人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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65. 10月の日記②(2年目)

10月4日

 

 「ケニー団長に面会の申し込みが有り、素性を尋ねますと祖父母であるとの可し」

 と空軍の申次衆をしている事務官が知らせてくれたので、まさかと思いながら面談室にミーシャと向かうと、本当に父方母方の両祖父母が勢揃いしている。

 正直な処、王都に住んで居た両祖父母の屋敷は、元アロイス王国によって破却されていて、両祖父母の行方は皆目判らなかったので、てっきりもうこの世には居られないのではと諦めていた。

 両祖父母と抱き合って互いの無事を喜びあい、この2年間の変転を聞かせて貰った。

 王都が、元アロイス王国によって陥落した際にはまだ王都に居たのだが、スターヴェーク王国国王夫妻と皇太子様が斬首され、このままでは元スターヴェーク王国国民は王都に居続けると、如何なる悲劇に合うかも知れないと思い、親戚の居る東部の街に疎開する事にして、その際王城前の広場にて晒されていたスターヴェーク王国国王夫妻と皇太子様の御髪を、其々一房づつ警備員の隙を突いて持ち去り、この度クレリア姫様がスターヴェーク王国を復活されたと聞きつけ、街にやって来た物流用のトレーラー部隊の隊長らしき『ホシ』という人物に事情を話したら、2つ返事で自分達を王都まで連れてきてくれたそうだ。

 後で『ホシ』殿には、『ホシ』殿の大好物の『大吟醸』と、オスロ特産の海産物のツマミを持ってお礼に行こうと考えていると、両祖父母が興味深そうにミーシャを見ているのに気がついた。

 両祖母が、

 

 「あんたさんは、ケニー坊の良い人かね?」

 

 と突然とんでもない事をミーシャに聞いて来た。

 思わず口にしていた紅茶を吹き出しかけて咽っていると、ミーシャが、

 

 「私は、そうなりたいと常々アピールして居るんですけど、中々ケニー団長は気付いてくれないんですよ」

 

 と更にとんでもない事を両祖父母に申告したので、「え?!」とミーシャに振り向くと、ニコニコと微笑まれたので、驚き過ぎて目が点になってしまった。

 

 「なんと、こんな美人さん自身に告白させるとは、ケニー坊も不甲斐ない!

 男なら自分にアプローチしている女性には、いち早く気付いて上げるのが女性への気配りというもんじゃろうが!」

 

 と両祖父から叱られてしまった。

 考えてみると、自分はミーシャの事を大事な同僚であると思い過ぎ、恋愛対象として考えまいと意識し過ぎていて、ミーシャからのアプローチを意図的に無視していたのかも知れない。

 そう考えると自分は如何にも不誠実だったと考え、ミーシャに、

 

 「ミーシャ、今まで気付いてやれなくて、本当にすまない!

 これまでひたすらスターヴェーク王国復活の為に、軍務に邁進していたので自分の事を二の次にしていたんだ。

 だけど、この通りスターヴェーク王国は、見事にクレリア姫様とアラン様のお陰で復活出来た。

 もう自分の事を考えても良い筈だ。

 ミーシャ、武骨で固すぎると妹に批判されてばかりいる俺だが、良ければ恋人として付き合ってくれないだろうか?」

 

 と自分に出来る精一杯の告白をしたら、

 

 「ハイッ!」

 

 と元気良くミーシャは返事してくれて、涙を浮かべている。

 直ぐに両祖母が、ミーシャに歩み寄り「良かったね」と慰めている。

 そして自分には、両祖父が歩み寄り両肩に手を其々乗せて、

 

 「ケニー坊にしては良くやったが、どうせならそのままプロポーズしてしまえば良かったのに・・・」

 

 と言ってきたが、

 

 「そんな無責任に一足飛びで物事は進めませんよ、先ずミーシャのご両親の眠るお墓に報告し、クレリア姫様とアラン様から許可を貰い、同僚達にも報告してからですよ」

 

 と説明すると、両祖父母は呆れた様な顔をして、

 

 「・・・・・順番が間違えてると思うが、2人が納得しているのなら良いが、ミーシャさん本当に良いのかい?」

 

 とミーシャに確認する様に聞いたら、

 

 「大丈夫ですよ、私もこれまで通りケニー団長と共に、軍務を果たしていくつもりですから、もっと状況が落ち着いたらプロポーズしてくれると信じています!」

 

 と力強くミーシャが返事をしたので、

 

 「なんとも頼もしい返事じゃ!

 じゃがここにいる、爺と婆にとっては今から事実上の孫の嫁じゃから、そのつもりで接しておくれ」

 

 と両祖母とミーシャは手を取り合い、互いを確かめる様に抱きしめあった。

 

 その後、自分とミーシャはクレリア姫様とアラン様にアポイントを取り、数時間後に両祖父母を連れて会議室で会談する事になった。

 警備員から入室許可を貰い、手順に従いながら全員で入室し、クレリア姫様の許可に従い所定の席に着いた。

 クレリア姫様が、

 

 「どうかケニー団長の両祖父母には、楽にして貰いたい。

 なんといっても貴方方は、我の大事な家族の遺物である御髪を、あの混乱の最中に持ち出して、今迄大切に保管して頂いていてくれたのだ。

 此方は最上級のもてなしを提示したのだが、ケニー団長から拒否されてこんな簡素な面談になってしまった。

 だが貴方方に対する此のクレリアの感謝の念は、些かも変わらぬ本当に有難う」

 

 と両祖父母に、クレリア姫様とアラン様は頭を下げられたので、自分とミーシャそして両祖父母は恐縮し、其の場で土下座してしまった。

 クレリア姫様とアラン様が頭を上げられたので、自分達も土下座を止めて改めて席に着き、遺物である御髪の入った3つの箱を自分がクレリア姫様に献上した。

 クレリア姫様は、厳かな様子で其々の箱表面に書いてある名前と、中に入っていた御髪を確認され、暫く瞑目されて故人を悼まれた。

 そしてクレリア姫様は、

 

 「本当に有難う。

 元アロイス王国は、我の家族を斬首して王城前の広場にて首を晒した後に、その後首と体は広場で燃やし尽くし、灰はゴミと一緒に捨ててしまったそうだ。

 とても王家に対しての正当な扱いとは云えない蛮行であり、お陰で葬儀すらまともに出来なかったが、これで当たり前の葬儀が行える、どうか貴方方も葬儀には出席して貰いたい」

 

 と両祖父母に頼まれたので、両祖父母は、

 

 「「ありがとうございます、葬儀には是非出席させて頂きます!」」

 

 と快く返答した。

 

 「しかし、これだけの大殊勲に対し葬儀への出席だけとは、あまりに礼を失するというもの、貴方方には何らかの形で報いたいと思う。

 何か望む願いは、ないだろうか?」

 

 と問われたので、両祖父母は、

 

 「実は1つ、クレリア姫様とアラン様にお願いがございます!」

 

 と答えたので、クレリア姫様は「何なりと申すが良い」と両祖父母に頷かれた。

 すると両祖父母は、自分とミーシャを指差し、

 

 「どうかクレリア姫様とアラン様、ここにいる2人の婚約を認めて頂き、将来結婚する事も認めて頂けないでしょうか?」

 

 と願った。

 さしものクレリア姫様とアラン様も予想していた願いの内容と、全く違う願いに驚かれた様だが、状況を徐々に把握されると、お二人共笑顔になられ、自分とミーシャを祝福してくれた。

 特にクレリア姫様の喜び様は大変大きく、結婚する際は是非自分も参加したいと言われ、まだまだ先の話しですし、出来ればクレリア姫様とアラン様のご結婚の後で、自分達は目立たない形でしたいと言上したら、クレリア姫様は顔を真っ赤に染められ俯いてしまい、アラン様は当惑してしまった。

 出過ぎた物言いだったかと思っていると、ミーシャが、

 

 「ケニー団長の言う通りですよ!

 コリント領に居る領民や新生スターヴェーク王国の民も、今や遅しとお二人の結婚を望んでいます!

 どうか一刻も早く全ての国民の願いである、お二人の結婚を成してくれる事をこのミーシャからもお願いします!」

 

 とミーシャが頭を下げ、続いて自分と両祖父母も頭を下げた。

 すると、当惑していたアラン様が、

 

 「そうだな、ケニー団長も男の責任を取ろうとしているのに、自分だけがクレリアに責任を取らないのは国民に示しが着かない。

 近い内に皆と相談し、諸々の用件を片付けてから、話しを進めよう」

 

 とアラン様は事実上の結婚宣言をされた。

 クレリア姫様は感極まったのか、大いに涙を流され、横にいたアラン様がよしよしと抱きしめて上げられたので、お二人の邪魔になると我々は退室の挨拶をして、そそくさと部屋を出た。

 思いがけず、お二人のご結婚を促した形になったが、このご結婚は全ての国民の悲願であり、きっと両祖父母が持ってきた、クレリア姫様のご家族の遺髪がこのご結婚を促したというのが恐らく真実なのだろうと、ミーシャと両祖父母に話しきっとその通りだと同意してくれた。

 

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