人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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閑話㉓「カレンちゃん日記」⑬(カレンちゃん、ケッちゃんと出会う)

 10月1日

 

 サラちゃんのご両親が経営するレストラン『豊穣』がオープンした。

 『学校』が終わったら寄ってみようとみんなで相談し、早速放課後に乗り合い馬車でフードコートに向かうと、なんとレストラン『豊穣』から並んでいる長蛇の列が出来ているの。

 みんなで唖然としてたら、予想してたらしいサラちゃんが、裏口から3階にある自宅の自分の部屋に私達を通してくれて、予め用意してたらしい『プリン』を全員に振る舞ってくれた。

 「「「アラン様の『プリン』と同じ味だ!」」」

 と、テオくんとエラちゃんと私は、思わずハモっちゃったんだけど、他の友達達は始めて食べた味に呆然としている。

 まあ、そうだよね、とみんなが驚いている理由は良く判る。

 しかし、ここまでアラン様とソックリの味を出せるとは、サラちゃんのお父さんの『バース』さんは、尋常な料理人では絶対に無い!

 サラちゃんは、窓越しにレストラン『豊穣』に並ぶ長蛇の列を見ながら、

 「オープンする前から、コリント領上層部の人達始め、色んな人からの予約が一杯入ってたから、多分こうなるだろうなとは、予想してたよ(タメ息)

 まあ、明日になれば少しは落ち着くし、雇った人達も少しずつお客さんを上手くさばける様になるから、来週にはこんなに並ばないよ」

 とタメ息まじりに、言ってくれた。

 すると、テルちゃんが、

 「このお菓子は、他のお菓子と違いすぎるよ!

 お菓子でこれなら、料理も絶対に食べたくなるもん!

 しばらくは、こんな風にコリント領の人達、食べたくて並ぶんじゃないかな?」

 と興奮して、サラちゃんに答えた。

 「・・・うーん、その可能性もあるかも・・・」

 とサラちゃんも考えながら言い、前から約束していたカー君とバンちゃんに合わせる為に、私の家にサラちゃんと一緒に帰宅した。

 家に着いて、カー君とバンちゃんを連れ出して近所に出来た公園内の公会堂に向かう。

 最近この公会堂では、大型のモニターで色んな動画が公開されていて、ルミナス教の語る『女神ルミナス』の神話や、以前行われたセシリオ王国との戦争の子供が見て良い動画が見れる様になってるの。

 カー君とバンちゃんも、私達と一緒に大人しく動画を見ていて、休憩中にサラちゃんがお土産として持ってきた、『ラスク』を頂いたら2匹ともとっても喜んで、例のルビー(紅玉)とサファイア(蒼玉)をサラちゃんの手元に生み出したので、サラちゃんは驚いたけど私がカー君とバンちゃんがサラちゃんを気に入った証拠だよ、と説明するとスゴク喜んでくれた。

 「また、何かお菓子を持ってくるね」

 と、カー君とバンちゃんに話し掛け、カー君とバンちゃんも理解した様で額の宝石をキラキラと輝かせている、キレイだねえとみんなで一緒に感心しちゃった。

 

 10月7日

 

 学校から帰宅して、友達と遊ぼうと出かける用意をしてたら、カー君とバンちゃんが部屋にやって来て何かを訴えるように、額の宝石をキラキラと輝かせている。

 こういう時は、カー君とバンちゃんが私に自分達の気持ちを教えてるんだといことは、これまでの付き合いで判ってる。

 「どうしたの?」

 と聞くと、付いて来て欲しいのか、玄関に向かい外出時に入ってもらうバスケットに自ら入っちゃった。

 これは何かある、と思ってバスケットを抱えて外に出て、どっちに行けばいいか、方向を鳴き声の「クゥー」という声で答えてもらい、幾つかの辻を曲がり冒険者の人たちが、ドーム外に出る時に使うゲートまで来たの。

 「ここ?」

 とカー君とバンちゃんに聞くと、カー君とバンちゃんがバスケットから出て、ちょっと離れた路地に向かって行ったの、慌てて追いかけて行くと行き止まりに着いちゃった。

 「本当にここ?」

 とカー君とバンちゃんにもう一度聞くと、

 「クゥーーー」

 と何時もより長くカー君とバンちゃんが鳴いたの。

 すると、行き止まりが消えて小さいけど広場が現れたんで、ビックリしてたら、

 「お初にお目に掛かる。

 お主が、旧友で有るカーバンクル夫妻のご主人で有るな?」

 と声を掛けられて振り向くと、シルクハットと燕尾服を着た猫が流暢に挨拶している。

 「あなたは、どなた?」

 と聞くと、

 「此れは吾輩ともあろう者が、失礼した。

 吾輩はケットシー128世である、あだ名はまだ無い」

 と自己紹介してくれたから、

 「私はカレン。

 中等部の『学校』に通っている学生だよ」

 と私も自己紹介したの。

 すると、ケットシー128世さんは、

 「『学校』とは、どの様な物かな?」

 と聞かれたから、

 「『学校』というのは、このコリント領の子供達が、大人になる為に必要な学習内容を教えてくれる、とっても良いところだよ」

 と教えてあげると、

 「ほほう、其れはとても興味深い。

 例えば吾輩が学びたいと希望したら、教えて頂けるのかな?」

 と聞かれたから、

 「うーん、どうかな?

 私偉い人じゃないから、判らないよ」

 と答えたら、ケットシー128世さんは、

 「偉い人とやらに会うには、どうすれば良いかな?」

 と尋ねられたので、

 「『学校』に入れるかどうかだけを聞くの?」

 と尋ね返したら、

 「否、『学校』の事は二の次で、他にもっと重大な用件が有り、是非此の地で一番偉い人に会わせて頂きたい!」

 と願われちゃった。

 うーん、確かアラン様は、今ベルタ王国の王都に向かっている筈だけど、クレリア姫様は王都に向かわずコリント領の留守を預かってるから、何時ものビルでお仕事をしている筈だよね。

 「一番偉い人かどうか、私には判らないけど、とっても偉い人は知っているから、会ってくれるかどうか聞いてみるね!」

 と答えると、

 「忝ない!」

 とシルクハットを取り、優雅に感謝してくれた。

 早速、路地を出てゲート近くの冒険者ギルドの受付に行き、備え付けの通信機に私のカードを差し込んで、クレリア姫様の親衛隊のサーシャさんと連絡を取ったの。

 だけど、どうしてもケットシー128世さんが猫であるという説明が、理解してくれなくてしょうがないから直接ビルに向かうことにしたの。

 「偉い人の所に、直接行くね」

 とケットシー128世さんに言うと、

 「大変苦労を掛ける、この礼は吾輩の王国が取り戻せたら、何倍にしてでもお返ししよう!」

 と感謝されちゃった。

 


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