人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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61. 9月の日記①(2年目)

 9月1日

 

 我等『アロイス王国討伐軍』と元アラム聖国軍合わせて35万の軍勢は、王都の外周に到着し王都攻略の為の布陣を開始した。

 いよいよか、と自分の胸中にこれ迄の様々な出来事が去来し、その様々な場面が思い出される。

 国を追い出され失意の中、必死にクレリア姫様を仲間と探し回り、か細い手掛かりを得てゴタニアでクレリア姫様とアラン様達に出会えた。

 そしてクラン・シャイニングスターの一員としての楽しい日々、グローリア殿との出会いや王都での活躍、魔の大樹海に出来たコリント領での暮らし、相棒のガイとの出会いと訓練、空軍としての色々な任務、そして家族とのコリント領での再会、次々に起こる戦乱に空軍の隊長として従軍し激しい戦闘を行ってきた。

 そんな中でも新たな出会いで出来た仲間と、親友と呼べる友達、アラン様とクレリア姫様の尽力で発展して行くコリント領、そして宿敵アロイス王国との激闘。

 其の果てに、とうとう我等は、敵の首魁の居る王都まで辿り着いた。

 後もう少しで、反逆者ロートリゲン・アゴスティーニを討ち取れる。

 そう考えると、早く攻め入りたい思いで胸が一杯になった。

 暫くして布陣が完成し、十重二十重に王都を囲い込んだ。

 閉ざされた王都の城門に向かう形で、作戦指揮車の上でクレリア姫様とアラン様が並び、立体プロジェクターを上空に最大の大きさで映し出し、王都中に聞こえる大きさの音量に拡声しクレリア姫様が、王都民に呼びかけた。

 

 「王都民に告げる!

 我は元スターヴェーク王国第一王女にして、正統なスターヴァイン王家の後継者たる『クレリア・スターヴァイン』其の人である!

 我は不当にもスターヴェーク王国を簒奪し、スターヴェーク王国国民に塗炭の苦しみを与え、他国にも侵攻する事で他国の民にまで被害を与えた、アロイス王国国王を僭称するロートリゲン・アゴスティーニと元スターヴェーク王国軍務大臣ロイス、そしてそれに与する貴族達を討伐する為にやって来た。

 その際に王都民に被害が及ぶ事を我は憂いている。

 王都民に於いては、この王都攻略戦の間は外出せず、自宅に閉じ込もっていてもらいたい。

 それ程時間は掛からずに終わらせるから、我慢して欲しい!」

 

 と訴えられた。

 すると、閉ざされた王都の城門上に人が現れ、手に短杖(ワンド)を持って何やら吠えて来た。

 

 「何を偉そうに綺麗事を抜かす、薄汚い亡国の王女よ!

 お前達こそ、今から討伐してやるから覚悟する事だ!」

 

 と偉そうに言い放つ、貴族らしき姿をした人が喚いている。

 その姿を見て、クレリア姫様は、

 

 「おやっ、誰かと思えばスターヴェーク王国を裏切り、先のルドヴィーク城籠城戦で形勢不利と見たら、いち早く戦場から逃げ出した、元スターヴェーク王国軍務大臣ロイスではないか、どこに逃げたか?と思っていたが、王都に逃げ込んでいたのか、引導を渡してやる故其処で首を洗って待っておれ。」

 

 と見事に敵の煽りに対して煽り返された。

 そのクレリア姫様に対して、売国奴ロイスは嫌な笑みを浮かべほざいた。

 

 「全く愚かな亡国の王女だ、自分が敵に囲まれている事に気付いていないとは!」

 

 と態とらしく嘆いて見せ、手に持つ短杖を振るった。

 すると、城壁上で一斉に兵士が立ち上がった、どうやら格好から見て王都に残っていた、アラム聖国の兵士らしい。

 

 「さあ、敵方に使われているアラム聖国の兵士よ、我が命に従い周りに居る敵軍に攻撃を仕掛けよ!」

 

 と再び手に持つ短杖を振るい、王都を取り囲む様に布陣している元アラム聖国の兵士に命令した。

 しかし、元アラム聖国の兵士は微動だにしない。

 其れを見た売国奴ロイスは、先程までの傲慢な様子はどこかに消え、焦った顔をして手に持つ短杖を振るいまくり、

 

 「どうしたのだ聖徒どもよ?!

 この『支配のワンド』に従い、命令を受諾するんだ!」

 

 と気が狂った様に短杖を振り回したが、一向に元アラム聖国の兵士は動かない。

 諦めたのか、肩で息をしながら、城壁上に居るアラム聖国の兵士に、

 

 「仕方ない、F群の聖徒よ、その手に持つ『銃』で眼下にいる敵に対し攻撃するのだ!」

 

 と手に持つ短杖を振るい命令したが、先程と違い城壁上に居るアラム聖国の兵士も命令に従わず、微動だにしなくなった。

 

 此れには売国奴ロイスも、完全に狼狽し、

 

 「な、何故だ?!

 何故、この『支配のワンド』によって絶対服従で有る筈の、聖徒達が命令に従わない?!

 アラム聖国秘蔵の魔道具で有る『支配のワンド』は、どの様な事があろうと聖徒達を完全服従させると、アラム聖国は確約してくれたのに!」

 

 と売国奴ロイスは城壁上でヘナヘナと膝から崩れ落ちた。

 そしてクレリア姫様に代わり、アラン様が立体プロジェクターにアーティファクト『テンプテーション』を手に持ち現れて、

 

 「もう茶番は十分だろう、『漆黒』よ手筈通りに行動せよ!」

 

 と言われ、その命令に従い売国奴ロイスの隣に居る近習に化けていた『漆黒』が、素早く売国奴ロイスを取り押さえ、続いて閉ざされた王都の城門が潜入していた『漆黒』により開け放たれた。

 

 「それでは、粛々として入城せよ!」

 

 とアラン様が命令され、第一軍と第二軍が隊列を揃え王都に入っていく。

 既に『漆黒』により、粗方の王都と王城の重要拠点は抑えて居る。

 極力王都と王都民に被害を与えない様に、予め多数の『漆黒』の精鋭を潜入させていて、其れが功を奏し上手くいった様だ。

 第一軍と第二軍は、『漆黒』により飲料水に混ぜられた強力な『睡眠導入剤』で眠らされた、アロイス王国軍人を次々に拘束し、同時に狼狽して呆然としているアロイス王国貴族も捕らえていく。

 王城も城門を開け放たれていて、次々にアロイス王国関係者を捕らえ、王都外に構築した臨時の捕虜収容所に収容していった。

 すっかり静かになった王城に、アラン様とクレリア姫様そして軍上層部の方々と護衛の親衛隊が入城していった。

 そして、謁見の間である大広間へ入り玉座とその背後に有る、王朝を示す紋章のタペストリーが目に入った。

 クレリア姫様は玉座に真っ直ぐに進まれ、そのまま背後に有るアロイス王国の紋章のタペストリーを睨みつけた。

 

 「消え失せろ!」

 

 と大声で叫ばれ、次の瞬間クレリア姫様の手が伸ばされて『ファイアー』の魔法が、タペストリーに放たれて、瞬く間にアロイス王国の紋章のタペストリーは燃え尽きた。

 その様を見届けて、クレリア姫様は玉座に視点を下げた。

 

 「父上、クレリア帰って参りましたぞ!」

 

 と亡き王に報告され、横にあったが現在は取り除かれている、女王用の玉座の有った跡に向かい、

 

 「母上、クレリアを褒めて下さい!」

 

 と亡き女王に願われ、玉座の横に何時も居られた皇太子の席に向かい、

 

 「兄上、クレリアは頑張りました!」

 

 と亡き皇太子に胸を張って報告された。

 

 そして玉座の有る壇上から下がられ、感慨深げにもう一度玉座を見渡されると、大粒の涙を流され号泣し始められた。

 そしてクレリア姫様を慰めようと、アラン様がクレリア姫様を包むように抱きしめられると、クレリア姫様はアラン様に取り縋り、その胸に顔を埋め更に大声を出されて泣かれた。

 その様子を見ながら、其の場に居た旧スターヴェーク王国出身者も泣き始め、自分も横に居たミーシャと抱き合い一緒に号泣した。

 

 此の日、我々を散々苦しめたアロイス王国は、完全に消滅した。

 

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