『出久・・・なんであんな奴らのいる所にわざわざ来たんだ?お前あんなに嫌がってた筈なのに・・・あんな奴らなんでどうでもいいから見捨てるとか言っていたんじゃなかったのか?』
「俺にも何故だか分かりませんよ。あいつらの死にゆく姿と断末魔を聞こうと思って此処に来たと言いたいところですが、馬鹿だな。ヒーローの心なんかとっくのとうに捨てた筈なのにあいつらの事を見捨てる事が俺にはできないのか?」
出久は以前死柄木から教えてもらった雄英の林間合宿先に来ておりその光景を双眼鏡で崖から見ていた。
『おい・・・あそこにガキが1人隠れてるぞ、出久。』
「え!?おいそこに誰かいるのか?隠れてないで出てこい。」
裏真司が気配に気づき出久が声をかけると岩陰から角のような飾りがついた帽子を被った吊り目の少年が出てきた。
「あんた・・・誰だよ!?名前を名乗れ!!」
「あぁ俺は緑谷出久だ。元ヒーロー科だ。さぁこれで名乗ったからお前も名乗れ。」
「出水・・・洸太」
「洸太か・・いい名前だな。だが此処は危ないぞ。餓鬼1人が夜に来ていい所じゃない。悪い大人がいたらどうするんだ?」
「馬鹿にするな。此処は俺の秘密基地なんだ。」
洸太はそう言うと急にお腹の音が鳴り始める。
「お前ご飯も食べずに来たのか?ほれこれやるから食べろ。」
出久は洸太にパンを渡すと洸太は凄い勢いでパンをあっという間に食べる。
「所でさっきも言ったが何故此処に来た?秘密基地とはいえ夜に人気が無い所は危ない。保護者はどうした?」
「俺ヒーローが嫌いだからおばさん達にも嫌な態度をとっちゃって此処に来たんだ。ヒーローだけじゃない俺はこのヒーロー社会そのものが嫌いだ。俺のパパとママもヒーローだったけど俺を置いて死んじゃった。」
「確かお前の両親はウォーターフォース夫妻だったよな。つらかったな。まだ小さいのに両親が・・・・」
「あぁ個性なんてものがなかったら、ヒーローなんてもの仕事がなかったら今頃パパとママも生きてて笑いあえた筈なのに」
「俺もヒーローが嫌いだから気持ちはわかる。だがお前の両親がいなかったら大勢の一般人が何人も殺されていたかもしれないんだ。赤の他人を守り抜いて死んだ2人を誰よりも1番2人を知っている息子のお前が悪くいうものじゃないぞ。」
「そうだ・・・俺は無意識にパパとママの事を悪く言っていた。ごめんなさい・・・ごめんなさい。」
洸太は涙を流し出久は洸太を抱きしめる。
「少しでいいから俺の話を聞いてくれるか?」
洸太は泣き止むと頷く。
「お前は個性がない方がいいと言ったがこの話を聞いてもそう思うか?俺もかつては憧れていた。特にNo. 1ヒーローのオールマイトに・・・・強い個性が出る事を楽しみにしていた、だが俺はなんの個性も持たない無個性だった。
それを知った俺の幼馴染は俺を何もできない木偶の坊と周りの奴らと一緒に馬鹿にした。
雄英に入学するまでずっとだ!!教師にも相談したが教師も全員あいつの味方だった、それでも俺は諦めなかった。ヒーローの事を調べて何冊もノートにメモをした。
だがその内の一冊があいつによって燃やされた挙句の果てには『来世では個性が宿ると信じてワンチャンダイブ』とヒーロー志望の癖に自殺教唆を言いやがった。
その帰り道では憧れのオールマイトに出会って『無個性でもヒーローになれるか』と聞いたが却ってきたのは『夢見るのは悪い事じゃないだがそれ相応の現実を見ろ』とまるで夢を否定するかのような事を言われた。
その数日後何故か突然個性が宿り夢が叶うと喜び雄英に入学した。
だがその数ヶ月後ある女が転校してきて俺はその女の罠にまんまと嵌った。
駆けつけたクラスメイト達は俺の事を信じずに俺を罵倒したり暴力を振るった。
教師達も信じてくれずにそのまま除籍され家に帰ると母親に勘当されて今に至るわけだ。」
それを聞いた洸太は目を赤くしていた。
「この話は作り話ではなく本当の話だ。それでもお前は個性がない方がいいといえるか?」
「言えるわけがないだろ!!個性がなかったらそんな目に遭うなんて想像しただけで怖い!!」
すると森の方で黒煙が上がっていた。
「始まったか、此処は危ない。逃げるぞ。」
「え?何処で?というかあんたこの事知ってるのか?」
「お?餓鬼が2人・・・見栄えがいい所に来たと思ったらお前らはリストには載っていなかったな。」
急に現れた男がマスクを外すと左目が義眼で左頬に傷のある男の顔が出てきた。
それはウォーターフォースを殺した張本人の『血狂いマスキュラー』だった。