人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

86 / 352
64. 10月の日記①(2年目)

 10月2日

 

 此の日、元アロイス王国を主導してスターヴェーク王国を簒奪した、元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニと、スターヴェーク王国軍務大臣で有りながらスターヴェーク王国を裏切り、国王夫妻と皇太子殿下を王城前の広場にて斬首した、元アロイス王国軍務大臣ロイスの裁判が執り行われた。

 列席するのは、クレリア姫様を始めとした元スターヴェーク王国旧臣の方々と、東部と北部の地方貴族の方々そしてアラン様と軍部上層部だ。

 傍聴席には、この裁判の為に来られたベルタ王国代表として宰相ヴェルナー・ライスター卿、総帥府代表としてビクトール侯爵、そして其々の属僚の方々が傍聴される。

 裁判官と検事は、コリント領で司法と行政分野を養成していた官僚が担当し、スターヴェーク王国旧法に従い裁く事になる。

 裁判官が開廷の宣誓を告げ、早速検事が冒頭陳述を始めた。

 元アロイス王国がスターヴェーク王国を簒奪したそもそもの原因を、様々な資料と聞き取りを南部と西部の貴族と領民から集め精査した内容を開陳した。

 凡そ164年前、スターヴェーク王国が旧アロイス王国を併合したのは武力の行使では無く、旧アロイス王国自身の失政により国家破綻して、その時の王家を貴族達が断罪し貴族位を安堵して貰う条件でスターヴェーク王国に併合して貰ったのだが、貴族達は自分達の領民に対し代々スターヴェーク王国の無理矢理な併合で、旧アロイス王国は滅んだと吹聴し、スターヴェーク王国の東部と北部に比べ、南部と西部の税率が高いのはスターヴェーク王国の所為で有り、実際は貴族が税の上乗せをしていた事実を誤魔化し、南部と西部の平民に東部と北部に対しての憎悪を掻き立てていた事が資料と聞き取りで判り。

 そして今から30年前程から、アラム聖国の策謀により南部と西部の貴族達にスターヴェーク王国に対しての反乱を教唆され、アラム聖国がスターヴェーク王国に対ししばしば攻めてきた時に、軍備の援助と資金の援助を密かに受けて来て、2年前の反乱に繋がった事実も説明された。

 更に東部と北部の地方貴族の中でも利益に転びやすい者を選び、アラム聖国からの軍備の援助と資金の援助をチラつかせ、スターヴェーク王国を裏切らせる事に成功した。

 王城の警備部隊の人員にもそれは行われ、アッサリと王城が陥落した原因は、王城の城門の閂を城内から外されたという事だ。

 

 諸々の反乱に繋がる経緯と状況が説明され、クレリア姫様は顔面を紅潮させながら全て聞き終え、元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニと元アロイス王国軍務大臣ロイスの両名を、今にも掴み掛かりそうな様子で睨まれている。

 そんなクレリア姫様とは対照的に、元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニは顔面蒼白になりながら被告席で俯いている。

 其れとは違い元アロイス王国軍務大臣ロイスは、不貞腐れた様子でただひたすらアラン様を睨み、不満な様子を隠しもしない。

 30分に及ぶ冒頭陳述が済み、被告2人に弁明の機会を与えると、元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニは被告席から進み出て、

 

 「私は騙されていたのだ!

 私は反乱を主導して居らず、全ては其処にいる軍務大臣ロイスがアラム聖国と共謀した事で、私は軍務大臣ロイスとアラム聖国に担がれていただけだ!」

 

 と見苦しく弁明した。

 すると苦々しい様子で、

 

 「何を抜かす!

 お前こそ、率先してスターヴェーク王国に弓引き、王城に踏み入った際には王城の財貨と美術品を独り占めし、同心した貴族達から顰蹙を買っていたではないか!」

 

 と元アロイス王国軍務大臣ロイスが己の主君であった筈の、元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニを口汚く罵った。

 暫く双方の見苦しい罵り合いが続き、列席されている方々と傍聴されている方々がウンザリしていると、業を煮やした裁判官が、クレリア姫様とアラン様そしてヴェルナー・ライスター卿とビクトール侯爵を別室に呼び、このままでは裁判にならないと告げて、準備して置いたアーティファクト『テンプテーション』を両者に使用し、真実を詳らかにし裁判を結審しようと提案され、全員がその提案に賛成したので、裁判の場に戻ると、早速被告の脇にいる警備員に両者を取り押さえさせると、裁判官自らがアーティファクト『テンプテーション』を使用し、其々から真実の供述を引き出した。

 その内容は、冒頭陳述にあった内容を裏付けるもので、結局両者共に私利私欲が反乱の主要な動機で、国民の為でも旧アロイス王国の復仇でも無かった事が明かされた。

 此処まで馬鹿馬鹿しい理由で反乱を起こされたという事実は、この反乱で死んだ方々を冒涜していると思い、ブルブルと体が怒りに震えたが、誰よりも怒っているのはクレリア姫様だと思い直し、心を落ち着けた。

 裁判官が全ての供述を鑑み結審し、

 

 「元アロイス王国国王ロートリゲン・アゴスティーニ並びに元アロイス王国軍務大臣ロイスは、自分自身の私利私欲を満たす為に、スターヴェーク王国への反乱を主導し、アラム聖国の甘い甘言に乗りスターヴェーク王国だけでは無く、ベルタ王国とセシリオ王国の内乱にも介入し、著しい被害を両国に与えた。

 然も其れに対して、些かの謝罪も無く、何一つ負い目にも感じていない。

 よって此の様な人間を、今後生まれ変わるスターヴェーク王国の世に生かす理由は無い。

 直ちに死刑を執行し、これを以って此の様な人間は人の世に居てはならないという、教訓として世に示そう」

 

 と結審した内容をこの裁判の場に居る方々に開陳した。

 そしてこの両者に同心した貴族達も、後日その罪科に応じた刑が執行される事だろう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。