人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
8月15日
これ迄の5日間、ほぼ同じ内容の籠城戦が繰り広げられていた。
朝食の炊煙が早朝に上がり、それが終わると朝一番の号砲と共に、アロイス王国とアラム聖国の連合軍側から大砲と野砲の一斉砲火が始まり、散発的に銃声が上がり城壁上の兵士を狙う、そして夕暮れと共に砲火と銃声が静まり、そのまま夕食の炊煙が上がり篝火を煌々と焚いて交代で休むという、まるでルーチンワークの様な繰り返しだ。
アロイス王国とアラム聖国の連合軍は夜襲を警戒しいるが、我等はアラン様と数人が探知魔法を使えるので、極度の警戒はしていない。
夜、作戦会議室で明日の戦闘行動の練り直しが行われた。
ほぼ予定通り、アロイス王国とアラム聖国の連合軍は大砲と野砲そして銃で城攻めをしてくれ、城壁はその都度覆っている土魔法による土壁を壊されるが、すぐさま土魔法を掛け直し元に戻す事で損害は無い。
しかし、此方が牽制の空軍による落石攻撃や投石機の攻撃等の、昔ながらの攻撃以外の魔法攻撃は、魔法防御シールド発生魔道具で完璧に防がれている。
一種の膠着状態だが、此れは想定通りなので我等に驚きは無いが、アロイス王国とアラム聖国の連合軍側はこんなにバカスカ攻撃して置いて、弾薬や砲弾は尽きないか不安では無いのだろうか、『漆黒』の情報からそんなに備蓄している補給品は無い筈なのだが、まさか王都との補給線を我等が襲わないとでも思っているのか?或いは、補給線を絶対に断たれないという保証があるのか?会議でも其処に疑問が出て、其れへの対処作戦を幾つか考案された。
そして明日の大攻勢に向けての最後の確認が行われ、何時もの戦闘時に装備する倍の魔石ケースを、其々予備として持ち、長時間の戦闘に備えた。
8月16日
朝、これ迄と同じく大砲と野砲の一斉砲火が始まったが、敢えて城壁が壊れても土魔法で直さないでいると、アロイス王国とアラム聖国の連合軍側も何時もと違う事に気づいたのか、様子を見ていたが、チャンスと考えたらしく城壁の壊れた箇所に集中攻撃を仕掛け始めた。
そして城壁の一部が完全に崩れ去り、城内が見えて来たタイミングで、アロイス王国とアラム聖国の連合軍は砲撃陣地から兵士を出し、崩れた城壁に向かわせ始めた。
そのタイミングで、城の戦闘指揮をアラン様から委任されたクレリア姫様が、命令を発した。
「第1段階、『ヴァルキリー・ジャベリン』全カタパルトで投擲せよ!」
次の瞬間、カタパルトに装填されていた、『ヴァルキリー・ジャベリン』が次々と魔法防御シールド発生魔道具を目掛け投擲された。
『ヴァルキリー・ジャベリン』・・・・ドラゴンランスと同じく、魔法による障壁を貫く処置を施されており、その長さは5メートルに及ぶ。ドラゴンランスと違う点は封入されたサンダーの魔法が常時、貫いた対象に流され続けるという点だ。
魔法防御シールド発生魔道具は、全力で魔法防御シールドを張っていた様だが、凄まじい勢いで投擲された『ヴァルキリー・ジャベリン』は、簡単に魔法防御シールドを貫き壊していく。
最後の魔法防御シールド発生魔道具が壊れた段階で、クレリア姫様は次の命令を発した。
「第2段階、戦術級魔法『コキュートス』全力展開!」
満を持して、『ヒルダ嬢』と精鋭の『氷雪魔術師団』30名が無事な城壁に立ち、『フェンリル』とその周囲に設置した魔導砲に魔導線を通して、氷雪魔法に特化した魔法力を届け続ける。
十分に充填出来たと判断した『フェンリル』は、新生ルドヴィーク城の一番高い所に設営した舞台に飛び上がり、
「ウオオオオオオーン!!!」
と吠えた。
そのタイミングに魔導砲から、アロイス王国とアラム聖国の連合軍の上空にの一点に、氷雪魔法力そのものを発射した。
そして『ヒルダ嬢』が集中して『フェンリル』と共に唱えた。
「「戦術級魔法『コキュートス』発動!!」」
すると、アロイス王国とアラム聖国の連合軍全体を覆うように暗灰色の雲が広がり、凍えるブリザードが全てを包み込む様に吹き荒び始め、あっという間にアロイス王国とアラム聖国の連合軍は、吹き荒ぶブリザードで白く覆われた。
戦術級魔法『コキュートス』・・・・本来の冷却魔法『アイス・クラウド』は敵1部隊を、ブリザードを伴う雲で覆い、行動不能に陥らせる魔法だが、魔導砲で氷雪魔法力を極大化し『フェンリル』と『ヒルダ嬢』が範囲指定し、軍団単位で行動不能に陥らせる事が可能だが、今回は銃や大砲等の爆発燃焼が必要な兵器の無力化を主眼にし、範囲を極大化し全軍の爆発燃焼兵器を使用不能にした。
散発的に上がっていた、銃声と砲火が完全に止んだと見たクレリア姫様は最後の命令を発した。
「第3段階、全門開放!
『第一軍・第二軍・機動軍』は全力機動戦にて、敵の砲撃陣地を殲滅!
そして『総帥府軍』は破壊された城壁前に展開し、防御戦に移行、『義勇軍』は城壁上からバズーカ砲で『総帥府軍』を援護せよ」
と号令され、全軍が、
「「「「「オオオオオオーーーー!!!」」」」」
と応じる怒号を発し、行動を開始した。
一つはセリーナ団長が率いる機動軍半分と後続は第一軍で、北門から軍団魔法『イフリート』で、寒さ対策をして、迂回機動し砲撃陣地を破壊して行く。
もう一つはシャロン副団長が率いる機動軍半分と後続は第二軍で、南門から軍団魔法『イフリート』で、寒さ対策をして部隊に別れ、壊れた魔法防御シールド発生魔道具を接収し敵退却路を断つべく行軍する。
其々が、高度に連携された行軍をしながら、アロイス王国とアラム聖国の連合軍を蹂躙して行く。
如何に気温が致死しないレベルに抑え、兵器のみを使えない様にしたとは云え、極低気温に敵軍が晒されたのは事実で有り、特に重武装だったアロイス王国軍は冷却された、金属製の武具が肌に張り付き、凍傷を負う兵士が続出し、まともに戦える兵士は殆ど居ない。
そんな中、アラム聖国軍は軽装で有ったが為、防具の所為で行動不能にはなっていないが、何故か型通りの動きしかせず、まるで寒さを感じていないかの様だ。
防御戦をしている『総帥府軍』は、これまで使用出来なかった恨みを晴らすかの様に、敵に対し遠慮なく遠距離から魔法攻撃をし、敵は接近する事すら出来なく盾でひたすら防御していたが、城壁上からバズーカ砲の強力な魔法攻撃を受け、盾を破壊される事になり早々に退却し始め、その背中に向かってエアバレット等の足止めに向いた魔法が放たれ、次々と拘束し戦争捕虜として捕らえて行く。
どうやら、この時点で地上でのルドヴィーク城籠城戦は決着した。
そして其の頃、我等空軍とアラン様の乗るグローリア殿は、今迄で最強の敵と凄まじい戦いを繰り広げていた。