仮面ライダーディケイド~昭和リイマジの世界~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
次の朝、カズヤはバイクに乗って光写真館にやって来ていた。
カズヤは近くにバイクを止めると、ヘルメットを外して、写真館の玄関まで歩いていく。
「しっかしヒロシのやつ……『今日は来れない』とか言いやがって………理由ぐらい教えろよなぁー……」
カズヤはそう呟きながら、玄関をノックする。
すると玄関が開き、夏海が顔を出していた。
夏海はカズヤの顔を見ると、「上がってください」と言って、カズヤを光写真館に招き入れていた。
「昨日は士君とユウスケがお世話になりました」
「いえ………それよりもユウスケのやつは」
「―――カズヤ!なんだよ来てくれたのか!?」
カズヤがユウスケの事を尋ねようとすると、ユウスケが顔をひょっこりと出してきていた。
そしてカズヤに気付くと、士を呼びながらカズヤの前まで歩いてきた。
士はと言うと、暢気にあくびをしながら顔を出してくる。
「ん?なんだカズヤか。ヒロシはどうした?」
「ヒロシは用事があるとかで昨日電話があったんだよ。ったく、理由ぐらい教えろっつーの……というかユウスケ、お前動いて大丈夫なのか?」
「ん?あぁ。なんでかは知らないけど、身体中の痛みが綺麗さっぱり無くなったって感じなんだ!あ、昨日はありがとな!」
ユウスケはサムズアップをしながら、身体が治ったと言うのをアピールする。
と言っても、それでもまだ安静にしていた方がいいと夏海に言われているため、後2日ほどは大人しくしておくとの事。
「大丈夫かなー……」とカズヤはユウスケが大人しくしていられるか不安になるが、この際気にしないことにしていた。
「あっ、そうだ。士、昨日のやつらって何だったんだ?それ以前にお前ら………」
「…はぁ……説明がめんどくさくなるが、聞くか?」
「聞かないと分からんだろ」
カズヤの言葉に士もそれもそうかと納得してしまう。
士は適当に椅子に座り、カズヤを近くのソファーに座らせると、自分たちについて話し始めていた。
自分たちは異世界を旅している事、ある目的のために今回はここに着いた事、仮面ライダーについてなど………。
とりあえずカズヤに分かる範囲で士は説明していくが、そもそも異世界だのなんだのと言われても、カズヤにはピンと来なかった。
「あー……つまりは士たちは元々この世界の住人ではなくて、昨日のやつらは殆どが人々の平和を脅かす存在で、そして士たちはその仮面ライダーとか言うやつに変身?してそいつらを倒しながら旅をしている、と。で、今回はこの世界に用があって、その時昨日のやつらと遭遇した………って事か?」
「まぁ、大体はな」
「ふーんなるほど納得………出来るかっ!?」
「いでっ!?」
―――まぁ、そうなりますよねー………
―――普通、そういう事ってまず信じられるわけないからなぁー………
当然納得できないカズヤは士を殴り、それを見ていた夏海とユウスケは、まさしくその通りな事を思っていた。
………ただしユウスケに関しては、あまり人の事を言えない立場でもあるのだが。
「異世界だの怪人だの、まず信じられるか!?お前はなんだ、電波系青年か何かか!?」
「じゃあ昨日のやつの説明はどうなる?」
「うぐっ……」
「そういう事だ」
士はカズヤの言葉を一刀両断すると、得意気な顔をする。
それを見た夏海は頭を抱え、ユウスケはとりあえず一発殴ろうかと言う思いを込めて、拳を握る。
と、次の瞬間、近くで栄次郎が見ていたテレビから、臨時ニュースが流れ始める。
そしてその内容を見たカズヤは目を見開いていた。
『臨時ニュースを行います。本日9時50分未明、風見町にあります風見総合病院が、何者かに襲撃されたとの事です』
「!?」
『現在、その襲撃グループの正体、目的は分かっておらず、病院内の患者の安否も確認できないとの事です』
「うーん……近くで強盗とか合っていたと言うニュースがないから、これじゃあ難しいかもねぇ~………」
「お爺ちゃん何暢気なこと言ってるんですか!?」
栄次郎はうーんとテレビを見ながら唸り、夏海はそれを聞いて叫ぶ。
すると突然カズヤが立ち上がり、何も言わないまま写真館を出ていってしまった。
ユウスケもいきなりカズヤが出ていったのに対して、慌てて追いかける感じで、写真館を出ていった。
士は突然のカズヤの行動に首を傾げつつ、テレビを見続ける。
するとテレビの中に、見覚えのある姿がチラリと写った。
それはNEOBADANという所にいた、コンバットロイドの姿………。
それを見た士は、「あの病院に行ってくる!」と夏海に告げると、慌ててカズヤたちの後を追いかけ始めた。
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カズヤとユウスケは、テレビ局や警官の視界に入らない場所までやって来ると、ユウスケがカズヤの肩を掴んで、無理矢理カズヤを引き留めていた。
「ちょっと待てカズヤ!お前ここの病院について知ってるのか!?」
「……そういや言ってなかったな……。ここはヒロシの母親が、入院しているんだ」
「なっ!?」
ヒロシの母親が入院している、それを聞いたユウスケは思わず驚いてしまう。
カズヤは病院の方を見ながら、ヒロシの母親について話していた。
「アイツの母親、昔から体が弱かったらしくて、ヒロシとアイツの妹を生んだ後は、ずっとあの病院で入院していたんだってよ。ただ………」
「ただ?」
「アイツの母親が、一度だけ外出の許可を貰ったらしく、その時ヒロシが近くの公園まで連れていこうとしてたらしい。けれど元々無理をしていたのか、アイツの母親は道路の真ん中で倒れ、そして…………っ!」
それを聞いたユウスケは、「そんな事が……」と小さく呟く。
それ以上カズヤは知らないらしいが、今もヒロシの母親は、あの病院の一室で眠っているのは確かだと言う。
突如としてヒロシに関して伝えられたユウスケは顔を少し歪ませながら、病院の方向を見ていると、病院の入り口から人影らしきものが出てくる。
しかしその人影を見たユウスケは、思わず目を見開いていた。
「なっ……あれはNEOBADAN!?」
「えっ………それって昨日のやつらか……!?」
「くっそ!まさか怪我や病気で動けない人たちを人質にしてるのか!?」
「でもあいつら、なんでわざわざそんな事を………」
入り口から出てきたのは、何体かのコンバットロイドで、何かを話し合っているように見える。
特に人々を襲おうと言う訳ではなく、ただ病院の前で立っているだけだった。
しかし病院にいる人々が危険なのは変わりなく、ユウスケはアークルを呼び出しながら、その場で変身をしていた。
それを見たカズヤは驚き、クウガの方を見つめる。
「!………士が言っていたのが本当だとして、お前のそれ、本当にどんな原理だ?」
「うーん………俺も知らないからなんとも………とりあえず、カズヤはここで待っててくれ。流石に病院の中にもあいつらが沢山いるはずだ」
「だったら、なおさら俺も」
「駄目だ!危険すぎる!!戦闘員ならまだしも、怪人とかがいたら危険な目に遭う!ここは戦い馴れてる俺に任せろ!」
クウガがカズヤを説得すると、カズヤは渋々引き下がる。
クウガはホッとすると、病院の方を向く。
そしてタイミングを見計らってから、コンバットロイドたちに向かって突撃し始める。
突然の奇襲にコンバットロイドたちは驚くが、すぐさまクウガに向かって走り出していた。
「うーりゃあ!!」
「イーッ!?」
「クソッ!既にライダーが来ていたとは!!」
「【あの男】はまだか!?もう既に終わっている頃だろ!!」
「てやあぁぁぁ!!!」
「「っ、イーッ!?」」
クウガは次々とコンバットロイドを薙ぎ倒していくが、騒ぎを聞き付けた他の戦闘員たちがぞろぞろと集まってくる。
それを見たクウガは「げっ」と呟くと、一時後退をしていた。
「ちょっ、あれは多すぎでしょ!?というかこの病院何体入ってたの!?」
「―――ユウスケーッ!!」
『アタック・ライド ブラスト!』
すると後方からディケイドがジャンプをしながらこちらに向かってきており、その際ディケイドは戦闘員たちを撃ち抜いていた。
更に地面に着地すると、そのままライドブッカーをソードモードに変えて、残りの戦闘員たちを切り伏せていく。
そしてディケイドが最後の一体を切ると、周りの戦闘員たちが一斉に爆散していた。
「ふぅ……張り合いがないな…」
「士!お前いつ来た?」
「ついさっきな。来る途中で変身してきた。ところでカズヤはどうした?」
「あぁ、それならあそこの茂みに………あれ?」
クウガは先程飛び出した茂みを指差すが、そこにカズヤはいなかった。
「あれ!?カズヤ!?」とクウガは叫びながら茂みに近づくが、その周りにもカズヤはいなく、クウガは「どゆことー!?」と頭を押さえて叫んでいた。
一方でディケイドは病院の方を向き、まさかと思いながら病院に入っていく。
それを見たクウガは、慌ててディケイドを追いかけていった。
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一方のカズヤはというと、人気のない病院の中を徘徊していた。
実はクウガが突撃した後、急いで反対方向に回り込み、戦闘員たちがクウガに気をとられている隙に、病院にひっそりと入り込んだのだ。
「流石にもう、ユウスケにはバレたかなー……」などとカズヤは呟くが、ふと、ある異変に気付く。
(にしても………あの覆面の変質者たち、もっとたくさんいると思ったのに………残りは病人を見張ってるのか?)
そう、本来なら10人ほどは徘徊しているであろう戦闘員たちの姿が、全くないのだ。
ここの病院は総合病院のため、戦闘員は少なくとも200人はいるはず………それなのに全くと言っていいほど、戦闘員たちの姿がないのだ。
一瞬カズヤは、既にどこかに隠れているのかと思ったが、それだったら既に襲われているはず………。
しかし一向に襲われてないため、人質の病人や医師の人たちを見張っている可能性があるかもしれない、カズヤがそう思ったときだった。
「―――え……カズヤ………?」
「!ヒロシ!?」
突然背後から声が聞こえ、カズヤは後ろを振り向く。
そこにいたのは、恐らく母親の見舞いに来たであろう、ヒロシが立っていた。
カズヤは驚きながらヒロシに近づく。
一方のヒロシは、カズヤがいることに関して、困惑していた。
「ヒロシ!お前、今日は母親の見舞いだったのか!?」
「えっ………あ、うん………何でカズヤがここに?今病院危険だよ?」
「お前こそ何してるんだよ!?もしかしたら変質者たちが見回ってるはずなのに………」
「そう、だね……一度俺の母さんの病室に行こう。あそこなら安心だ」
「そうか、ならそこに………」
カズヤがヒロシの言葉に頷こうとして、言葉を止め、ヒロシの顔を見つめる。
ヒロシはカズヤが自身の顔を見つめているのに気付くと、カズヤの方を向いた。
「?どうしたのカズヤ」
「………なぁ、ヒロシ。お前、何で【自分の母親の病室が安全】だと言い切れるんだ?」
「!!」
「他の患者さんはどうか知らないけど、多分全ての病室に、見張りとして変質者たちがいるかもしれない。それなのに何でお前の母親は安全だと言った?」
「そ、それは………」
「―――おいっ!そこにいるのは誰だ!?」
「「!!」」
ヒロシがカズヤの言葉に戸惑っていると、何処からか戦闘員が現れ、大声で叫ぶ。
カズヤは舌打ちをすると、ヒロシが「ついてきて!」と叫び、走り出していた。
カズヤは慌ててヒロシを追いかけ、ヒロシが病室のひとつに入り、カズヤもその病室に入る。
そして扉に耳を当て、戦闘員が去ったのを確認すると、ホッと一息をついていた。
「良かった、見つからなくて………ヒロシ?」
「………紹介するよ、カズヤ。俺の母さんだ」
病室に入ってから一言も喋らずにいたヒロシが、背後にいるカズヤを見ずに、母親を紹介する。
カズヤはゆっくりと近づき、ヒロシの母親を見る。
ヒロシの母親はかなり痩せ細っており、点滴がポツ、と流れている音が響いてくる。
そして何より、まるで死んでいるかのように目を閉じており、ずっと寝ている状態だった。
「………この人がお前の………」
「…うん……17年前からずっと………」
「………17年間眠り続けている、か………」
カズヤの言葉に、ヒロシは静かに頷く。
ヒロシは母親の手を握り締めつつ、カズヤと話を続ける。
「………俺がいけないんだ。母さんが今も眠り続けているのは、幼い頃の俺が、原因なんだ……」
「………」
「俺があの時、母さんの体調を考えていれば………俺があの時、母さんと一緒にいれば…っ……!」
「ヒロシ………」
「けれど、もうすぐで母さんは、目が覚める」
「………ヒロシ?」
突然ヒロシがくるりとカズヤの方を向き、カズヤはヒロシの顔を見て驚愕する。
………ヒロシは笑顔でカズヤを見ているが、瞳からポロポロと涙が溢れ落ちていたのだ。
それが先程言った、ヒロシの母親が目覚めると言う事に対してでなく、まるで自身に向けられた涙に思えた。
そしてヒロシは涙を流しながら、カズヤに告げていた。
「………ごめんねカズヤ……俺………【人間じゃなくなった】………」
「……え………?」
人間じゃなくなった。それを聞いたカズヤは訳が分からず、ヒロシに尋ねようとした瞬間―――勢いよく病室のドアが開き、そこから士とユウスケが入り込んできた。
カズヤたちはそれに驚き、特にヒロシは目を見開いていた。
「カズヤッ!!無事か!?」
「ユウスケ!それに士まで……!」
「!!」
「すまん、ヒロシの母ちゃんがこの病院にいるってユウスケに聞いて、もしかしたらそこに向かっているかもと………?ヒロシ、何故お前がここにいる?」
「あれ?本当だ!!もしかしてお前、お見舞いに来てたの?」
ユウスケがヒロシの方へ歩いていくと、ヒロシは何故か後ろへ後ずさりする。
それを見た士は、何か様子がおかしいと思い、ユウスケを引き留めようと思った時だった。
先程まで少し騒がしかったせいか、戦闘員たちがそれに感づき、既にヒロシの母親の病室まで迫ってきていた。
それを見た士は「ヤバッ……!」と呟き、皆に逃げるように指示しようとした時だった。
「チッ、不味い………皆!一旦ここから離れ………!?」
「―――ごめんね、皆。俺、皆と一緒にはいけないよ」
「がっ、は………!?」
士が振り向いた瞬間、ヒロシがユウスケの腹を殴っていた。
突然の出来事に、ヒロシ以外の者が困惑する。
そしてユウスケがバタリと床に倒れ伏せると、カズヤがヒロシに問い詰めていた。
「ヒロシ!?お前何を!!」
「待てカズヤ!こいつもしかしたら、本物のヒロシじゃ」
「士ー、言っとくけど、俺は正真正銘、本物の飛空ヒロシだよー?………既に人間じゃないけど、ね」
「!ヒロシ………まさかお前!?」
「―――変身…」
その言葉の意味を理解した士は目を見開くが、その前にヒロシの腰にベルトのようなものが現れる。
そしてポツリと呟くと、その姿が変わっていく。
全身が緑で赤い複眼とマフラーをしており、まるでイナゴのような姿をした存在―――飛空ヒロシとは全く違う存在が、そこに立っていた。
しかしその存在は、ヒロシの声で語りかけてくる。
「………これが俺の、新しい姿。確か………【スカイライダー】って言ってたっけ?まぁ、いいや………、―――士、僕は君を、倒すよ?」
その存在―――スカイライダーはそう言って、士の方を向いていた。