人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
8月16日(中編)
敵の補給路を遮断して同時に、退却路も無くす為に我等空軍とアラン様の乗るグローリア殿は、ファーン侯爵率いるベルタ王国国軍3万を護衛しながら、王都に向かう主要道路の上空を飛行していた。
このベルタ王国国軍3万は、戦争捕虜の護送と補給路の確保を行い、予め新生ルドヴィーク城に入らず迂回行軍して敵の補給路を遮断し、敵軍の継戦能力を奪う為に行軍していた。
我等空軍は、その護衛と不審な敵の意図を探る為、王都への偵察も兼ねて共に行軍して来た。
丁度、新生ルドヴィーク城と王都との中間地点の辺りで、アラン様が全軍に命令を発した。
「全軍行軍停止!
王都から来た大規模な補給部隊と、その護衛と見られる軍団が此処から10キロメートル先まで行軍してきた。
凡そ、合わせて5万に上る軍勢だ。
そして、其れとは別に超高空に巨大な存在が、アラム聖国の方向からやって来つつ有る。
その大きさとスピードから、この存在に対して対応出来るのは、グローリアと空軍の大人のワイバーンだけと考えられる。
残りの空軍とベルタ王国国軍は、補給部隊とその護衛と見られる軍団合わせて5万を、この主要道路で陣を張り迎え撃ってくれ、それでは全軍行動開始!」
その命令に従い、其々が行動を開始し、ファーン侯爵率いるベルタ王国国軍3万は、カイン殿のドリルバイクを先頭に続いて重装騎兵隊が並び魚鱗の陣を構築し、その上空にはベックとトール達8人の隊長が横に広く子供ワイバーン部隊を展開させた。
その様子を確認した後、グローリア殿と我等空軍は3000メートル級の山脈を越えて来る巨大な存在に対処するべく、全員が地上軍が展開する軍団魔法『オーディン』を其々展開し、大空を上昇して行った。
遠い空に、かなりの速度でやって来る存在が徐々に見え始め、望遠の魔道具で確認すると、全長約50メートルの大きさの首を2つ持つ灰色の巨大なドラゴンが飛んで来るのが確認された。
アラン様が、
「まさかとは思っていたが、姿から確認出来た。
奴の名は『双頭の暴虐竜ザッハーク』、その昔大陸の中央に有った大国を支配し、周辺各国を荒らし回り暴虐の限りを尽くした存在だ。
西方教会には、奴の姿と能力に関する文献が残っており、奴が暴れた所為でドラゴンと人間の相互交流が失われ、現在に至る経緯も記されていた。」
と説明してくれた。
グローリア殿が、
「それじゃあ、あいつのせいでドラゴンと人間は、仲が悪くなっちゃたんですか?」
と尋ねられ、アラン様は、
「そうだ。
だがそのあまりの暴虐に、他のドラゴンと人間は共に立ち上がり、ドラゴン50頭と人間50万人の犠牲を払い、奴は倒された筈なのだ。
しかし、如何なる手段かは判らないが奴は復活し、アラム聖国の走狗として我等に向かって来ている。
戦うしか無い!
グローリア及び空軍は全力戦闘用意!
今迄の様な手加減をした攻撃は、一切不要だ!
奴は、此の場で確実に殺さなければ、どの様な災厄をこの世に振り撒くか想像も出来ない!
必ず殺すぞ!」
と凄まじい闘気を込められた命令が下された!
我等は今迄戦争の際、敵であってもなるべく殺さない様に手加減をして来たが、この『双頭の暴虐竜ザッハーク』は、とてもでは無いが手加減など出来ず、其の様な事を考えていたら直ぐに死んでしまいそうだ。
グローリア殿とワイバーン達は、その装備するオリハルコンの武装に、最大限の防御シールドを掛けて『双頭の暴虐竜ザッハーク』目掛け、空を遥かに掛けた。
我等の存在に気づいたザッハークは、
「グギャギャギャギャギャーーーー!!」
と吠え、我等の居る高さまで高空から降りてきて、2つの首を大きく膨らませた。
次の瞬間、ザッハークは広大な範囲に黒いブレスを吐きまくった。
アラン様が、
「アシッド(腐食)ブレスだ避けろ!」
との指示を出されたので、全軍大きくブレスの届かない場所まで退避した。
「各個に火球攻撃!」
とのアラン様からの指示が飛び、全軍遠距離からの火球を連射しザッハークに撃ち込んだ!
しかし、ザッハークに届く遥か手前で火球は掻き消す様に消滅した。
やはり、防御手段を持っている様だ、あの様に巨大な体躯の為此方からしたら巨大な的の様な物だ、必ず以前の巨人の様に防御手段を講じていると想定していた。
アラン様もそう考えていた様で、
「軍団魔法『ファイアーサイクロン』を仕掛ける、グローリアの周りに集まれ!」
と命令された。
全軍集結し、グローリア殿が放つ『ファイアーブレス』に合わせアラン様が風魔法「トルネード」を融合させ更にワイバーンは『火球』、竜騎士は『エアーカッター』を其の周りに纏わせる事で威力を高め、ザッハーク目掛け攻撃した。
ザッハークはそれに対して、灰色の全身から瘴気を吹き出し対抗する。
軍団魔法『ファイアーサイクロン』は瘴気を焼き尽くす事には成功したが、やはりザッハークに届く手前で掻き消す様に消滅した。
遠距離からの魔法では無理か、と我等全員が感じて接近戦を考えドラゴンランスを構え始めると、ザッハークは、上空に双頭を向け何やら吠え始めた。
「まさか竜語魔法?!
そんな・・・・今では、失伝しているのに!」
とグローリア殿が驚かれている。
そしてザッハークの上に巨大な魔法陣が展開された。
その魔法陣が、光り輝くと魔法陣の中から次々と現れるものが有った。
其れは軍隊での魔物の種類に関する講座で学んだ、『フライング・ワーム』という全長20メートルの蛇の様な長い胴体を持つワームの一種で、平べったい体の横に付いている小さな翼で方向を変え、体をくねらせながら飛ぶ魔物だ。
その魔物が15匹召喚され、我々空軍と対峙した。
アラン様は、
「俺とグローリアがザッハークの相手をする、空軍はワームの相手をせよ!
恐らく其奴らには魔法が効く、軍団魔法で以って殲滅してやれ!」
と命令された。
「ハッ!了解しました!」
と返事をしながら、自分はアラン様が『俺』と自身を呼ばれた事で、アラン様が本気になられた事が判ったが、それと同時にそれ程アラン様とグローリア殿も余裕が無い事を悟り、一刻も早くこのフライング・ワームどもを倒し、アラン様の援護に入らなければならないと覚悟を決めた。