新しい世界で   作:Belenus

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過ぎ去る季節、重なる思い出







独自解釈が特に酷いです。
約束の3話目ですが最後の方にチョロっとしか出ません。
申し訳ない。


お母さん

 昨日、あれだけ色々な悩みが解決したばかりなのだが、またしても新しい悩みが出来てしまった。と言うのも、博麗さんに対して未だに敬語で話してしまうのだ。

 それだけなら、まだいいのだが僕の敬語が他人行儀に聞こえるのか時々、悲しそうな顔をする。だから敬語を外そうと思うのだが、せっかくだからこの機会にお母さんと呼んでみたい。でも、呼びづらいと言うかそもそも呼んでもいいのだろうか?

 

「また考え事か?ピクラスは一人で考え込みすぎるからな。行き詰まったらちゃんと相談するんだぞ」

「はい、これは僕の問題なので大丈夫です」

「そうか?ならいいんだが。」

 

 ここ最近、縁側で日に当たりながら一緒にくつろいでいる。時々博麗さんと話をするのだが、その中でも最近は博麗の巫女についてよく聞く。例えばこの間なんかは·····

 

『博麗の巫女ってそういう職業なんですか?』

『ああ。本来の巫女的な事もやるけど、大体は里にいる世間知らずな妖怪の退治かな』

『それだけ色々なことをやると、博麗の巫女になるのって難しいですよね』

『博麗の巫女はなるものじゃなくて、選ばれるものだからな』

 

 なんでも博麗の巫女というものは代々、世襲制ではなく幻想郷にいる特別才能のある子供を養子として迎え入れるらしい。

 その時はすぐ話を辞めてしまったため聞きそびれたが、博麗さんの前の巫女はどうしているのか気になった。今は引退して隠居でもしているのかと思い聞いてみると。

 

「先代は突然、姿を消したらしい。なんでも博麗の巫女として生きていくのに我慢が出来なかったからだとか」

「らしい?」

「私も、人づてに聞いただけだからよく分かってないんだよ」

 

 突然姿を消すなんてどういうことだろうか。質問を重ねてみる。

 

「博麗の巫女ってそんなに辛いんですか?」

「私はそうでもないけど。博麗の巫女って言うのはね必要な存在だけど嫌われ者なんだよ。私達がどうしてこんな山奥に住んでいるのか。それは博麗大結界との位置関係のせいもあるけど、里に住めないからなんだ」

「どうしてですか?」

 

 そう聞いてみると、博麗さんは溜まってたものを吐き出す様にして語り出した。

 

「里の人間にとって私達は受け入れるしかないけど受け入れがたいんだよ。妖怪と関わり人ならざる力を行使する、それだけで忌避する対象になるもんさ。命懸けで戦っても返ってくるのは不自然な愛想笑い、腫れ物を触るような空気だからね」

 

 いつになく饒舌な博麗さんを見るに、本人はそうでもないと言うが相当なストレスだったのだろう。吐き出してもらえて良かったと思う反面、余計な事を聞いてストレスを増やしてしまったのではないかと不安になる。

 

「すみません、嫌なこと聞いてしまって」

「いや、むしろ吐き出せて少し楽になったよ。平気だと思っていても報われないのは辛かったみたいだ。それに、里の人間が全員そうだって訳じゃないからね。私は平気だよ」

 

 そう言って優しく僕を撫でる手からは深い孤独を感じた。きっと、博麗さんも僕と同じように愛に飢えているのだろう。愛されることが当たり前の世界でつまはじきにされたものだから分かる。

 

「これからは何時でも僕がそばに居ますから」

「そうだね。1人じゃないってのはいいものだ」

 

 僕が、博麗さんに対して親近感を覚えていたのはこの事が原因だったようだ。そして、僕は博麗さんのことを分かっているようで分かっていなかったと今更ながらに思った。

 

「暗い話は終わりだよ。早速、修行するから」

「はい」

 

 今日は待ちに待った修行だ。幼さと精神的な面を鑑みて止められていたのだが、何とか説き伏せて修行をつけてもらうことが出来るようになった。

 

「そんなに楽しいものにはならないよ」

「辛いことだとしても、強くなるためなら頑張れます」

「その言葉が変わらない事を祈るよ」

「意外と辛辣ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 あれから場所を境内に場所を変え、僕の中の吸血鬼を出す修行中だ。と言っても全然、何をどうすればいいのか分からない。集中して自分の中に意識を向けろと言われても、吸血鬼の部分なんてよく分からないし。

 

「駄目か、ならやり方を変えよう」

「やり方を変えるとは?」

「今から私が、ピクラスを軽く祓う。そうすると、自分の中にある吸血鬼の部分が拒絶反応を起こすだろう。そうして吸血鬼の部分を認識する」

 

 理論的には問題なさそうだが、半分とはいえ吸血鬼なのだ死なないのだろうか。加減を間違えるとは思わないが不安である。

 

「そのやり方、痛そうですね」

「ああ、だからあまりやりたくない。どうする?」

「強くなるためですから。お願いします」

 

 そう言い決心を固めると、博麗さんが僕の胸に手を置き御札を貼り付けた。次の瞬間、胸から全身にかけて焼かれるような感覚が広がった。普通の痛みとはまったく違う。まるで自分の存在を鑢で削られるような感覚。

 

「まだ続けるか?」

「は·····い」

 

 御札を剥がされ再度、意思確認をされる。博麗さんから見たら精神年齢を知っていても、4歳の子供が苦しんでるだけに映るのだろう。顔に『これ以上やりたくない』と書いてある。

 

「酷な事をしているって分かっています。僕も辛いし辞めたいです」

「なら、辞めてもいいんじゃないか?もう少し年齢を重ねてからでも」

「嫌です」

 

 確かに今じゃなくてもいいかもしれない。いくら精神年齢が高くても肉体の年齢だって4歳の子供なのだ。辞める理由はいくらでも転がっている。だが、それでも!

 

「どうして!そこまで今にこだわる!」

「早く、強くなりたいんです!復讐のためだけじゃない、胸を張って生きていくために!」

 

 そうだ、これはわがままだ。大切な人とのたまいながら、苦を強いている。それでも二度と失わないために、理不尽に抗うための力をつけたいのだ。だって、こちらの年齢など向こうは気にしてくれないのだから。

 

「次で感覚をつかめなかったら中止だ。なんと言おうとこれだけは受け入れてもらう」

「分かりました」

 

 再度、地獄のような苦しみが襲う。半分でもこれなのだ完全な妖怪だったらショック死するだろう。しばらくそんな感覚に悶え苦しんでいると突然、体の内側から焼かれるような感覚とは違う熱を感じた。その熱が全身に広がると、胸にはられた何かが弾け飛んだ。

 

「はぁ、はぁ、これは?」

「成功·····だな」

 

 悔しそうに呟かれた様子を見るに、博麗さんとしては力なんてつけないまま大人になって欲しかったようだ。なんの力も持たず、普通の人生を謳歌する道を望んでくれていたのだ。

 

「吸血鬼の面が表に出てきたということだろう。それにしても驚いた、吸血鬼の状態になっても太陽の光でダメージを受けないんだな」

 

 吸血鬼になった状態でダメージを受けていたらどうするつもりだったのだろう。そもそも成功するとは思っていなかったのだから、考えてなかったのか。

 

「今の自分の姿を見てみるといい。ほら、こんな時のために一応用意しといたんだ」

 

 そして渡された手鏡を受け取り自分を見てみる。その鏡にはあの憎い男にそっくりの自分がいた。お母さん譲りの黒髪は真っ白に染まり、歯は鋭く伸び、背中には蝙蝠のような羽が生えていた。

 これが博麗さんが言っていた自分の中の吸血鬼を受け入れるという事か。

 

「案外、きついものですね。憎いあいつと同じ力を使わなきゃいけないなんて。·····なんで嬉しそうなんですか?」

「ああ、すまない。ピクラスが力を手に入れたことは好ましくないが、この修行で正直に気持ちをぶつけ合えた事が嬉しくてな」

 

 確かに先程は両方とも珍しく声を荒らげていた。博麗さんが声を荒らげるのなんて、今まで1度も見た事がなかった。

 

「ここ最近、何処かピクラスと話していると他人行儀で何考えてるか分からなくてな。」

「やっぱりそうだったんですか」

「という事は自覚はあったのか」

「はい」

 

 この敬語は癖のようなものだった、誰かと深く関わることに恐怖し気安く話すことに遠慮を感じていた。そんな僕にとって敬語はものすごく便利なものだった。

 

「嫌う人もいるけれど、意外と使いやすいんですよ。明確に他人を線引きできて、なおかつ失礼にならない」

「そうだな。ピクラスの使う敬語は自分の中に入ってくるなと、言われているようだった」

 

 誰に対しても敬語を使っていた結果、このような事になっていた。深く関わりを持つことを辞めてしまった僕にとっては、外す必要がなかった故に外れない。

 

「敬語に加えて、何か思ったことがあっても話そうとしないだろう。気づいてたか?自分が挨拶か質問する時ぐらいしか話さないことに」

「そんなこと··········ありますね」

 

 言われてみて気づく。話を聞かれるばかりで、自分のことを話そうとしない。そんなことを繰り返せば、何を考えているか分からない少年の出来上がりだ。

 

「人は話すことで快感を得る生き物です。なので会話する時は積極的に自分の話をせず、人の話を聞くようにしてました」

「そういうことだったのか。でも、それが通用するのはあくまで自分にしか興味のない相手だけだぞ?」

「今まで問題なかったんです」

 

 僕は処世術に関しては上手い方だと思う。だけど、圧倒的に親しい人との関わり方については、経験値が全くないのだ。

 

「気安く話してくれとまでは行かないが正直に気持ちを話して貰えると助かる。」

「僕もここ最近、何度か敬語を外そうと思っていたんです。でも、なかなか上手くいかなくて」

「悩んでいたのはその事だったのか」

 

 そもそも、悩みを正直に打ち明ければなんてことは無かったのだ。それを『僕の問題なので』なんて、勘違いも甚だしい。拒絶してるくせに敬語が外れるわけないんだよ。

 

「これを機に外してみようと思います。だから、これからもよろしくお母さん」

 

 散々悩んだ敬語があっさりと外れた。これには博麗さんも呆れているだろうと様子を伺うと博麗さんが泣き出していた。

 

「あ、あの、すみません。突然お母さんとか言って。さすがに嫌でしたよね」

 

 慌てている僕の様子を見て、泣きながら笑っている姿は美しかった。見惚れているの僕に博麗さんが抱きついてくる。

 

「ここまでして分からないのか?素直に嬉しいんだよ。さすがにお母さんなんて呼ばれると思ってなかったからね」

 

 やっぱり、博麗さんは愛に飢えていたのだろう。普通ならこんなことでここまで喜んだりしないはずだ。傍から見たらこの関係は傷の舐め合いのように映るかもしれない。それでも今はいいと思えた。

 

 

 

 

 

 

 そうして、1年が過ぎた。

 僕は5歳になり修行も順調に進んでいた。吸血鬼に姿を変えるだけでも精一杯だったのが、今では吸血鬼の姿で飛べるようになっていた。

 

「飛べるようになるまで随分時間がかかったな」

「そうですね。でも、あんなふわふわした説明でここまで出来るようになったのは凄くないですか?それに一般人の僕からしたら飛ぶ感覚から分からない訳ですから」

 

 飛ぶのには本当に苦労した。空を飛び回るのに1年のほとんどを使い果たし、ようやく飛べるようになっても旋回は夢のまた夢。位置が定まらず、飛びながら吐くという貴重な経験もした。

 

「ふわふわした説明で悪かったね。その代わり飛べるようになるまで付き合ってやっただろう。しかも、今は一般人じゃないけどね」

 

 ここまでの会話で気づいただろう。あの感動的?な話で敬語を外すという事ができたと思ったのだが、見て分かる通りダメだった。習慣とは恐ろしいもので、ふとした時に敬語に戻ってしまうのだ。

 そんなことを繰り返しているうちに

 

『敬語はのそのまでいいよ』

『でも、せっかく敬語を外す流れになっていたのに』

『無理して敬語をはずしても意味ないだろう。問題だったのは今までどう思っているのか伝わらなかったことだ。敬語をはずしても伝わる今、敬語のあるなしは問題じゃない』

『分かり·····ました。これからも、敬語で話していきます。お母さん』

 

 なんてことがあり、元に戻っているという訳だ。せっかく、外す流れになっていたのに勿体ないと思うが。あれから問題もないし敬語のままでもいいのだろう。

 

「それで、飛べるようにもなりましたし次は戦闘訓練ですか?」

「いや、それは七歳を越えたら始める」

「何故ですか?体は小さいですけど吸血鬼化すればそれなりに動けますよ」

 

 吸血鬼化した時の万能感は今でも忘れられない。処理出来る情報量が一気に増え、妄想の動きが現実となるのだから楽しい。まぁ、お母さんには3秒で転ばされたけど。

 

「まだ幼いからというのもあるが、私が訓練し始めたのがそれぐらいだからだ。焦る気持ちも分からなくもないが、今はゆっくり普通の子供として生活を送るべきだ」

「分かりました」

 

 確かに今の僕はたったの5歳だ、まだ無理をする歳ではない。それに、前から思っていたじゃないか普通の生活を送りたいって。今はお母さんと普通の生活を送ろう。それに、出来ることは他にもある。

 

「ここまで出来るようになれば、以前のように一方的にやられるような事はないよ。それにあれを読んで手数も増えてるだろう?」

 

 あれと言うのは僕の家にあった魔導書だ。この一年で修行と並行して勉強する事で、だいぶ読めるようになってきた。お母さんは、魔法を使うことに対していい顔はしないけど使える手は多いい方がいいからね。

 

「最近は簡単な捕縛の魔法なら使えるようになりました!」

「あんまりそっちの道には行って欲しくないんだけどね」

「仕方ありません。遺伝ですから」

 

 確かに血を引き継いでいるのだということが、嬉しかった。それにあの本は直筆の為、触れられるだけで愛おしいのだ。

 

「もしかして、嫉妬とかしてますか?」

「はあ!?そんな訳·····」

「本当ですか?」

「た、多少は·····」

 

 これは僕達で決めたことだ。何事にも嘘をつかない。喋らない選択肢が残っているが、人の顔色を伺って生きてきた僕は勘が鋭い方だ。だから、最近はお母さんの本音をこうやって引きずり出すのが趣味になってきてる。ちゃんと嫌われない程度にね。

 

「私ばかり恥ずかしい思いをしてる気がする」

「気のせいですよ。気のせい、気のせい」

 

 それにしても、お母さんも誰かに教わっていたとはてっきり素で強いのだとばかり。

 

「お母さん、の師匠って誰なんですか?」

「ああ、それはだな··········何の用だ紫」

「何って、呼ばれたから来ただけよ。だって私があなたの師匠じゃない」

 

 そう言って突然、空中にできた裂け目から出てきたのは長い金髪の美女だった。突然のことだというのに僕は驚くほど落ち着いていた。

 

「あの、どちら様ですか?」

「できた子ね。でも、まずは先に名乗るのが礼儀じゃなくて?」

 

 言われて考える。僕はどんな名前を名乗ればいいのか。覚悟は案外すぐに決まった。

 

「失礼しました。ピクラス···············ピクラス・スカーレットと申します」

「それじゃあこちらも。八雲紫(やくもゆかり)。幻想郷を管理する賢者の一人よ。妖怪だけれどね」

「そんなことより。いいのか?その名前を名乗って」

「はい」

 

 この名前は自分にとっての戒めだ。だから、この名前を名乗る度に思い出せるように。あの、何も出来なかった日を。殺意の籠った奴の目を。

 

「親子ごっこは楽しいかしら。傷の舐め合いでしょうその歪な関係。」

「煽りに来ただけなら帰ってもらえるか?」

 

 言葉だけを見れば冷静な発言だが。ここにいて肌で感じてわかる。さっきの紫さんの言葉がお母さんの逆鱗に触れたことが。普段、迷惑をかけないようにしているのもあるが僕に対してもここまで怒ったことは無い。

 

「悪かったわね。そんなに怒ると寿命が縮むわよ」

「さっさと·····本題を·····話せ」

 

 これは僕達の関係に対しての怒りだけでなく、元々仲が悪かったようだ。あの、お母さんがここまで嫌うなんて相当な事が、過去にあったのだろう。

 

「せっかちね、それじゃあお望み通り本題を入るわ。その歪な家族ごっこにもう一人追加よ」

「もう一人って。もしかして!もうそんな時期か」

「さぁ、こっちにいらっしゃい」

 

 紫さんに呼ばれて裂け目の中から出て来た女の子は、ボロボロの服装に体は酷くやせこけていた。だが、何よりも目を引いたのはそのお母さん(博麗さん)にそっくりな顔立ちだった。

 

「どう言うことだ紫!」

「この子は霊夢(れいむ)。あなたの妹の子供よ」

「私に妹がいたなんて初耳なんだが。それより、どうしてこの子を選んだんだ」

 

 妹がいた事よりも、その子供が選ばれたことの方がお母さんの琴線に触れたようだ。先程よりも怒りを顕にしている。

 

「聞かれなかったから答えなかっただけよ。選んだ理由については、単純に条件を満たしていたからそれだけよ。他意はないわ」

「はぁ、分かった。お前に何言っても無駄だろうしな」

「あら、理解が早くて助かるわ」

 

 そうして、話し合いは終わり家族が一人増えた。これから、仲良くやって行けるのだろうか不安である。




深まった絆、落ちる不安の影











やっと、霊夢さんの登場です。
ここまでで、読むのを辞めた人も多いいでしょう。なんせ長いですから。
でも、ここまで読んでくれた人に悲報です。5話まで霊夢らしい霊夢は見れません。なんせ子供ですから。ただ、次も最後の方で紫さんが出てくるので繋ぎにはなるはずです。
処女作のため読者のことを考えずに、書きたいように書いたらこうなりました。申し訳ない。
ちなみに本編の前後に入るクサイ言葉は、気に入っているのでやめる気はないです。若気の至りだと思って許してください。年を取ったら、布団の上で苦しむから帳消しという事で。
深夜テンションの為あとがきが長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。
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