新しい世界で   作:Belenus

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与えた影響、変わる未来







魔理沙も幼いので口調を変えています。


霧雨魔理沙

「ん?霊夢ともう一人いるあの子誰だ?」

 

 霊夢と一緒にいる里の子も気になったがそれよりも、なぜ霊夢がこんな時間まで僕との約束を破って遊んでいたのかが疑問だった。普段の霊夢なら、約束を破ったりしないはずだ。ましてや、お母さんとの約束まで破りもう一人の子に飛び回る姿を見せるなんてことも。とりあえず理由は本人から聞いてみるしかないな。

 

「霊夢。とりあえず無事でよかったよ」

「あっ、ごめんなさいお兄ちゃん」

 

 申し訳なさそうにしてる様子を見るに、気づかなくて約束を破ってしまった訳では無いらしい。なら尚更不思議だ。約束を破るほどの何かがあったのか、それともただ単に遊びたからったからなのか。

 

「素直に謝れたから今回は許すけど。次はないからね」

「はい、分かりました」

 

 お母さんに禁止されていた能力の無闇な使用、この約束まで破るとは思わなかったな。約束に上も下もないが、僕の約束よりも大事なはず。帰ったらお母さんになんて言い訳をしようか。

 

「霊夢は悪くないの。私が引き止めたから残ってくれただけで。だから霊夢をあまり怒らないであげて」

「さっきも話した通り、霊夢のことはもう許したからあまり怒ってないよ」

「よかった」

 

 そう言って胸を撫で下ろした金髪の女の子は、綺麗な服に身を包んでおり箱入り娘というような印象を受けた。この子の頼みで、約束を破ったのか。理由としては弱いため何かあるんじゃないかと勘ぐってしまう。

 

「どうして君はこんなところに?」

「霊夢が魔法を見せるなら人がいない所でって言ったから」

「どうして霊夢はこの子に?」

 

 そこだけがどうしても引っかかる。年相応に子供だからと納得するのは簡単だけど、本当にそれだけの理由だとは思えない。理由ばかり求めすぎるのは悪い癖だろうか。

 

「一人だったから」

「一人か」

「うん。昔を思い出して」

 

 なるほど。言い方は悪いが同情したのだろう。見たままの印象通り周りと遊ぶのには少々、育った環境が違いすぎたのだろう。和服の周りとは違う綺麗な洋服に金髪だ。子供は残酷なほど純粋だから、異分子として扱われた可能性もある。

 

「よくやった」

「怒らないの?」

「もう怒っただろ?」

「あんなのただの忠告じゃん」

 

 結果はどうであれ、小さな女の子を孤独から救ったのだ。それを責められるほど、僕との約束は大層なものじゃない。約束は大事だけどね。それを分かってないほど馬鹿なら、そもそもこんな行動に出てないわけだし。

 

「ねえ、あなも魔法使えるの?」

「使えるよ。僕はピクラスって言うんだけど君は?」

「私は霧雨魔理沙、普通の女の子よ。ねえ、魔法使ってみてよ」

 

 お母さんには、むやみに里で力を使うなって言われたけどこの場合どうすればいいんだ?霊夢はこの子に力を見せちゃったようだし今更なところもある。とりあえず、日も暮れたし早く帰らないとお母さんになんて言われるか分からない。

 

「魔法はまた今度、来た時に見せてあげるよ。霊夢、帰ろうか」

「えー、霊夢もう帰っちゃうの?」

「うん」

「次は?次はいつ来る?」

「また明日来るよ、バイバイ魔理沙」

 

 悲しげな顔をされるとこちらとしても思うところがあるけど、早く帰らなければいけない。だが、後に残される魔理沙がどうしても気がかりで少し飛んだところで止まってしまった。

 

「お兄ちゃん、行かないの?」

「魔理沙は帰らないのか?」

「帰っても誰もいないし」

「他に友達は?」

「いない」

「じゃあ、霊夢もう少しだけ遊んでいこうか」

 

 そういうと霊夢と魔理沙は嬉しそうな顔をした。お母さんには、悪いけれどもう少しだけ遊んでいこう。僕にも覚えがあった、誰もいない家で一人孤独を感じながら過ごすあの時間を。だから、魔理沙にはもう少しだけ孤独を忘れて笑顔でいて欲しいと思ったのだ。

 

「でも、いいの?お兄ちゃん」

「いいよ。僕が責任を負うから」

「ありがとう!」

 

 満面の笑みを向けられて、少し罪悪感を感じる。だってこの関係がいつまで続くのかは分からない。今やっていることは、お腹を空かせた子に食べ物を与えているだけだ。それは一件いい事をしているようで一時しのぎにしかならない。

 

「お兄ちゃん?」

「僕は酷い大人だ」

 

 1度幸福を知れば、次の不運は更に辛くなる。原因解決をせず、ただその場しのぎを繰り返すのはあまりに残酷だ。僕達とは生きている世界が違う魔理沙は、また1人になってしまうだろう。

 

「考えすぎ」

「そんなこと·····」

「今は笑い合える。それだけでいいじゃん」

 

 一時の幸福は、不幸が降りかかった際の心の支えにもなる。だから先の事ばかりではなく、今を見ろとそう言ってくれているのだろう。

 

「魔法見せてよ!」

「分かった。その代わり、ここだけの秘密だよ」

「分かった!魔法のことは秘密にしておくわ」

 

 満面の笑みを前に、先程のような罪悪感はもう感じなかった。できた妹である。

 

「ねえ、お兄ちゃん。私も魔法見てみたい」

「分かった。詠唱や準備の必要がない簡単な魔法だけな」

 

 そう言って、指先から火を出したり小さな光の玉を飛ばしてみたりしているとそれだけで大喜びしてくれた。

 この程度の事でこれだけ喜ばれ、僕も調子に乗ってしまいその後は、詠唱や準備なんかが必要な魔法を使ったり果ては魔法についての講義までしてしまった。そんな事をしていた為、すっかり辺りは暗くなっていた。

 

「ねえ、お兄さん。私も魔法使いになれるかな?」

「なれると思うよ努力が必要だけどね。でも、今日教えたことは忘れること」

「忘れられるわけないよ」

 

 噛み締めるように言った言葉は、今日の出来事が彼女にとってどれだけ大きな事だったのかを表していた。これからの人生で時折、訪れる孤独に立ち向かうための心の支えになってくれればいいと思った。

 

「次はいつ教えに来てくれる?」

「しばらくは来れなと思う。帰ったらお母さんになんて言われるか分からないし」

「じゃあ、それまでは一人で練習してるね。師匠」

 

 師匠か、いつの間にか慕われてしまったみたいだ。でも、魔法について教えてしまった以上責任を取って道を踏み外さないように見てないとだな。

 

「再度言うけど、人前では絶対に使わないこと。出来れば魔法の話をするのも辞めた方がいい。破ったら二度と魔法は教えないから」

「分かった!」

 

 本当に分かって言っているのか不安だが、見た感じ頭の悪い子ではないから大丈夫だろう。それにしても、霊夢も一緒に盛り上がっていたが、魔法使いになりたかったりするのだろうか?

 

「私は、別に魔法使いになりたいとは思わないかな。博麗の巫女になる運命だし。」

「霊夢は時々、心を読んでくるよな」

 

 流石、血が繋がった親子である。何かその血に秘められた力とかあるのだろうか。

 

「僕としては運命に縛られずに、なりたいものになって欲しいけどな」

「なりたいもの··········なら、将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる」

「私も、師匠のお嫁さんになる!」

「そうか、なれるといいな」

 

 実際に聞くのは初めてだそのセリフ。そんなに慕われるほど何かやった覚えはないんだけど、嬉しいなこういうこと言われるの。喜んじゃダメなのだろうかまあ、大人になるにつれて忘れていくだろう。

 

「もう、夜になってきたしそろそろ誰か家に帰ってきてるだろ?」

「うん、多分今なら家に誰かいると思う」

「家まで送ってあげるから帰りな」

「分かった」

 

 もっと抵抗すると思ったのだが、案外すんなりと言うこと聞くものなんだな。さて、帰ったらお母さんになんていうか今から考えとかないと。

 

 

 

 

 

 あれから魔理沙を送り届け、空を飛びんでいる。幸い今のところは妖怪に出会うことはなく進めているのだが、妖怪が出た時に霊夢を守りながら対処できるか不安である。

 

「大丈夫だよお兄ちゃん。私強いし」

「それでも、心配なんだよ。もし妖怪が出たとしても霊夢は下がってて欲しい」

「なんで?」

 

 これだけは絶対に譲れない。霊夢は確かに強いし、吸血鬼化しても勝てるか分からない。でも、強いからって危険の前に身を晒す理由にはならない。

 

「もしかして兄の威厳ってやつ?それなら妖怪が出た時、私の後ろに隠れてても失われないよ」

「それもあるけど、兄として妹を妖怪の前に出させる訳には行かないんだよ」

「分かった」

 

 霊夢も理解したのだろう、すんなり言うことを聞いてくれた。正論で反抗されたら、実際に僕の方が弱いため困っていたが分かってくれて良かった。

 しばらく飛行していると前方に見覚えのある影を見つけた。

 

「お前達、無事だったか。そうか、よかった。」

「お母さん、く、苦しい」

 

 こちらを見つけるやいなや、抱きついてきた。なんの報告もなく、こんな時間まで帰ってこなかったため探しに来たのだろう。僕と霊夢がいるため大抵の事は大丈夫だと分かっているのだろうが、それこそ先程霊夢に言ったことと同じだろう。

 

「すまない、つい力が入ってしまった。お前達、途中で妖怪に出会ったりしなかったか?」

「二人とも無事です。すみません、お母さん」

「いや、今はいい。後でゆっくり話は聞くから」

 

 抱きしめられながらお母さんの声を聞いていると、自分がしたあの時の行動でどれだけ心配させたかが伝わり胸が締め付けらる。なんて説明するべきだろうか。いや、ここまで来たら素直に事の顛末を話し罰を受けるべきだろう。

 

「ねえ、お兄ちゃん。私の事、変に庇おうとしなくていいからね」

「分かった」

 

 責任は僕が全部負うと言ったのに本当にできた妹である。

 

 

 

 

 

「それで、どうしてこんな時間まで帰ってこなかったんだ?」

「私が遊ぶのに夢中になって遅れたの」

「正確には日暮れには、帰ることができたのに僕が里の子供と遊ぶのを許可したんです」

 

 霊夢が部分的な事実を伝えようとしたので、すかさず全部話す。自分の事は庇うなと言ったのに、僕の事を庇うとは思わなかった。

 

「なぜだ?」

「一人で寂しそうにしていた里の子供に同情して、家に誰か帰ってくるまで遊ぶことにしたんです。霊夢にも僕が責任を負うから遊んでもいいと許可しました」

 

 お母さんは、決して怒らずにむしろ優しい声色で僕達に問いかけてきた。このまま、行けば魔法を見せたりしたことは隠し通せるだろうけど、隠し事は今後の関係に影響するし話してしまった方がいいだろう。

 

「とりあえず、約束を破った罰は受けてもらわないとね。その覚悟はしてきたんだろう?」

「はい。でも、罰を受ける前にもう一つ約束を破ったことを謝らせてください」

「言ってみなさい」

 

 霊夢の事は完全に蚊帳の外に出来たため、ミッション成功である。このまま僕に注意を向けさせて、霊夢はお咎めなしと言うのが僕の作戦だ。庇うなと言ったが、庇ってはないし今回霊夢は正しい事をしたと思っている。その結果、僕との約束を破っていてもだ。

 

「里の子供に飛ぶ姿や魔法を使う姿を見せて、魔法の使い方まで教えてしまいました。約束を破ってすみませんでした」

「自分がどんなことしたのか、わかってるね」

「はい、責任は負うつもりです」

 

 お母さんが言いたいことは分かる。僕がやったことは下手をすれば一人の人生を変えることになるかもしれないのだ。

 実際に魔理沙は魔法使いになりたいと言っていた、それがどれだけ本気なのか分からないが本気なのだとしたら、この先の人生は大きく変わることになるだろう悪い方向にも良い方向にも。

 

「それがわかってるなら、私から言うことはないよ。里の子供に関しては上手くやりなさい。ちょうど霊夢にも友達くらいいた方がいいと思ってたし」

「はい」

「それじゃあ、約束を破った罰としてピクラスには一週間修行禁止」

 

 は?

 

 軽い、軽すぎる。約束を破ってあんなに心配をかけさせたのに一週間の修行禁止程度なんて。思えば最初から心配はしていたが、あまり怒っていなかったように感じる。何故だろうか。

 

「そんなことでいいんですか?」

「早く力をつけたがってたピクラスからしたら、一週間の修行出来ないのは罰になると思ったんだが短かったかい?」

「いや、そんなことないです」

 

 罰を自ら重くする程ような性癖は持っていないが、モヤモヤするのは確かだ。この数年間一緒に過ごしてきてある程度は理解してきたつもりだが、分からない。

 

「お母さん最初からあまり怒ってなかったみたい。よかったね」

「そうだな」

 

 怒られたい訳じゃないからいいのだが、霊夢みたいにはいそうですねとはいかないのが僕の性格だ。考えても分からないのだから、聞いてみるしかないだろう。

 

「なんでお母さんは怒ってなかったですか?」

「最初から隠さずに説明してくれたから、それだけだよ。なにか、小細工でもしようものなら怒ってたけどね」

 

 やはり、素直に話して正解だったということか。意外と単純な話だったのか。長々と考えていた自分が馬鹿みたいだな。熟慮は時に短慮以上の愚行を招くとはこの事か。

 

「なんで落ち込んでいるんだい?」

「もしかして、もっと怒られたかったとか?」

「ち、違うよ!」

 

 変態を見る目でこちらを見ないで欲しい。

 

「ピクラスは自罰的過ぎるきらいがあるからな〜」

「うん。もっと気楽に生きた方がいいと思うよお兄ちゃんは」

「そう·····かな」

 

 自罰的と言うより当然の考えだと思うのだが。まあ、そんな事よりお母さんに修行は禁止にされたが、里に行くのは禁止されてないしまた明日、霊夢を連れて魔理沙のとこに行ってみるか。

 

「霊夢は明日、里に行くの禁止ね」

「分かった」

「あら、意外に素直に言うこと聞くのね」

「今回の件は私が駄目だったところも多かったし」

「聞き分けが良くてよろしい」

 

 どうしたんだろう。お母さんがあまり怒ってなかったのは説明されたし理解ができる。でも、なんかお母さん喜んでないか?

 

「お母さん、なんか嬉しそうにしてません?」

「分かっちゃう?」

 

 嬉しそうにニヤニヤとするその姿は、先程のがまるで演技だったかのようだ。

 

「普段から二人とも聞き分けが良いでしょ〜。何か言うことも怒ることも無いから、なんだか新鮮でね」

「新鮮ですか?」

「うん」

 

 確かに、怒られるなんてこれが初めてだ。前世の記憶がある僕も、優秀な霊夢も怒られるようなことなんて普段からしないからな。

 

「 少し嬉しいのさお母さんやれてるな〜って」

「そうだったんですか」

 

 お母さんなりに不安だったりしたのだろう。しっかりお母さんがやれてるのかどうか。強くて不安なんて感じてないように見えてもやっぱり、お母さんも人間なんだ。

 

「僕はちゃんと息子やれてますか?」

「やれてるわよ。むしろ、出来た息子で困るくらい」

「そうですか」

「私は?」

「霊夢も」

 

 僕達、家族は歪だ。だから、こうして時々確認しないと不安になってしまう。そんな、歪な形で結びついた家族だけど共に過ごす日々を僕は愛おしく思う。

 新しい風が吹き、変化はあるだろうがこんな日常がいつまでも続けばいいとそう感じた。




幸せな日々、忘れられない笑顔







変わる未来なんて大層な事言ってましたが、結局のところ魔理沙はこの世界線でも魔法使いになっていたのでその事では無いです。
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