人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
9月2日
いち早く王都を陥落させた我等『アロイス王国討伐軍』は、第一軍と機動軍そして義勇軍3万をトレーラー隊に分乗させアラム聖国との国境線に派遣し、第二軍と総帥府軍は元アロイス王国に与していた、新生スターヴェーク王国の西部と南部の貴族の領土に派遣した。
アラム聖国の国境線では、元アロイス王国へのアラム聖国増援軍がやって来る気配が有り、国境線の検問を完全に閉じて臨戦態勢を取り、迎撃体勢を整えた。
西部と南部の貴族の親族達は新生スターヴェーク王国への恭順を拒否したので、第二軍と総帥府軍とで領地の接収と財産の没収を行い、東部と北部の民を無理矢理奴隷としているのでその解放も目的としている。
9月3日
王都民に戒厳令の解除とアロイス王国の崩壊、そして暫定的にベルタ王国総帥のアラン総帥が統治する旨を各所に設置したモニターで発表した。
そしてアロイス王国によって歪められた法令や税制等を全て破却し、新たな法令等が発布されるまで旧スターヴェーク王国の法令に従うようにと全国土に通達した。
9月7日
元アラム聖国軍全軍が新生ルドヴィーク城に到着し、其処で兵士では無くレール敷設作業員として新たな任務を与え、聖水の効果が切れる3週間働かせるそうだ。
その監督には、ファーン侯爵率いるベルタ王国軍が担当し、道路整備やレール敷設用の石材の運搬作業をさせる。
9月15日
アラム聖国との国境線の検問所に、アラム聖国の全権大使が入国許可を求めて来た。
アラン様は、コリント領に居られるアマド陛下に報告し、アラン様にアラム聖国の意図が何処に有るのか?を確認する為に接触し、アラム聖国の全権大使と話して見ようとの事になり、新生スターヴェーク王国の王都でモニター越しに会見する事になった。
9月18日
アラム聖国の全権大使とその副官達、そして護衛の総勢15名が新生スターヴェーク王国の王城に入城し、大会議室でアマド陛下とモニター越しに会見する運びになった。
双方挨拶を交わし、昨今の動乱とその陰で暗躍したアラム聖国の行為をアマド陛下は弾劾なさり、その際に自身が殺されかけて、未だ車椅子生活である事に対しどの様な弁明があるのか?
と問われ、それに対しアラム聖国の全権大使は、
「弁明は無い!
我が国はベルタ王国と宣戦布告して戦争を行った訳でもなく、あくまでもセシリオ王国とアロイス王国そしてヴィリス・バールケ宰相への援軍を出したに過ぎません。
その援軍を、其々の国や人物がどの様に運用したかは、其々が責任を持つべきで我が国は関知しない。
故にこの会見交渉は互いに五分であり、どちらにも相手側を弾劾する権利は無い!」
と堂々と詭弁を弄した。
正直呆れた話しだが、アラム聖国は自国が1億の人口を擁する大国であるが故に、傲慢な態度で上から目線で位攻めをして来た。
それに対しアマド陛下は大いに気分を害され、アラン総帥とベルタ王国宰相ヴェルナー卿に交渉を委ねられモニターから姿を消した。
交渉を委ねられたアラン様は、
「それでは、どの様な用件で交渉したいのか申されて欲しい。」
と用件を尋ねられた。
すると、居丈高にアラム聖国の全権大使は要求して来た。
「此方の要求は、ベルタ王国が戦争捕虜として収容した聖徒30万人と宗教使節団300名の解放、そしてそちらが回収した筈のアーティファクトと魔道具そして各種の兵器の返還である!」
と厚顔無恥にも言い放った。
少々呆れた様子でアラン様は、ヴェルナー卿と目で会話されて返答した。
「とても対等の相手に要求する内容では無いな。
此れでは交渉には成らない、申し訳無いが一旦落ち着かれる事を勧めるので、滞在用の部屋に戻られるが良かろう」
と勧められると、特に異存は無いのかそのまま出て行った。
一旦我等も休憩する為に、解散し休憩所に向かい始めたが、アラム聖国の全権大使の副官と紹介された目付きの異様に鋭い男が廊下で此方を待っていた。
親衛隊がアラン様の前に立ち、警戒体勢に入ると副官が、
「警戒する必要は無いぞ。
俺にアラン総帥を害するつもりは無い。
先程までの茶番には飽き飽きしていたが、それはそちらも同様だろう?
此れより本当の交渉をしたい」
と言ってきたので、アラン様は、
「ふむ、本当の交渉とは興味深いな、だが自分一人だけでは有らぬ疑いを招く、此処に居る2人(自分とカトウを指差し)を同席させるが良いかな?」
と問われ、副官は了承した。
応接室に副管を迎えると、副官は、
「交渉に応じてくれて有り難い。
俺は、アラム聖国の3聖人が1人『カルマ』という、以後見知り置いて貰いたい。
アラン総帥、お主に会えて全て納得がいった。
お主のその表面には一切出さない、信じられない戦闘力!
そして溢れかえらんばかりのカリスマと頭脳!
とてもでは無いが人とは思えない程だ!
今回の戦争への切り札として投入した『双頭の暴虐竜ザッハーク』が、アッサリと討たれた事にアラム聖国上層部は混乱甚だしかったが、こうやってお主の前に立って見ると成程と頷ける」
と『カルマ』殿はウンウンと至極納得がいった様に頷いている。
アラン様は、
「お褒めに預かり光栄だが、それで交渉とは?」
と尋ねられた。
『カルマ』殿は、
「ああ、そうだな。
それでは、交渉というかお主に尋ねるが、其処に居るカトウの求めていた『神人』とは、お主か?」
と自分とカトウ達しか知らない内容を尋ねてきた。
すると、アラン様は暫く黙っていて、逆に尋ねられた。
「・・・・・ザッハークの残された首と、聖徒達を調べて判明したが、アラム聖国の技術の根幹は、『サイヤン帝国』の物か?」
と言った瞬間、ガタッ!と椅子が倒れる程の勢いで『カルマ』は立ち上がり、
「やはり!やはりなのか?!
アラン総帥!お主こそが『アラム聖国の黙示録』に記されている、『天降る天人』なのだな!
ならば全ての疑惑は氷解した。
アラン総帥!
我等は究極的な処では敵では無い。
色々と越えなければならない問題は有るが、我等は協力出来る。」
と興奮しながら、目を血走らせてアラン様に訴えた。
「そうか、やはり『サイヤン帝国』の技術を使用した、複製体(クローンと云うそうだ)だったのだな」
とアラン様は遠い目をしながら呟かれ、
「『カルマ』殿、いつかその『アラム聖国の黙示録』を拝見させて貰いたい」
と言われ、それに対し『カルマ』殿は苦い顔をして答えた。
「それは、大変難しい。
俺は賛成だが、他の聖人と肝心の『法皇』は絶対に許可を出さないだろう。」
と懊悩する様に言った。
「そうか・・・・」
とアラン様は言われ、其れに対し『カルマ』殿は、
「だが、アラン総帥にはいつかアラム聖国の中枢で有る、法王庁地下に眠る『聖なる頭脳』との対面をして貰いたい!
『天降る天人』であるアラン総帥ならば、必ず『聖なる頭脳』の全てを蘇らせてくれる筈だ!」
と勢い込んで言われた。
「自分も非常に興味が有るが『カルマ』殿、此処での会話はお仲間やアラム聖国上層部には明かされない方が御身の為と考える、今後の対処は此の通信機でこのカトウを通して行ってくれ」
と通信機を渡され、依頼され、
「有り難い!
カトウ殿、以降宜しく頼む!」
と『カルマ』殿は答えられ、これ以上時間を掛けると疑われると、大きく頭を下げてそそくさと応接室を出ていかれた。
アラン様は自分とカトウに、
「意外な内容の交渉になったな、偶々事情を知る2人で良かったが知らない者だったら、訳が判らなかっただろう、本当に運が良かった」
と苦笑され、自分とカトウは、
「「当然此処での交渉内容は、他に漏らしません、ご安心を」」
と誓い、アラン様は、
「ああ、宜しく頼む」
と我々2人に頼まれた。