン様はシャロン副団長と同じく苦虫を噛み潰した様な表情をされている。

 アラン様は、

 「見てのとおりだ、敵アロイス王国はアラム聖国から供与された、新兵器で武装している。

 この新兵器は、魔法に基づかないからマジックシールド系の魔法防御は、意味を為さない。

 よって、今以上に城壁や土壁は厚くしなければならない、更に火薬そのものを城内に入れられない様にする為、城壁や土壁の高さも上げる様にせよ。」

 と命令された。

 「「「ハッ!」」」

 と皆が持ち場に向かい、自分はハリーの後片付けの手伝いをしていると、アラン様の独り言が傍を通る時に聞こえた。

 「アラム聖国は、地獄の釜の蓋を開けたか。」

 という内容で、自分も実際相対した時に感じた、何とも不吉な予感を肯定された様で、不安になった。

 

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