人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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56. 8月の日記①(2年目)

8月1日

 

 昨日アラン様の命令で、大人ワイバーン15頭とグローリア殿で元セシリオ王国の『総帥府』に向かい、一泊して本日『ヒルダ嬢』と『フェンリル』そして精鋭の『氷雪魔術師団』30名を乗せて、新生ルドヴィーク城に帰投した。

 早速、連れてきた面々を作戦会議室に連れて行くと、アラン様とクレリア姫様が出迎えられた。

 アラン様が、

 「『氷雪魔術師団』の方々と『フェンリル』殿には、遠距離の移動大変ご苦労だった。

 さて、諸君等に来て頂いたのは他でもない、貴方方の御力で我軍を助けて欲しいからだ。

 先ずは此れを見て欲しい(モニターに『銃』とアラム聖国から搬送されつつある『大砲』、『野砲』を表示させ)、この新兵器は火薬という爆発物を使用する事で、金属球や爆発物を遠距離に飛ばし、兵士や城壁に損害を与える事を目的とした兵器だ。

 此れ等は、魔法に基づかないからマジックシールド系の魔法防御は、意味を為さない。

 然も、魔法に基づかないが故に、魔法を使用出来ない兵士でも使用出来、大量に運用されれば莫大な損失を被る事になる。

 しかし、同時に欠点も存在し、物理的な燃焼爆発力を利用する為、その燃焼爆発そのものを起こさせなければ、この兵器群は活用出来ない。

 よって、諸君等の『氷雪魔術』でこの兵器群を活用出来なくする切り札としたい。

 正直、貴方方にはあまり軍事行動に突き合わせる気は無かった。

 だから、『総帥府軍』には組み込まなかったし、第1席次と第2席次の両名には、元セシリオ王国に新しく作った『学校』の校長先生と教頭先生に就任して頂いた。

 このまま『氷雪魔術師団』の方々には、新しく生まれ変わった国で魔法を教える教員として、頑張って頂きたかったのだ、しかし、この兵器群を野放しにして置くと誰でも簡単に人を殺す事が出来る上に、狂人が持つといともたやすく行われる大量虐殺の要因になる。

 魔法ならば、対抗魔法防御や魔力の抑制によって一般人の安全も図れるが、この兵器群には殆ど一般人には対抗策が無い。

 諸君にお願いする、此の兵器群が戦争には有用では無い事を示す為に、全力を尽くして貰いたい。」

 と頭を下げられお願いされた。

 ヒルダ嬢は、

 「どうぞ、アラン総帥頭をお上げ下さい。

 我々『氷雪魔術師団』は貴方様に返せない程の恩義が御座いますし、貴方が治めてくれたお陰で元セシリオ王国が新しくそして力強く復興している姿に、とても感謝しております。

 我々が将来の国の為に魔法を教える教員として働く事は、大変有意義で有り心踊る話しです。

 ですが、未だこの様に周辺各国に対して野望を抱く、アロイス王国とアラム聖国が存在している以上、我等『氷雪魔術師団』だけが、安穏としている訳には参りません。

 どうかアラン総帥、我等『氷雪魔術師団』にご命令下さい、我等の力で以ってこの戦争を勝利に導く様にと!」

 と返答され、『氷雪魔術師団』共々片膝を着き命令を待つ体勢になった。

 アラン様は、

 「ありがとう、大変感謝する!

 それでは、『氷雪魔術師団』に命令する、この新生ルドヴィーク城にて籠城戦に備え準備を整え、当面敵の猛攻を防ぐ手伝いをし、反撃の時に各々の最大魔力を統合し敵に戦術級魔法『コキュートス』を展開せよ!」

 と命令され、

 「「「ハッ、命令受諾致しました!」」」

 ヒルダ嬢以下氷雪魔術師団は片膝を着いたまま命令を受諾した。

 

 8月5日

 

 此の日、王都からアロイス王国とアラム聖国の連合軍が、此処新生ルドヴィーク城に進発した。

 その合計兵力は30万人、アロイス王国5万、アラム聖国25万という内訳で、王都に10万が残る様だ。

 我等空軍の偵察隊は、『銃』の射程距離では届かない上空から、望遠用の魔道具でつぶさに偵察する。

 アロイス王国は、重装な装甲の騎馬と歩兵を主軸にしており、軽装な兵士もタワーシールドを背中に背負ってる事から、かなり防御主体な軍である。

 それに比べるとアラム聖国は、かなり軽装である。

 東方教会で『聖徒』と呼ばれる存在で、西方教会の『教徒』と響きは似ているが、まるで別種の存在の様だ、先ず全員が白い仮面をしていて、白い修道服の様な服を着ている。

 そして肩には例の『銃』を装備していて、腰には剣を差している。

 殆ど全ての聖徒が同じ格好で、個人の区別が外見からは全くつかない。

 そして双方の軍の真ん中辺りに、大きな魔道具が馬に引かれている。

 恐らく此れが『漆黒』の情報に有った、魔法防御シールド発生魔道具だろう。

 かなり大きく、高さ2メートル横3メートルの円筒形で、数は30基有り1基で1万人を其々包み込めるのだろう。

 軍の後方には、アラン様が『大砲』、『野砲』と呼んでいた金属の塊が約500砲存在していた。

 更に後方には、大量の補給品と食料を運ぶ輜重隊が延々と続いている。

 かなりゆっくりとした行軍だが、魔法防御シールド発生魔道具や大砲の想定される重量は、相当な物なので仕方がないのだろう。

 

 8月10日

 

 此の日の朝、新生ルドヴィーク城の目の前にアロイス王国とアラム聖国の連合軍が現れ、そのまま攻城陣地設営を開始した。

 此の日迄に、幾度か機動軍と空軍は牽制の為出撃し、魔法攻撃を其々の軍に加えたのだが、例の魔法防御シールド発生魔道具は、行軍中にも発動出来る様で魔法を尽く防いで見せた。

 だが、逆にワイバーンに持たせて落としたただの岩は、魔法防御シールドをアッサリと貫通していたので、その辺に攻略の決め手が有りそうだ。

 攻城戦の割に従来の、破城槌やカタパルト他にもバリスタや井闌車等は見当たらず、代わりに『大砲』と『野砲』用の土台を工兵と覚しき者達が一心不乱に作っている。

 その500門に及ぶ砲列は、籠城側としてはひたすら不気味に映る。

 午前中を攻城陣地設営に費やし、アロイス王国とアラム聖国の連合軍の指揮官と思われる人物が拡声魔道具を使い、籠城側に向い呼びかけて来た。

 

 「籠城する逆徒に告げる!

 我は、お前達逆徒を征討する為に来たアロイス王国軍務大臣ロイスである!

 即刻、城を明け渡し首謀者達を引き渡せ、そうすればその他の者共には、穏便な措置を取る様に、ロートリゲン陛下に口添えしてやっても良い。

 見ての通り、城は既にアロイス王国とアラム聖国の計50万の連合軍によって、十重二十重に取り囲んでおり更に最先端の兵器がお前達を狙っている。

 もう勝負は着いておる、愚かな考えは捨て我等の軍門に下るが良い!」

 と型通りの口上を偉そうに喋った。

 

 それに対しクレリア姫様は、巨大な立体プロジェクターを城の上空に映し出され返答した。

 

 「我こそは、正統なるこの国の後継者!

 スターヴェーク王国王女『クレリア・スターヴァイン』である!

 軍務大臣ロイス!

 よくも逆徒なぞと我等を称してくれたな!

 お前達こそ逆徒と称されるに相応しい悪逆の徒よ!

 そもそもお主こそが、スターヴェーク王国の軍務大臣であったのに謀反を企て、ロートリゲン・アゴスティーニ侯爵を奉り上げて国王にし、自らが権力を得た極悪非道の徒である!

 天地人此れを許さず、『女神ルミナス』の照覧されるこの戦場で討ち取ってやるから、首を洗って待って居るが良い!」

 

 と気持ちの良い啖呵を切られた。

 その啖呵に怒ったのか、ロイスは、

 

 「良くぞ吠えた、亡国の愚かな姫よ!

 貴様には、163年に及ぶアロイス王国のスターヴェーク王国への忍従と苦難の歴史を、罪科として拷問してやるから覚悟せよ!」

 

 と激昂した声で返して来た。

 

 そしてその言葉が終わり数秒後に、割れんばかりの銃声と砲音が戦場を支配した。

 此れが、ルドヴィーク城籠城戦の最初の砲火であった。

 

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