晴れてというか、ようやくというか兎にも角にも長い高校生活を終えた僕は春から大学生になる。まだ今のところの肩書きは高校生でも大学生でも無いのでそこのところの定義は微妙である。大学生になると言えどひたぎや羽川のサポートがあったからこそ大学受験を乗り越えられたし到底あの二人には頭が上がらない。最後まで迷惑かけっぱなしだったしな、怪異に関しても向こう見ずで突っ走ってしまった僕のミスも多い。
そんなわけだが愚痴をこぼしていてもしょうがないし、色々とやるべき事をしなければならないのだから。僕の二人の妹も僕を起こしてくれることは無くなった、兄としてはいちいち五月蝿いと感じていたがそれはそれで寂しさを感じるというものだ。さてそろそろ起きようとしたが、起きて何をすべきかをここ数日分かっていないのだ。何をすればいいのかなんて大層なものに聞こえるけど、受験勉強も終わり怪異がらみも収束した事で忙しさが消失したのだ。何か胸のつっかえを感じるがとりあえず動いてみなければ始まらない。その数秒後だった、僕が感じていた違和感の招待に気づいたのは。机の上に置いておいた、スマートフォンが振動している。普通に考えれば電話なのだけれどここ数日忙しかったこともあり、思考が上手くまとまらない。
僕から電話を掛けない訳では無いけれど、その声は決して忘れるわけが無い。見知らぬ人だったら切ればいいし、そもそも僕は知り合いか家族しか登録していないため安心ではあるのだ。寝ぼけ眼で画面のボタンを操作する。 「おはよう、阿良々木君。随分と寝ていたようだけどここ何ヶ月かの反動が来ているのかしら。」と淡々とした声で告げた。
そう、電話の主は僕の彼女である戦場ヶ原ひたぎからだったのだ。
こんなトーンで話すとただの惚気けであると思われるが、ひたぎも色々手続きとか忙しいとのことで僕に気を使ってくれたのかもしれない。
「おはようひたぎ、この呼び方本当に慣れないな…。今日は何かあるのか?」とクリアで無いながらも脳を働かせて言葉を紡ぐ。余談だが名前で呼ぶことになったのに、冬の受験シーズンにあまり距離が近すぎても色々とダメになってしまうので二人でいる時間は少なくはなってしまったのだ。ぼんやりとそんなことを考えるが僕は怒られるのだろうか、妹や後輩が居てもどうも男女の距離だったりは今でも難しいのだ。
「ふふっ、阿良々木君…いえ暦は色々と久しぶりなのよね。呼び方は私も変えていくわ、でも今日はもっと濃い内容を伝えに来たのよ。」と僕の悩みをふわりと受け流し、ドキドキ感を高揚させてくる。濃い内容って何だろうな、同棲とか結婚とかでは無さそうだけれども、ひたぎのことなら予想がつかない。
「なあ、ひたぎ。濃い内容って何なんだ?確かに色々あると思うけど候補が多すぎて分からないんだ。」と期待していることを意識させてみる、具体的な内容は飛躍しすぎていると思うので言及されたら二人きりの時に言うことにしようなんて考えていた。
「あら、暦。何週間か前にに言わなかったかしら?一週間後、二人で旅行よ。」と結構浮かれた感じでそれでいてキャラは変えずに話をしてくる。いや待て旅行ねえ、本当に身に覚えが無いせいでこれだと嬉しくないやつの反応になってしまうがありのままの気持ちを伝えよう。
「旅行か僕も凄い嬉しいんだけど、どこに行くんだ?」とありきたりだが色々と不安な気持ちをぶつける。アルバイトをしていない僕からすると距離的にそう遠くには行けないだろうし、お金だってそんなにないのだから。
「それは、問題ないわ。お金の事なら心配しなくていいと言っているのよ。臨時収入が入ったから暦があれこれ考える必要は無いわ。」と返ってきた。
「僕は気になってるのがどこに行くんだ?一週間後まで忙しいのだから手配するものがあれば協力するよ。」と見切り発車で言ったものの展開が急すぎて追いつかないのだ。
「いやもうこちらで準備は終わったわ、あとは身の回りの家族の事とかで忙しいから、電話にあまり出られそうにないの。旅行前日になったら暇でしょうけど。あと場所は秘密よ、その方がわくわくするでしょ?」と返ってきた。ひたぎの事だからそこまで変な場所にならないと願いつつ、割と彼氏としては知っておきたいことではあるのだ。
そして、お金の件なのだが彼氏がお金を出すという風潮が当たり前のようになっている昨今、せめて割り勘でないと色々と申し訳ない気がするんだよな。ただ、心配しなくていいという言葉に甘えておくのも重要だと思うのでそこはご好意に預かろうとしよう。ここで話が終わり電話を切ろうか、という所で思い出したかのように言った。
「あの、暦は分かっていると思うけど、怪異がらみや、普通に会えなくなる人に挨拶してきた方がいいんじゃない。帰ってこれるのはそうだけど、いつ何があるか分からないし。」と現実的な事を突き刺してくる。誰だって向き合わなければならないのだ、それに神原のこともあるのだろう卒業したら未来永劫合わなくなるわけじゃないけど、会えなくなる日は多くなるのは必然なのだから。僕はありきたりながらもやることをやってくると伝え電話を終えた。挨拶なんて急なもので、どうすればいいのか分からなかったがアテなんてそんなに多くない。とりあえず迷惑をかけてしまった人達に挨拶しに行くことにしよう。
午後からの活動は、阿良々木暦の振り返りをすることで精算をしていくとしよう。拠点は迷ったが僕達が散々な目にあったあのロリが住む所なら色々と気が楽なのだ。あいつは僕より年下で、相談とか挨拶寄りかは雑談になってしまいかねないけど、実年齢プラス10歳で僕よりも経験豊富なので何かと今後の糧になってくれると思ったわけなのである。
後々推敲していきます